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インタビュー 011
  • 土地活用税務コラム

税理士リレーインタビュー 第11回 「会社の事情はすべて異なります。事業承継はひとつひとつ丁寧に、相続も含めて総合的に進めていきます。」 小林会計事務所 税理士 小林英伸様

公開日:2017/12/25

老舗の会社が多く、事業承継を控えている企業が増加

インタビュアー(以下I):地域柄、製造業を中心とした法人様が多いのでしょうか。

小林(以下K):伊勢崎市には株式会社SUBARUとサンデンホールディングス株式会社という二大企業があり、近隣の大泉町にはパナソニック株式会社もあります。
地域の景気はそうした大手の製造業の業績にかなり左右されます。今は好調の企業が多いようです。ただ、二次下請け三次下請けの会社になると、そこまで好景気の実感はないかもしれませんね。

I:伊勢崎市はいわゆる企業城下町的なところがあるわけですね。今、世代交代の時期に当たっている企業が多く、規模の大小にかかわらず、事業承継がかなり大きなテーマになっています。

K:事業承継は本当に大きなテーマですね。特に私どもの事務所の場合、先代からこの土地で50年以上やってきていますから、お客様にも老舗の会社が比較的多く、事業承継を控えている企業様が増えています。
事業承継は、経営の承継と資産の承継、その両方が終わって初めて成立するものです。そのバランスや、どういった形で承継していくのが一番いいのか、という相談が最近は非常に多くなっています。
経営の承継については会社の意思決定で対応できる部分が多いのですが、資産や株の承継のほうは税金も絡みますし、個人の資産も含めて会社ごとに資産構成がまったく異なるので、対策を練るにしても単純にはいきません。
会社の事情をひとつひとつ丁寧に当たる必要があり、経営者の方の個人資産の情報もご提供いただくなど、相続も含めた事業承継を総合的に進められるよう心がけています。

I:事業承継を少しでも効果的に進める対策として、どのような進め方があるのでしょうか。

K:さまざまな方法があり、それぞれにふさわしい対策があるのですが、たとえば、会社の株価はそのときの利益の出方によってものすごく変動します。そこを逆手にとって、あえて業績の悪い時期、つまり株価の下がった時期に事業承継を進めて株の贈与を一気に行う、という手法があります。
最近は税制改正の動きが激しく、特に資産の評価と事業承継に関しては大きく変わりますから、こちらでもしっかり勉強してベストなプランを立てられるよう努めています。

I:特に中小企業の承継では、経営者個人の資産と会社の資産とのバランスなど、考慮する部分も多いのではないでしょうか。

K:たとえば、経営者の方の主だった資産が土地や建物しかなく、なおかつ会社の株が高い場合などには、早急に対策をしないと相続税を払えなくなるリスクがあります。
また、個人の資産が莫大で相続税を払えるだけの現金を十分にお持ちのケースでは、相続税は多ければ多いほど税率が上がる累進税率ですから、生前贈与などを利用して税率を下げるなどの対策が必要になります。こういう場合も、どういうスピードで生前贈与を行っていくか、個人の資産を含め総合的に考えていかないと、最終的な納税額を最小限に抑えることはできません。

I:個人の資産を会社の資産に移す、といった手法もあり得ますか。

K:個人で事業を始めたあとに法人化して、土地は個人のもの、建物は会社のもの、というようになっているケースも散見されます。会社のお金で自分の土地に建物を建てて、会社が地代を払っているという状況です。
ただ、会社がずっと同族で維持できればいいのですが、今はM&Aも増えています。将来的に売却などが想定される場合、事業を承継されない兄弟が分割などで相続をしてしまったりすると、個人の土地の扱いは注意が必要です。
こうした土地が個人所有で建物が法人所有というケースは群馬でも多く、ご相談が最近は増えています。

幅広い提案を通して老後の生活まで、一緒に考えていく

I:後継者がいないというケースもありそうです

K:後継者がいない場合の選択肢というと、第三者に譲るか、会社を株ごと全部売ってしまうか、あるいは廃業するかしかありません。後継者や家族構成を考え、将来どうしていきたいのかを聞かせていただいて、それに向けて最善の道を探ることになります。
たとえば、開発が進んで郊外型のショッピングモールや大型店舗が続々出店する中で、かつてにぎわった商店街は歩く人もほとんどいなくなってしまいました。前橋のアーケード街ですらシャッターがどんどん閉まっていく状況です。
個人商店を引き継ぐ方も少なく、事業形態を変えるケースも出てきていますが、「自分が商売できなくなったら閉めるから」と、閉店を視野に入れて細々と営業を続けている店主も少なくありません。
そういう場合は、廃業するためにやるべきことというのがありますし、廃業の際にかかるお金の算定ですとか、「きちんと綺麗にする」というのも我々の仕事になってきます。
ほとんどのお店は法人の形になっていますから、法人と個人、両方のコンサルティングを行うことになるわけです。店主の方の年齢、年金収入なども考え合わせ、老後もちゃんと生活できるよう、必要な退職金を計算し、その退職金を得るにはどんな原資が必要になるのかを考えます。廃業から先のお客様の人生ができるだけ豊かになるようなお手伝いをしたいと思っています。

