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コラム vol.392
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これからの賃貸住宅経営の潮流、ZEH-M

公開日:2022/03/31

POINT!

・ZEH-M(ゼッチ・マンション)とは、賃貸住宅やマンションの1棟全体(住棟)のZEH評価で、ZEHとして住戸単位で評価することも可能。

・賃貸住宅のオーナーにとって、ZEH-Mは、競合となる賃貸住宅との差異化、補助金の活用等のメリットがある

・利用者にとっては、光熱費の削減、快適な温熱空間、災害時の安全・安心等のメリットがある

昨今、話題となっているZEH(ゼッチ)。戸建住宅だけではなく、賃貸住宅まで、導入が広がっているようです。賃貸住宅のオーナー様にとって、どのように取り組むべきなのか、検証します。

世界的なSDGsの浸透に伴い、さまざまな企業が、エネルギー・環境問題への取り組みを強化しています。特に住宅、建築業界においては、目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」─持続可能なエネルギーの選択を─という、エネルギー・環境問題への取り組みが増えています。
国は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて2021年8月に「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方の概要」を取りまとめ、その中では2030年に『新築される住宅・建築物については、ZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保される』こと、2050年には『ストック平均でZEH・ZEB水準の省エネ性能が確保される』ことを描いています。賃貸住宅においてもZEHに取り組むことは必然であるという潮流になってきています。

ZEHとは?

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」です。(経済産業省 資源エネルギー庁ホームページより)

図1

経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー課/環境省 地球環境局「ZEHの普及促進に向けた政策動向と令和3年度の関連予算案」(令和4年3月)より作成

具体的には、ZEHは右ページの図1のように、高断熱でエネルギーを極力必要としない工法や材料を使うことで、屋根や壁、窓などの断熱性能を高めたり、高性能の省エネ設備によって使用エネルギーを削減したりすることで、建築物のエネルギー消費性能基準から一次エネルギー消費量を20%削減すること。さらに、太陽光発電などの創エネ設備によってエネルギーを創り、一次エネルギー消費量を削減した住宅が、ZEHとされています。
ただし、取り組む中で、地理的な制約(都市部狭小地や多雪区域等)がある場合は、太陽光発電がなくてもZEH(ZEH Oriented)が認められています。たとえば、積雪期間には発電ができないことや、屋根が狭いために搭載できる太陽光パネルが少ないといったことなど、太陽光発電に関する不利な状況を緩和するための措置が取られています。

集合住宅のZEH、ZEH-Mとは?

戸建住宅と同様に、賃貸住宅やマンションにおいても、1棟全体(住棟)のZEH評価としてZEH-M(ゼッチ・マンション)が定義されています。
ただし、賃貸住宅やマンションは、戸建てに比べて住戸数に対して必要な容量の太陽光発電の設置が難しいため、国は建築物の階層によって、目指すべき水準として4種類(ZEH-M、Nearly ZEH-M、ZEH-M Ready、ZEH-MOriented)を設定しています。
賃貸住宅やマンションの場合は、住棟単位のZEH-Mとしての評価だけではなく、ZEHとして住戸単位で評価することも可能となっています。
太陽光発電による電力を各住戸に配分して広くご入居者の満足につなげる方法や、建物規模によっては一部の住戸だけをランクの高い『ZEH』とした賃貸住宅とする方法など、賃貸住宅のオーナー様の経営戦略にも影響を及ぼしそうです。

それぞれの定義は、次ページの図2のとおりです。

図2:ZEH-Mの定義と条件

経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー課/環境省 地球環境局「ZEHの普及促進に向けた政策動向と令和3年度の関連予算案」(令和3年3月)より

オーナー様にとってZEH-Mのメリット

時代の潮流となっているZEH-Mですが、賃貸住宅のオーナー様にとって、ZEH-Mの採用は、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

