
「かわ茸羊羹」は、かわ茸の色が上品な趣を醸し出す。
朝倉市甘木の中心地にある「御菓子司 花房屋」は、明治38年に創業した和菓子店。かわ茸を使った「かわ茸彩花」と「かわ茸羊羹」が店頭に並ぶ。まるで侘び寂びの世界を体現したかのような「かわ茸彩花」をいただくと、柔らかでありながら弾力のある歯ごたえと上品な甘さが広がる。この形にするまで苦心を重ねたという「かわ茸彩花」は、養殖場で採取した生のかわ茸を精製して、砂糖で煮詰める「花房屋」独自の製法でつくりあげたもの。全国で茶菓子として評価され、表千家の教授を務める安長寺の住職も使われることがあるという。「かわ茸羊羹」は羊羹に「かわ茸彩花」を入れ練り上げた抹茶色の羊羹と、乾燥したかわ茸を北海道産の小豆羊羹に練り込んだ二つの商品がある。あっさりした甘さの郷土銘菓としてこれも人気。界隈は茶文化が盛んなため、茶菓子の名店として愛されている。
暖簾のかかった風情ある茶屋の趣。店内には特産物や秋月和紙などの雑貨も多く並ぶ。
高浜虚子など著名な俳人も訪れた風情ある秋月。昭和40年代にはほとんど店がなかったというこの地に、地元出身の山本さんが地域の食材を使ってお店をやろうと昭和47年に開いたのが「黒門茶屋」。秋月藩黒田家二代藩主長重公お手植えの樹齢約300年のマツをテーブルに贅沢に使った店内は、季節の野の花が彩りを添える安らげる空間。ここでは、「川茸定食」がいただける。生の佃煮、こんにゃく、炊き込み御飯、乾燥した川茸である壽泉苔が入っており、川茸の風味を余すところなく堪能できるのが魅力だ。定食についてくる葛餅は、秋月特産の本葛を使いじっくり直火で炊き上げている。小さな店だからこそ手づくりで丁寧にできることをしていく。それは地域の食材である川茸への愛情にも繋がることといえるかもしれない。
遠藤金川堂の川茸を使った料理。宮崎のサーモンなど九州の食材をふんだんに使う。
食材の魅力と遠藤金川堂の遠藤さんの人柄に惚れ込んで、川茸を料理に活かすのは、茨城県出身の篠原和夫シェフが営むフレンチ「Restaurant Kazu」。篠原シェフは、食材を守るために環境や生態系、食育までを考える遠藤さんの情熱を料理に反映して伝えていきたいという。川茸は、食感のよさと彩りの美しさがあり、どんな食材にでも合うが、とくに酢の物など酸味との相性がいい食材だ。丹精こめてつくられた九州の旬の素材と組み合わせて、彩りも華やかな一皿の上で、生産者である遠藤さんの想いをお客様へと橋渡ししていく。そのために有機野菜を使い、素材の持ち味を最大限にひきだそうとすべく、シェフが丁寧に腕をふるう。食材や技術、職人的なこだわり、料理という文化と人への敬意を熱く語るシェフに魅了される人は少なくない。
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