I:お客様が法人から個人に変わっても、ずっとパートナーであり続けるということですね。

K:もちろん限界はありますが、できるところまでは寄り添いたいと思っています。 とにかく、私たちの世代からは年金を頼れないですから、他の個人年金や積立保険、あるいは収益物件を建てるのも一つの方法ですし、幅広い提案を通して老後の生活というところまで、一緒に考えていく必要があると思います。

I:後継者不足によって地域ならではの特色まで失われていくとしたら残念なことですね。

K:地域の特色ということで思い出したのですが、この近辺は一般的な市街化区域に見えますが、実は「調整区域」が非常に多いのです。メイン道路のようなところでも、両サイドが調整区域で、建造物に厳しい制限があったりします。
オーナー様がこういう土地を活用したくても、厳しい制限がかかって立ち行かない、という事例が最近ポツポツと出てきています。
以前、あるお客様が所有されている4,000坪以上の土地の活用法について、大和ハウス工業さんからいろいろご提案をいただいたことがありました。しかし、その制限があるために、貸したいのにうまくいかず、最終的には売却になってしまいました。

まだまだ賃貸住宅のニーズは高い

I:伊勢崎駅前の開発はさらに進みそうですし、まだまだ賃貸住宅への需要は高いのではないでしょうか。

K:近くの新伊勢崎駅の開発がほとんど終了し、今は伊勢崎駅の開発がかなり進行しています。伊勢崎周辺では大きな道路が通るなど、交通の便が非常によくなってきているので、倉庫系、運送系の会社も集まってきています。地価はあまり盛り上がりませんが(笑)、確かに地域としては活性化してきているように思います。
また、伊勢崎市には外国人の方が非常に多く、群馬県内でも人口が増えている数少ない土地になっています。
そうしたことから賃貸住宅のニーズも増えていて、土地活用として賃貸住宅経営を選択されるオーナー様は多いですね。最近では介護施設も増えている印象です。

I:大和ハウス工業とのパートナーシップで印象的な事例がありましたら、ぜひお聞かせください。

K:全国に飛び地で土地をお持ちのお客様がいらっしゃいました。それをどう活用したらいいかというご相談があったのですが、他のエリアの土地事情は私たちにはまったくわかりません。そこで大和ハウス工業さんにご相談したところ、各地の有益な情報をいただくことができて非常に助かりました。
大和ハウス工業さんは、日本全国、この土地ではどういうニーズがあるのかなど豊富な情報をお持ちですし、戸建て住宅や賃貸住宅から商業施設に至るまで幅広いジャンルをカバーされていて、土地の大小にかかわらずしっかり対応してくださいます。さまざまな選択肢から、それぞれのメリットとデメリットも踏まえた多様な提案をしてくださるので、オーナー様もベストな選択がしやすく、喜んでいただいています。

I:今、自治体はどこもコンパクトシティ化を進めていて、市街化区域を中心地に集める動きが出ています。こうした状況下、承継において不動産が資産に占めるウェイトに変化はあるでしょうか。

K:群馬の土地の価格はそれほど高くありませんが、大地主さんの場合は莫大な相続税がかかります。土地だけで現金をお持ちでない場合は特に大変です。
相続が生じたら即売却できるかといったら、なかなかできないのが今の土地売買事情です。ですから、事前に相続税がどのくらいかかるのかを計算しておき、円滑な相続ができるよう早めに対策を練っておくことが大切です。
まず、土地所有者でしたら、固定資産の課税明細書等を見ていただいて、「3,000万円+(法定相続人数×600万円)」という基礎控除額を超えている場合、あるいはそれに近い場合は、早めに税理士に相談することをお勧めします。
課税明細書以外にも、自分の預貯金、有価証券等を全部足して、課税標準を超えているようであれば、税理士に相談しておくと安心感が得られると思います。

