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コラム vol.365
  • 不動産市況を読み解く

賃貸住宅着工戸数はどのように変化してきたか?2011年~10年間の新設住宅着工戸数の分析と今後の見通し

公開日:2021/07/08

新設住宅着工戸数は、建築・建設系の主要統計の一つです。日本だけでなく、アメリカをはじめ主要国の建築許可件数の類いは、景気のバロメーターとして重要な統計データとされており、株式相場や為替相場にも多少なりとも影響があります。
今回の土地活用ラボレポートでは、2011年~2020年までの新設住宅着工戸数の推移を分析し、さらに貸家(賃貸住宅)にフォーカスして解説します。

2011年からの10年間の新設住宅着工戸数の推移を振り返る

2011年は民主党政権下でリーマンショック以降の金融経済の落ち込みから徐々に回復基調にありましたが、3月に東日本大震災が起こり、再び大きなショックに見舞われました。日経平均は1月の時点で10,237円(1月末終値)でしたが、年末には8455円まで落ち込みました。現在(2021年6月)は2万円台後半で推移していますので、当時の3.5倍くらいとなっています。
震災から1年と少したった2012年年末に政権が交代、再び自民党政権となり、翌2013年からは日銀総裁交代と相まって新たな金融政策(量的・質的金融緩和政策)が導入されました。これを契機に株価は上昇、そして不動産価格も上昇し始めます。
ここからは新設住宅着工戸数について見てみましょう。

図1:2011年から10年間の新設住宅着工戸数の推移

国土交通省「新設住宅着工戸数」より作成

図1は、2011年から2020年までの10年間の新設住宅着工戸数をカテゴリー別に示したものです(年計:1~12月合計を掲載)。
新設住宅着工戸数は、リーマンショックが起きた2008年の前までは100万戸以上をキープしていましたが、2009年に大きく落ち込みました。しかし、その後は増加します。また2011年、2012年は震災の影響もあり増加します。
2013年は、98万戸を超え、過去10年間で最も多い住宅着工戸数となりました。翌年(2014年)4月に消費税が5%から8%に増税されることが決まっており、その駆け込み需要が起こったことが要因です。2012年と2013年を比較すると、総戸数ではプラス11.0%、持ち家13.9%、貸家11.8%、分譲6.9%となっています。貸家も2ケタの伸びですが、それ以上に個人の持ち家の伸びが目立ち、この10年間では際立った伸びになっています。
2014年は駆け込み需要の反動で総戸数をはじめ、個人持ち家系は持ち家が約20%、分譲は約10%程度下げましたが、貸家はここでも増加します。好景気による賃貸住宅投資が増えたことに加えて、2015年1月から相続税の実質増税(基礎控除の減額)が施行されることになり、相続税対策として、所有地に賃貸住宅を建てた方が増えたためです。
その後2015年以降2019年までは、総戸数は90万戸台が続きます。多少の波がありますが、時にさらなる金融緩和(ゼロ金利政策)が行われるなど、好調の波を維持させる政策が取られ続けました。
しかし、2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、総戸数、持ち家、貸家、分譲、いずれも約10%のマイナスとなりました。
2011年からの10年間の新設住宅着工戸数の総合計は909万3668戸、1年の平均値を出すと、ざっくり総戸数は約91万戸、持ち家は約30万戸、貸家は約36万戸、分譲は約25万戸となります。2021年に入り、だいぶ新設住宅着工戸数は回復してきており、この傾向が続くことを願うばかりです。

貸家着工戸数10年間の推移

貸家(賃貸用住宅)にフォーカスしてみます。

図2:貸家着工戸数の推移

国土交通省「新設住宅着工戸数」より作成

図2は2011年からの貸家着工戸数と前年比の推移です。
2011年から2017年まで7年連続して増加で推移していましたが、2018年以降は減少に転じています。しかし、本サイトの別コラムでも紹介しましたが、2021年に入り回復基調になっています。

