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海と里の恵みに生きる階上町

階上灯台のある小舟渡(こみなと)海岸。天然芝が広がり、この場所でいちご煮祭りも開催される。

  • 生まれも育ちも階上町の「道の駅はしかみ」の大江さん。
  • 「階上早生」の生蕎麦も売っていたが、早々に売り切れてしまった。
  • 今年で30回を迎えるいちご煮祭りは、階上町の一大イベント。本場のいちご煮が安く食べられるとあって例年賑わう。
気候や地形が育んだふるさとの味

 三沢空港から車で南下すること約1時間、岩手県洋野町と県境を接する青森県の東南端に階上町はある。町の東が太平洋に向かって開いているため、県内で一番早く朝日が昇る、「光のふるさと」と呼ばれている町だ。町内には、樹齢数百年をゆうに越える巨木や古木が点在し、国内最大級のものだけでも6本は数える巨木の郷でもある。
 町を訪れて目に入るのが「階上早生」や「いちご煮」と記された看板だ。「この辺は冷害があるので、大正時代から県内で唯一、『階上早生』というそばの栽培が奨励されてきたんです」と話してくれたのは、「道の駅はしかみ」の大江さん。階上町は降雪量が少なく乾燥している一方で、夏にやませと言われる冷たい偏東風が吹く。そのため冷涼な気候に強い品種のそば「階上早生」が、一時途絶えそうになったものの盛んに栽培されてきた。「階上早生」は粘りが強く香り高いのが特徴で、風味の良さが人気となっているのだ。
 そして「いちご煮」が今回の目的だ。階上町は北三陸の海に面しており、変化に富んだ海岸線をもつ。この複雑さが、ウニやアワビなどの豊富な海産物を育んできた。

店主夫人の敦子さんと娘さん。取材中も釣り客や海産物目当てのお客さんが訪れていた。

  • ホヤ(右側)。いただくと、まるで海を味わっているような気分になる。クセになる美味しさだ。
  • 店内には、店主の坂下さんが始めたという釣り具がずらり。
  • 店頭のいけすで売られていたアブラメ。一般的にはアイナメという。
北三陸の豊かな海がもたらすもの

 階上町の海は寒流が強いが、多くの魚種が季節によって獲れる。いくつか点在する小さな漁港の一つ、追越(おっこし)漁港の目の前にある「坂下商店」は釣り具店であり、一本釣りの地元漁師から買い付けた海産物も扱う老舗。店頭のいけすではアブラメ(アイナメのこと)やクロガシラ(マコガレイのこと)、ホヤが販売されていた。中でも今年(2016年)はカレイが当たり年とのこと。店主夫人の敦子さんは「陸奥湾でもカレイは獲れるけど、外洋に面しているここのカレイは、水が冷たくて荒波にもまれているせいか身が締まって美味しい」という。
 魚種の豊かさに、追越漁港の前の海は恵みをもたらすばかりに思えるが、「坂下商店」のある地点は東日本大震災で津波の被害を受けた地域。敦子さんは穏やかに話してくれたが、車がゴム鞠のように跳ね、津波を被った店の1階は割れたガラスと砂に覆われ、鍵穴には小さい蟹がびっしり詰まっていたという。「魚種自体に変化はないけど、以前ほど釣れなくなった。温暖化もあって海の中の状況が変わったんでしょう」と、敦子さんは釣り客とのやりとりなどを通して海の変化を見つめている。
 2011年の東日本大震災から5年、一時、防波堤釣りや磯釣りの人が離れたものの、今ではだいぶ戻ってきた。それでも以前とは違って魚の旬が変わり、釣れる数も減りつつある。昔のように魚が獲れてほしいと敦子さんは願っている。

坂下商店

籠にウニを移し替えているおばあちゃん。たくさん採れて、しかも身が肥えていると嬉しいという声が聞かれた。

  • 階上漁業協同組合の角地山さん。おすそわけしてもらったウニ片手ににっこり。
  • 遠浅の小舟渡海岸。取材した日は、凪いでいて潮や海の状態がウニ採りにいい条件だった。
  • 岩の下に手を入れてウニを採る。簡単なように見えるが、岩に吸いついたウニを採るのは一苦労だ。
階上の夏の風物詩、ウニ採り漁

 7月3日朝7時、小舟渡(こみなと)海岸ではメガホンの音を合図にして多くの人が岩ばかりの遠浅の海を沖に向かって歩き始めた。階上町の夏の風物詩、ウニ採り漁の始まりだ。その様子を階上漁業協同組合の角地山さんに案内してもらった。
 取材した日は“おか”と呼ぶ浜辺に近い海での漁だったが、沖合に船を出して潜って採る漁もある。近くで見させてもらうと、岩と岩の間に手を差し入れて鉤のような道具や熊手でかき出している。「多く採れるのはキタムラサキウニ。ウニを採る人と、水揚げしたウニをひきとって岩場を運ぶ人で役割が分かれています」と角地山さんが話すように、始まって15分もすると岩場を降りる人たちが現れ始めた。岩場はフノリなどの海藻が張りついているところもあり、滑りやすい。そこをウニを採る人から受けとった籠いっぱいのウニを背負って、殻むきの作業に入るために自宅や浜小屋、市場などへ向かうのだ。 「ウニはワカメやコンブを食べて育ちます。冬に雪が降らなかったせいか今年は海藻の生育が悪くて、そういうのがウニの漁獲や質に影響しますね」と角地山さん。また階上漁協小舟渡部会の黒坂部会長も「山の栄養分がこなきゃダメ」と話す。
 ウニの水揚げは午前中で終わる。階上では、十分に育つまでウニは採らない。「天災はしょうがないけど、生態を壊さないようにする、育てる漁業でなくては」と黒坂部会長はきっぱりと言葉にした。

階上漁業協同組合
  • [Part.1]海と里の恵みに生きる階上町
  • [Part.2]繊細な美しさで魅せる「いちご煮」
  • [Part.3]風土の味覚を楽しむ名店

※掲載の写真は平成28年7月に撮影したものです。

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