資産家でなくても、相続対策は必要

I:税理士に相談する必要のある人が今後は増えそうです

K:基礎控除が下がりましたから、「何も準備していなかった」という方がこれからは増えてくるのではないでしょうか。まず、税金がかかるのか、かからないのか。かかるとしたらいくらくらいかかるのか。そうした概算を早めにしておくことは非常に大切です。想定以上に税額が高いケースでも、早めに対策を練っておくに越したことはありません。

I:そうしたことの周知を図るには、どのようなことが有効でしょうか。

K:私どもの事務所では年に2回、セミナーを開催しています。今回のように資産税の改正などがあれば、その中で「こういう改正があったので評価がこんなふうに変わります」とお知らせするようにしています。私どもの事務所のお客様だけではなく一般の方にも来ていただけるセミナーですので、入りやすいのではないでしょうか。

ただし、最初はやはり不安だと思います。「いかめしい顔をした人が出てくるんじゃないか」とか、「どんな難しいことを言われるんだろう」とか。でも、そんなことは全然ありませんので、まずはお気軽に会計事務所に相談にいらしてください。
「病気かもしれない」とずっと不安でいるよりは、とにかく病院に行って、お医者さんに「大丈夫ですよ」とか「こういう治療をすれば治りますよ」と言ってもらったほうが安心できるじゃないですか。
税理士にご相談いただくのも、それと同じことだと思います。

I:最初に伺う際、どんな準備が必要になりますか。

K:おおよその資産内容をお持ちいただければと思います。
相続対策というものは長期的な視点が大切で、少なくとも10~20年スパンくらいで考えていかないとベストなプランニングができないものなんです。
かける時間が少なければ少ないほど、対策できることも限られていきますから、資産をお持ちの方はできるだけ早めに相談に来られたほうが、より効果的な対策を講じられると思います。

I:10~20年スパンで取り組むためには、遅くとも50~60歳くらいになったら相続対策を始めるべき、ということになるでしょうか。

K:家族構成が定まっているのであれば、早ければ早いほどいいと思います。その時点からいろいろ考えることができますから。たとえば、持ち家がある場合、その家を将来どういうふうにするのか、漠然とでもいいですから、考えていくことが必要かと思います。 今、「争族」が増えていますが、弁護士にお聞きすると、金額の大小は関係ないようです。むしろ分ける財産が多いケースではあまり揉め事が起こらず、土地しかないとか、土地と家しかないとか、資産が少ないほうがどう分けるかで揉めやすいようです。

I:「大した財産なんかないから」と悠長に構えている人ほど争族に巻き込まれやすいわけですね。

K:主な資産が土地しかないという場合、土地を分割してしまうと資産活用的にはやりづらいんです。共有した場合、何をするにしてもいちいち同意を得ないといけませんし、共有にしてしまうと次の世代に渡すときに不便があり、結局、土地を活かせなくなってしまうケースもあります。
「うちは資産家じゃないから大丈夫」ではなく、そうでない方にも相続対策は必要だということです。

I:個人の土地オーナー様に土地の有効活用をアドバイスされる機会も多いのですか。

K:相続などのご相談の際に資産を拝見すると未活用の土地があったりしますので、その流れでお手伝いをさせていただくことはあります。投資として所有されている場合もあれば、群馬に引っ越してこられたお客様が先祖代々の土地を別の地方にお持ちのケースなどもあります。
うちの場合、相続対策がメインになっていて、さほど不動産に特化しているわけではありませんから、地域のニーズや状況、家賃が今いくらくらいなのか、入居率はどうなのか、といった知識は不足しています。ですので、お客様の土地活用に関しては、まず大和ハウス工業さんにご相談することにしています。

I:お仕事や資産に関係なく、どんな方もできるだけ早く相続の準備に取りかかったほうがいいということになるでしょうか。

K:はい。繰り返しになりますが、対策は早ければ早いほどいいと思います。
人によって資産の構成割合は全然違います。
株、土地、家、現金の構成割合によって、表面的な算定金額は同じでも大きな差があります。
いくら資産があっても、現金がなければ相続税は払えません。
また、中小企業にお勤めの場合は、大手企業と違って莫大な退職金が出るわけではないですし、退職金制度自体がないところもあります。私たちの世代は70歳になっても年金がもらえないかもしれません。
そうした中で、老後に困窮しないためにも、争族を避けるためにも、「どうやって蓄えようか」「この資産を誰に残そうか」ということについては、とにかく前もって早め早めの対策を行うことが非常に重要になるかと思います。

I:将来を見据えて、ご自身やご家族の生活を守るには、とにかく早め早めの対策が不可欠であるということがよくわかりました。貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

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