10年間の総戸数と各カテゴリーの前年比のボラティリティ(ブレ幅)を計算すると、総戸数は6.7%、持ち家8.7%、貸家8.9%、分譲6.0%となり、貸家のブレ幅が最も大きいことが分かります。持ち家もそれなりに大きいですが、先に述べた2012年~2014年のブレが大きく、それを除けばそれほど大きくありません。
リーマンショック後に新設住宅着工戸数が大きく落ち込んだ時も、最も強く影響が出たのは貸家カテゴリーでした。このように、貸家着工戸数は、景気や政策(金利や税制度)の影響を大きく受けると言えそうです。

貸家着工戸数の増減が総戸数に大きく影響する

景気や政策に影響を受ける貸家着工戸数の増減は、総戸数に大きく影響を与えているようです。
これを別の角度から見てみましょう。

図3:総戸数に占める貸家着工戸数の割合の推移

国土交通省「新設住宅着工戸数」より作成

図3は、総戸数に占める貸家着工戸数の割合です。棒グラフ青色は総戸数、オレンジ色は貸家、折れ線グラフは貸家の割合です。
2011年以降2017年まで、貸家の割合は伸び続けます。また2014年から2018年までは40%を超えています。2019年に貸家着工戸数は、2018年からマイナス約14%と大きく落ち込みますが、この時に6年ぶりに40%を下回りました。

相関係数とは、各数字の動きがどれくらい別のものに影響を及ぼすかを算出したものですが、総戸数と各カテゴリーの着工戸数の相関係数を計算してみました。
総戸数と貸家が最も高く0.838、次に分譲で0.669、そして持ち家は0.415となりました。いずれも、正の相関(プラスの値)で、それなりに影響がある関係ですが、貸家は0.8を超え、かなり強い相関があることが分かります。

こうしてさまざまな計算をして分析してみると、貸家(賃貸住宅)の着工戸数の増減が、着工総戸数に大きく影響を与えているということになります。

貸家のストック数は増えている

わが国において持ち家志向は低下、賃貸志向は増加しています。それに伴い、国内の賃貸住宅ストック数は増えています。

図4:住宅ストック数の増加の状況

総務省「住宅・土地統計調査」より作成

最新2018年の「住宅・土地統計調査」(総務省)によると、住宅ストック数は5361万戸、貸家は1906万戸うち民営貸家は1529万戸となっています。
前回調査(2013年)と比較してみると、この間に新築されたものや滅失されたものがあると思いますが、住宅ストック数はプラス2.9%、借家も2.9%、民営借家に限ると4.8%となっています。
増加率でみるとこの間に賃貸住宅需要の伸びもあり、民営借家数自体が増えたようにも見えますが、民営借家数割合の変化はこの5年間の増加を比較すると、27.9%→28.5%と増加率はわずかです。

民営借家の住宅ストック数に占める割合は、長期的に増えているものの、その増え方は少しずつです。1988年(昭和63年)の時は25.8%、その後5年ごとの調査での増加の幅はほんの少しずつで、1988年→2018年の30年間で2.7%となっています。一時期、「ここ10年間で賃貸住宅が急増した」や「賃貸住宅バブルか」のような報道がありましたが、日本にある住宅総数(ストック数)の中での30年間の増加の幅は2.7%とごくわずかであるといえるでしょう。

まとめと展望

過去10年間の新設住宅着工戸数のデータを細かく分析すると、貸家(賃貸住宅)の着工戸数が総数に大きく影響を与えています。冒頭でも述べましたが、住宅投資(自用、貸用とも)は経済状況、株式市場に大きく影響を与えます。こうして考えると、多少大袈裟ですが、貸家の着工戸数は景気を左右すると言えるのかもしれません。

2021年の春以降は、貸家着工戸数は数年ぶりに回復基調にあります。これが一時的なものか、本格的な回復なのかは、もう少し様子を見る必要がありますが、底は打った状況にあると思います。しかし、昨今(執筆時:2021年6月半ば)、アメリカをはじめ先進国で新設住宅着工件数が増え、木材の供給が追い付かず、木材価格が高騰しています。こうした影響が長く続けば、せっかくの回復基調に水を差すことになるかもしれません。この「ウッドショック」と呼ばれている状況がいち早く回復することを願うばかりです。

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