
歴史ある町屋の佇まい。どこか野趣を感じさせる大きな暖簾が、街の中でもひときわ目をひく。
鮭の塩引き、酒びたし、はらこの醤油漬け――。大きな暖簾をくぐると、町屋づくりの店内には多彩な鮭料理、珍味が並ぶ。Part.1でもご登場いただいた「味匠 喜っ川」は寛永3年の創業以来、造り酒屋として歴史を重ねてきた。昭和30年代に郷土の鮭料理の商品化に取り組んだが、そこには故郷の味、おふくろの味を守りたいという想いがあった。だから、防腐剤や化学調味料は使わない。村上の風土に根ざした熟成と発酵にこだわり、醤油にも生揚げ(きあげ)と呼ばれる、お酒でいえば原酒にあたるものを使用している吉川さんは「既成品のアミノ酸なんて大したことない」と言い切る。伝統的な製法を守る中、今年から社長に就任した息子さんのアイデアで、鮭の生ハムやクリームスープなど、製品のバリエーションはさらに広がりを見せている。
「梅干し番茶のサーモンフレーク膳」。
塩引き鮭のフレークを練り込んだマフィンを、自家製梅干しを落とした上番茶とともにいただく。
江戸時代、松尾芭蕉が村上を訪れた。その時、草鞋を脱いだのが旅籠「井筒屋」だ。現在の「井筒屋」は、1日1組限定で旅籠を営む一方、「Tea井筒屋」として訪れる旅人においしくやさしい時間を届けている。メニューの主役は、季節のフルーツなどを取り入れながらふっくら焼き上げたマフィン「井筒屋ケーク」。中でもユニークなのは、塩引き鮭のフレークを練り込んだ「サーモンケーク」だ。村上らしいメニューを、と一昨年に登場した。和風テイストを出すためにハーブ類は使わず、試行錯誤の末にたどりついたのが山椒。しかし、その薫りが立ちすぎることはなく、鮭の風味とマフィンのほのかな甘みが絶妙なバランスを醸す。お茶も村上産の日本茶や紅茶にこだわる。村上の豊かさの楽しみ方には、こんなスタイルもある。※品切れや、気候状況によりご提供できない場合がございますのでご了承ください。
リアルな色合いがたのしい「鮭の切身落雁」。
中のあんこはしっとり。日持ちもするので、お土産物として人気。
鮭の切り身を模したお菓子がある。そう伺って、大町にある和菓子の老舗「早撰堂」を訪ねた。お店で出会った「鮭の切身落雁」は、とてもリアルでありながら、どこかユーモラス。中にはあんこが入っており、お土産物として人気だ。落雁は餅米の粉と砂糖を混ぜ、水飴をつなぎにして型に入れて作られる。「型は昔からあったんですよ。売り始めたのは観光客の皆さんがくるようになってから」 苦労したのは、その色合いだという。店中には、さまざまな落雁の型が並ぶ。地元の人にとって「早撰堂」は、1月から3月にかけて作られる「桜餅」で愛されているお店。また、村上市では山ぶどうが穫れる。山ぶどうを使った「葡萄羹」も村上の名産であるとともに「早撰堂」の看板商品だ。明治26年に建てたという建物は、登録有形文化財に指定され、こちらも見応えがある。
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