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土地活用ラボ for Owner

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コラム vol.383
  • 賃貸住宅経営のポイント

不透明な時代にこそ考えたい土地活用の必要性と注意点

公開日:2022/02/10

POINT!

・相続対策は資産の配分が重要。金融資産から不動産資産への組み換えが、有効な手段となる

・供給過剰による住宅ストックの増加により、住宅市場の需給バランスの不均衡が懸念されている

・地域特性や居住者ニーズに合致した土地活用が、収益確保の近道

相続税額は5113万円不動産による財産評価額の引き下げは有効な相続対策

富裕層に対する痛税感の強さを感じずにはいられないことがありました。
「もっと勉強し、事前に対策しておけばよかった」こう振り返るのは東京都内に住む年金生活者のAさん(87歳)です。2018年、Aさんは最愛の妻(享年81歳)を病気で亡くし、相続の発生により多額の相続税を支払う結果となりました。その額は5113万円。相続の発生から10カ月以内に現金で一括納付しなければならず、特段の事情がない限り物納や分割払いは認められません。

共働きだったAさんの妻(被相続人)は戦後の高度経済成長のなか、現物株式や投資信託を中心に長期での資産運用に励みました。バブル崩壊やリーマンショックなど、幾多の困難な局面に接しましたが、それでも晩年には有価証券だけで2億7500万円の財産を築いていました。
その上、木造アパートや分譲マンションも並行して手に入れ、賃貸住宅経営にも積極的でした。その結果、現預金や生命保険金なども加えた妻の資産は総額で約4億円にまで拡大していました。
ところが、相続財産4億円のうち、自宅を含めた土地・建物の保有金額は相続発生時の評価額で約4400万円でした。相続財産の内訳は不動産が全体の1割弱で、残り9割近くが金融資産で占められていたのです。 その結果、多額の相続税(5113万円)を支払うことになり、Aさんは、妻の生前を振り返り「資産の保有配分に気を使うべきだった」と悔やんだのです。

ご存じのとおり、相続税の算定にあたり、現預金のままでは額面価格が相続税評価額となります。これに対し、不動産は路線価による低い評価方法で相続税評価されるため、不動産のウエートが高いほうが相続税額の軽減につながります。つまり、金融資産から不動産資産への組み換えにより、評価額の引き下げにつながるということです。資産配分のリバランスは相続対策の王道手段となるのです。

その点、Aさん夫妻は無頓着で、そこまで考えていませんでした。残念なことに、周囲に指南してくれる方もいませんでした。冒頭、Aさんが「事前に対策しておけばよかった」と述べたのは、対策が不十分だった反省の弁と私には受け取れました。もし、前もって評価額の低い不動産に組み換え、保有資産のリバランスを実践していたら、5000万円を超える相続税を支払う必要はなかったのです。
参考までに、国税庁の「令和元年分相続税の申告事績の概要」によると、被相続人1人当たりの課税価格(相続財産)は1億3694万円。これに対する相続税額は1714万円でした。相続税法が改正され、2015年1月以降に発生した相続から基礎控除額が大幅に引き下げられた結果、改正前は4%台だった課税割合(亡くなった方のうち相続税の対象になった方の割合)が改正後は8%台に倍増しています。「取れるところから取ろう」という政府の思惑が垣間見られます。直近の令和元年分(2019年分)は8.3%でした(図1参照)。

図1:亡くなった方のうち相続税の対象となった人の課税割合の推移

【出典】国税庁「令和元年分 相続税の申告事績の概要」(令和2年12月)

わが国では長寿命化により「人生100年時代」といわれる一方、その裏では「多死社会」と呼ばれるようになっています。すでに人口動態は出生数より死亡数のほうが多く、誰もが相続を「自分のこと」として捉えなければならない時代に直面しています。それだけ相続が身近になっている 証左です。相続対策として不動産活用は切っても切れない有効な手段の1つになっています。

日本の宅地面積は国土のわずか5%誰もが信じて疑わなかった「土地神話」

このように不動産を利活用した相続対策の有用性はご理解いただけたと思いますが、土地活用の必要性はそれだけではありません。
ご存じだったでしょうか。わが国日本の国土は約38万平方メートルあるのですが、そのうち宅地はわずか5%しかありません。森林が7割近くを占め、残りは道路や河川などとなっています。
つまり、この5%の面積の中で1億人超の人々が日々の暮らしを営んでいるのです。
当然、宅地の有効性は高まります。住宅地の価格にも上昇圧力が掛かります。かつて「土地本位制」や「土地担保主義」といった言葉がもてはやされたのも、土地が有形資産として崇拝されたからです。1972年(昭和47年)、田中角栄氏が掲げた「日本列島改造論」が脚光を浴びたのも、地方分散や都市改造を通じて狭い国土の最適化(大規模な再配置)を図ろうとした点が評価されたためです。

