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コラム vol.200
  • 不動産市況を読み解く

生産緑地法について考える(2)~農業の後継者はどれくらい?~

公開日:2017/04/28

第190回のコラムでは、生産緑地について、「2022年問題」という形で俄かに話題になり始めた内容を、実際の生産緑地法を掲示しながら解説をしました。

都市計画法に基づく市街化区域は市街化を進める地域ですが、その区域内にも以前から農業を営むための農地がありました。不動産の分類は、宅地(住宅地、商業地、工業地を合わせて宅地と言います)、農地、林地に分けられますが、この「宅地」にすべきところが市街化区域と呼ばれるエリアです。
この中にある農地をどうするか?について、1972年に生産緑地法が定められました。その後地価上昇が続く最中に議論が進められ、地価のピーク(もしくは、ピークの直後)である1991年に大きな改正があり、その後数度の改正が行われて現在に至っています。

生産緑地についての概要と問題点をまとめると次のようになります。

  1. (1)生産緑地に指定されると、農地としての扱いのままとなり、「固定資産税の優遇策」と「相続税の猶予」が受けられる。
    → 宅地(あるいは、生産緑地ではない市街化区域にある農地)になると、固定資産税が大幅に上がる。
  2. (2)指定されたら、30年間は農業を行うことになる。(第10条) つまり、農地のまま使うことになるため、生産緑地地区内においては、建築物その他の工作物の新築、改築又は増築、宅地の造成、その他の土地の形質の変更は、市町村長の許可なく行えない。(第8条)
    → 一度指定されると、指定解除は難しい。
  3. (3)農業従事者が死亡もしくは従事することが困難になった際には、(2)の限りにあらず、市町村に買い取りの申し出ができる。(第10条)
    → 市町村が時価での買い取りを、財政難を理由に行ってくれない。
  4. (4)(2)で30年経過した場合、もしくは(3)で市町村に対して買い取り請求を行わない場合、他の用途に活用すること(土地活用)や売却等が行うことができる。
    → 解除のままだと、固定資産税が大幅に上がる。
    → 相続税の納税猶予期限がなくなる。
  5. (5)もちろん、30年経過後(2022年以降)も生産緑地をそのままとすることも可能。
    → そのまま、農業を続けることが求められる。

減少する農業従事者

ここからは、(5)について掘り下げてみます。

生産緑地法の指定を受けてから、30年経過して大都市圏の土地が一斉に市場に出る「2022年問題」などと、いわれていますが、そのまま継続という選択肢もあるわけです。しかし、(5)の矢印以下で書いたように、農業の継続が求められます。固定資産税減免、相続税猶予の条件として農業を行うことになります。

ご承知のように、農業従事の方々減少との高齢化は進んでいます。

図1:年齢別農業就業人口の構成(全国)

農林水産省「2015年農林業センサス」より作成

このグラフにあるように、平成17年から平成27年の約10年間で、農業従事者は約40%も減っています。農家の価格競争力が衰え廃業する方が増えていることに加えて、農地の大規模化が進んでいることなどが原因と思われます。また、農業従事者の高齢化も一段と進んでいます。

このペースで進めば、2022年には更に高齢化と農業従事者の人口が減るのは確実だと思われます。そのような中で、「生産緑地を維持するために農業を継続する」という方が、どれくらいいるのか疑問です。

では、農業後継者に引く継ぐ、という選択肢はどうでしょうか。

図2:同居農業後継者の有無

【全国】

【生産緑地のある都道府県】

茨城 31.8% 69% 石川 30% 70%
兵庫 31% 69% 埼玉 29% 71%
静岡 29% 71% 奈良 29% 71%
千葉 29% 71% 愛知 34% 66%
和歌山 25% 75% 東京 38% 62%
三重 31% 69% 福岡 34% 66%
神奈川 34% 66% 京都 27% 73%
宮崎 18% 82% 長野 32% 68%
大阪 35% 65%  

農林水産省「2015年農林業センサス」より作成

図2は同居農業後継者(15歳以上、同居している、次の代で農業経営を引き継ぐ予定)がいるか?というデータです。
これをみると、7割超の農家では後継ぎがいないようです。

これらのことを考えると、改正生産緑地法(1991年)施行から30年経過の2022年に大きな問題が起こる可能性があるかもしれません。

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