●競合となる賃貸住宅との差異化

同じような条件の賃貸住宅があった場合、ZEH-M対応の賃貸住宅は、ご入居者にとってさまざまなメリットがあります。また競合物件に対して差異化を図ることも可能です。

(1)売電収入や光熱費の削減効果を、家賃へ反映可能

ZEH-M仕様にすることで建築費は上がりますが、ご入居者は高断熱化による光熱費の削減効果や、快適な温熱空間で生活できるメリットもあり、その分、家賃に反映させることが可能です。
また、太陽光発電などの創エネ設備の導入により売電収入がある場合は、賃貸住宅経営の中で、収益性を良くすることも可能です。ただし、管理会社によって対応が異なりますので、長期的な賃貸住宅経営を見据えた上で、ZEH-M仕様について検討することが大切です。

(2)物件の資産価値が上がる

ZEH-M仕様にすることで、高い断熱基準や省エネ基準をクリアし、さらにご入居者の快適性向上も実現でき、その上建物として売電収入も見込まれることから、建物の資産価値が上がることが考えられます。将来的に売却を検討する場合、ZEH-M仕様ということで、高く売却できる可能性や金融機関からの評価も高くなる可能性もあるでしょう。
一方デメリットとして、建築する際、高断熱化や太陽光発電等の設備の導入などによって一般的に建築費が高くなります。そこで国はZEH-Mの普及を促進するため、補助金制度を設けています。

補助金の活用

補助金を受けることができるのは、オーナーにとってZEH-M導入の大きなメリットとも言えます。
経済産業省と環境省は連携して、2030年目標の達成に向けて、「集合住宅の省CO2化促進事業」として、集合住宅のZEH-M化を支援しています。建物の階数に応じて3種類あり、それぞれ一定の基準を満たすことで、建築費に対する補助金を申請することができ、実質的な費用負担を軽減することができます。
令和4年度の詳細な内容は決まっていませんが、補助金があることは、賃貸住宅経営にとって優位点に違いありませんので、検討する価値はありそうです。
ただし、ZEH-Mの補助金は申請すれば必ず受けられるとは限りませんので、注意が必要です。 期間内の申請数などによって終了する可能性もあり、ハウスメーカーや建築会社の協力を得ながら進める必要があります。

ご入居者のメリット

「持続可能なエネルギー」というSDGsの目標実現に向かうとはいっても、ご入居者にとって、ZEH-Mは具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

●光熱費の削減

ZEH-M対応の賃貸住宅では、光熱費の削減効果がメリットの一つに挙げられます。断熱性が高くなることによって、当然エアコン効率も良くなりますし、設置されているエアコン自体も省エネ機器がついています。つまり、ZEH-M対応ではない賃貸住宅に比べて、冷暖房費を抑えることができるでしょう。

●快適な温熱空間

旧来の賃貸住宅で不満につながりやすいのが、「室温や湿度、カビ」などの問題です。
ZEH-M対応に必要な断熱材や窓等の採用によって、快適な室温や湿度を保ちやすくなり、カビの発生も少なくなるでしょう。また温度差が少なければ、ヒートショックのリスクも少なくなります。 つまり、住宅の高断熱化が進めば、夏は涼しく冬は暖かい、快適な温熱空間を実現しやすくなります。

●災害時の安全・安心

災害は予期せず起こります。停電に備えることができるのもZEH-M対応の賃貸住宅の強みの一つです。太陽光発電の設備があり、昼間の日射がある時間であれば、停電時でも電力の使用が可能になる場合があります。(各部屋の室内にパワーコンディショナーが設置されている必要があります)

まとめ

このように、ZEH-Mによって「快適性と省エネルギーの両立」という新たな住まいの満足度にかかわる指標が生まれることになりました。
ご入居者にとっては、快適な住まいと光熱費の削減というメリットがあり、オーナー様にとっても、資産価値の向上、健全な賃貸住宅経営につながるなど、メリットの多いZEH-Mの採用は、今後大きな流れになっていくといえそうです。
何よりも、環境問題への貢献という地球規模の課題に向き合うことになりますので、国の政策も含めて、注目すべき制度だといえます。
ZEH-Mの補助金は「ZEHデベロッパー*に依頼して建築した建物」のみになっていますので、これから新築や建て替えを検討しているオーナー様は、大和ハウス工業など、信頼できる専門のパートナーを慎重に選んだ上で、相談してください。

*ZEH-Mに取り組む目標や体制を構築して公表を行っている建設会社やハウスメーカー

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