バブル当時、地価は上昇し続けるという「土地神話」を誰もが信じて疑いませんでした。資産形成上、土地ほど有利な資産はないと公然と考えられていました。
今日、冷静に考えてみると、何ら裏付けのない「迷信」に踊らされていたわけです。国も企業 も個人も我を忘れ、国民総出で宴うたげに酔いしれていました。
しかし、合理的根拠のない好景気が長続きするはずはありません。年号が平成に変わるとともに、日本の景気はダウントレンドへと変調を来しました。バブルは崩壊し、わが国の土地は「富」を生み出す『富動産』から保有資産を食いつぶす『腐動産』へと一変しました。
とりわけ商業不動産の下落が著しく、金融機関は多額の不良債権を抱え込みました。企業は保有コスト(建物の維持管理費用や税金など)に耐え切れず、社宅や福利厚生施設の売却を断行しました。年を追うごとに減損する保有資産を嫌気し、バランスシートの観点からも資産リストラを加速させました。

次の一手を見いだせない日銀2%物価目標の達成は夢のまた夢

それから四半世紀が過ぎ、見える景色は大きく変わりました。2021年2月には日経平均株価が1990年8月以来、約30年ぶりに3万円台を回復。
ついに東京都心部の新築マンション価格はバブル期のそれを超えました。日本銀行による異次元の金融緩和政策が投資熱を駆り立てているのです。一見すると、バブルの後始末が終わったようにも受け取れます。
しかし、その日銀も政府も今もって「デフレ脱却宣言」できていません。黒田総裁は「もはやデフレではない」と説明しますが、2%の物価安定目標を達成する見込みは限りなくゼロに近いといえます。
バイデン政権となったアメリカでは2021年10月、消費者物価指数が前年同月比6.2%まで上昇しました。31年ぶりの高水準です。早くも米金融当局はゼロ金利政策の解除時期を模索しており、政府も中央銀行も過熱するインフレ退治に躍起になっています。

これに対し、いまだ日本の消費者物価指数は0%台を行き来しており、「(インフレ)期待に働きかければ物価は上昇する」と信じてやまない黒田イズムは息切れし始めています。次の一手を見いだせない金融政策の限界を市場関係者は敏感に感じ取っています。日銀による強気の物価見通しは、今や「カラ元気」と捉えられているのです。長期化するマイナス金利政策は、出口(金融政策の正常化のタイミング)が見えないなか、その副作用ばかりが重くのしかかります。

高騰しているのはマンションのみ一戸建ても住宅地も価格は横ばいが続く

このように「デフレ脱却宣言」できない経済環境にあって、かつてのような土地バブルが再来するとは考えにくいでしょう。確かに、一部では緩和マネーの受け皿として都心のマンションが高騰しています。2021年10月現在、東京23区内の新築マンション価格は平均8455万円まで上昇しました(不動産経済研究所)。しかし、よく見ると一戸建ても住宅地も横ばいを続けています。決して、すべての価格が上昇しているわけではありません(次ページのグラフ参照)。要は、一戸建ても住宅地も保有しているだけでは収益(価格上昇)が見込みにくいのです。

図2:不動産価格指数(住宅)(令和3年5月分・季節調整値)※2010年平均=100

【出典】国土交通省「不動産価格指数」(令和3年8月31日)

だからこそ、オーナーの皆様には土地活用してほしいのです。何も手を打たなければ、資産価値の上昇は見込めません。黙っていても、すべての不動産が毎年のように上昇したのは30年 前の話です。現在、一戸建ても住宅地も価格が上昇する気配はありません。大事な資産を何もせず遊ばせておくのは、もったいない話です。
利活用して初めて、富を生む「富動産」に生まれ変わるのです。

飽和状態のなか、潜在ニーズを具現化できれば土地活用は成功する

飽和状態のなか、潜在ニーズを具現化できれば土地活用は成功する最後に注意点にも言及しておきましょう。予見されるリスクを前もって排除できれば、土地活用の成功の可能性はさらに高まります。

現在、懸念されているのが住宅市場の需給バランスの不均衡です。少子高齢化に伴う多死社会(人口減少)が到来しつつあるにもかかわらず、供給過剰による住宅ストックの増加(家余り)がマーケットの需給関係を不安定にしています。
総務省によると、日本の総人口は2009年をピークに12年連続で減少しており(2021年1月1日現在)、こうした減少傾向は今後も続くと予想されます。その半面、コロナ禍にあっても新築住宅は建設され続けており、完全な飽和状態に陥っています。近年、空き家が社会問題化していますが、当然の流れでしょう。その数およそ849万戸、空き家率は13.6%まで拡大しています(2018年住宅・土地統計調査)。魅力のない物件はタダ(無料)でも買い手が見つかりません。
収益を生まない物件は「お荷物」=「腐動産」以外の何物でもないのです。

では、どうすればいいのか?
月並みではありますが、地域特性や居住者ニーズに合致した土地活用が成功への近道です。近頃、国道16号エリアに賃貸ガレージハウス(1階がガレージで2階が居住スペースの集合住宅)が増えています。常に愛車と接していたいという車好きのハートを射止めた結果といえます。
潜在するニーズを具現化できれば、新たな価値を創出できるのです。差異化は他の追随を許さ ない無類のアピールポイントとなります。

繰り返しになりますが、今後、土地神話の再来はないでしょう。利活用なくして収益は生まれません。何もせず放置しているのは、もったいなさ過ぎるのです。相続対策や保有不動産の有効利用として、土地活用を考えてみてはいかがでしょうか。

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