さらに進んだ所有者不明土地特措法
公開日:2022/02/28
POINT!
・2022年2月4日、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(所有者不明土地特措法)の一部を改正する法律案」が閣議決定された
・所有者不明土地に関する問題解決は道半ばではあるものの確実に進展
以前、「所有者不明土地の解消に向けた施策とは」 というコラムで、所有者不明土地について取り上げましたが、2022年2月4日に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(所有者不明土地特措法)の一部を改正する法律案」が閣議決定され、さらに一歩進むことになりそうです。地方都市だけでなく、都市部でも見られる「所有者不明土地」の円滑な利用が進めば、地域に大きな社会的メリットがあると考えられています。
2018年の特措法成立から3年が経過
「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(所有者不明土地特措法)」は、所有者不明土地が東日本大震災の復旧・復興事業などの妨げとなっていたことがきっかけで、2018年に成立しました。その法律の中で、所有者不明土地を地域のために役立てる制度や収用手続の迅速化のための制度が創設されました。
その附則に、「政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律の施行の状
況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるも
のとする。」とあり、今回はこれに沿った改正となります。
特措法成立から3年の間に起こった要望
都市化が進むことで、一部地域では土地そのものへのニーズの低下、少子高齢化により相続件数が増え土地所有意識の希薄化が進むなどといった背景から、土地の引き継ぎが困難になる可能性が増えています。こうしたことから今後も所有者不明土地の増加が見込まれています。それに伴い、管理がなされていない所有者不明土地がもたらす悪影響を懸念する声が高まってきました。
このため、市町村をはじめとする地域の関係者が実施する所有者不明土地対策を支える仕組みを充実させる必要があると判断され、今回の改正案「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律案」が閣議決定となったわけです。
改正法案の概要
改正法案は主に次の3つから成ります。以下に、土地オーナー様や宅建業者にも関係があると思われる点を列挙します。
1)所有者不明土地の利用を円滑に進めるための促進
- 1-1 所有者不明土地を公益性の高い施設として活用する「地域福利増進事業」の対象事 業に、備蓄倉庫等の災害対策に関する施設等の整備が追加されます。
- 1-2 民間事業者が実施する地域福利増進事業のための土地の使用権の上限期間が、現行の10年から20年に延長されます。
- 1-3 損傷や腐食など老朽化が進み利用が困難な空き家等がある所有者不明土地においても、地域福利増進事業や土地収用法の特例手続の対象として適用されます。これにより、収用などの審理手続きが省けます。
2)災害等の発生防止に向けた管理の適正化
- 2-1 引き続き管理が実施されないと見込まれる所有者不明土地等について、周辺の地域における災害等の発生を防止するため、市町村長による代執行等の制度を創設されます。
- 2-2 民法上の利害関係人に限定されている管理不全土地管理命令の請求権を市町村長に与えられます。
- 2-3 代執行等の準備のため、所有者探索に必要な公的情報の利用等を可能とする措置が導入されます。
3) 所有者不明土地対策の推進体制の強化
大きく進歩したポイントはここになります。
- 3-1 市町村は、所有者不明土地対策計画の作成や所有者不明土地対策協議会の設置が可能になります。
- 協議会の構成員と予定されている方は、以下のような方になります。
・所有者不明土地円滑化等推進法人(下記 3-2参照)
・地域福祉推進事業などの実施予定者
・関係都道府県・国の関係行政機関
・宅地建物取引業者
・司法書士などの専門家
・学識経験者 - 3-2 市町村長は、所有者不明土地や低未利用土地等の利活用に取り組む法人を、所
有者不明土地利用円滑化等推進法人として指定できるようになります。
地域の専門家、例えば宅建業者や司法書士、また学識経験者を構成員として、所有者不明土地や低未利用土地の活用・利用に取り組む非営利活動法人や一般社団法人などを指定することができます。
以上が、この度閣議決定された改正法の概要となります。(国土交通省資料より抜粋)
省庁横断の大プロジェクト
所有者不明土地に関する問題は、ここで取り上げたような国土交通省関連の法案、また前述した「所有者不明土地の解消に向けた施策とは」で取り上げた法務省関連の法案、また総務省管轄範疇の問題もあり、省庁横断的に進められています。所有者不明土地に関する問題解決はまだ道半ばですが、一歩ずつ確実に進んでいるようです。土地を所有する方、これから土地の相続を受ける可能性のある方には、関係の深い法となりますので、注視しておく必要がありそうです。