第2次審査結果発表
ご応募いただいたみなさま 本当にありがとうございました。2010年1月30日(土)に開催された「第3回高齢者いきいき居住アイデアコンテスト」公開第2次審査において、1次審査を通過した9組のプレゼンテーションと審査員による公開審査を経て「住まいの設計の部」の各賞が決定いたしました。
住まいの設計の部
最優秀賞 賞金50万円

受賞作品 あまりものねっとわーく 〜斜面戸建て住宅地全部一階化計画〜
受賞者  田持 成輝 / 田中 了太 / 藤本 篤

あまりものねっとわーく 〜斜面戸建て住宅地全部一階化計画〜 田持 成輝 / 田中 了太 / 藤本 篤

斜面地に建つ戸建住宅を隣の家と連結する提案である。高齢者が自身の身の周りを整理する。そして、余剰となったモノをお裾分けすると使われていなかった二階の部屋が空っぽになる。そこで隣の家の一階と連結する。と、下の家の二階と隣の一階が横方向で連続し平屋の住まいが出来上がる。余剰となった部屋を隣家とつなげることで段上の敷地形状をもつ住宅が新しく生まれ替わった。街全体のレベル差を使って人と車の関係も提案できるとより説得力があったのではないかと思われる。
(竹原 義二)

受賞コメント

斜面地に建つ一戸建て住宅地として発達してきた宝塚市において超高齢化社会の未来を考えました。
宝塚市は近い将来、高齢世帯の人口が一気に増えると考えられる典型的な郊外住宅地です。そこで街が高齢化することによって使われなくなる “二階”と“もの”を宝塚特有の “斜面”地形を利用してお年寄りのふれあいの場所にできないかと考えました。自分一人では持っていても仕方のない“あまりもの”を外に対してちょっとだけ開いてやることで街は全く変わるのではないかと考え、提案しました。今回、公開審査に参加させていただいたことで、審査員の先生方から貴重なご意見を伺うことができました。特にソフト面からの提案も大切だと言うご指摘は、建築空間だけを提案した私達にとって非常に印象的でした。今回の審査会で得たことを生かし、建築だけでなくそこを利用する人々の生活までを含めて提案していけるようになれたらと考えています。

優秀賞 賞金25万円

受賞作品 ひとは、いきなり高齢者にはならない
受賞者  小林 進

ひとは、いきなり高齢者にはならない 小林 進

結婚期から終末期までの5段階のライフサイクルに合わせて、住宅を改造し続けることで、住み慣れた住宅で生活が続けられることの提案であり、ユニークで、かつ実現可能なアイデアである。この我家は、部屋の改修や生活機器類の変更だけでなく、ソフト面でのコミュニティの人々との関わり方の変化も構想に含めており、地域の中に住居や家族を位置づけることで、高齢期での「いきいき」感を醸し出している作品である。
(白澤 政和)

受賞コメント

高齢者がいきいきとして居住する空間を考えるに当たり、「いきなり人は高齢者になる」訳でなく、高齢にいたるまで数十年かってその年齢にいたる過程があります。その過程で、「転ばぬ先の杖」を元気なうちに対応できるよう「ハード」と「ソフト」の両面でサポートしながら、「頭と身体がしっかりしているうち」に自分の住いに手を加え、「便利で、使い易い住い」を可能とするプロセスを提案しました。
「レイアウトフリー住宅、大型什器類の交換システム、デイケアー&ヘルパー関連情報の整備、リフォーム実例の整合性調査・研究」などの情報提供、関連什器販売が必要と考えました。特に、大型什器類として「キッチン関連什器、洗面脱衣、トイレ、バスユニット」などを「リフレッシュ、リサイクル、リユース」する「リサイクルマーケットの充実」が必要としましたが、「住み易さ」に傾注したため、審査員の先生からは外部との関わりをどう考えるのかとの宿題をはじめ、貴重な示唆を多く頂きました。

受賞作品 わがまち。TOWN オアシス。
受賞者  大賀 行雄 / 町田 敦 / 大金 司

わがまち。TOWN オアシス。 大賀 行雄 / 町田 敦 / 大金 司

大都市内におおく見受けられる木造密集住宅街へのユニークな提案です。地域にあるこれまで住み続けていた人々が作り出してきた豊かな資産、もの、人、コミュニティを保存しながら、耐震壁や断熱壁、防火壁を町の中に作り出すことによって地域の再生を提案しています。まちづくりの過程をとうして、人々はより住みやすい、豊かな環境を作っていくことでしょう。プロセスへの言及があればもっと意味深い提案になったのではないでしょうか。
(有村 桂子)

受賞コメント

この度は優秀賞という評価を戴き、ありがとうございました。このコンテストのような活動の一つ一つが、高齢社会をより良いものにして行くのだと思います。何よりも、公開2次審査会に参加させていただけた事が、私共にとって意義深いものでした。高齢者を取り巻く居住環境について、色々な世代が、様々な角度から、アイデアを持ち寄り、そして審査員の方からのコメントが添えられて行く事で、会場内には目には見えない、相乗効果のような一体感があった様に感じました。コンテストを通して考えたアイデア、皆様から得たヒントを建築設計の実務に存分に活かし、これからの高齢社会へと還元して行きたいと思います。

入選 賞金10万円

受賞作品 高齢者いきいき居住空間の提案
受賞者  田代 伸一郎

高齢者いきいき居住空間の提案 田代 伸一郎

施設と田園との一体化を図ることで自然との調和、それによるやさしい生活の実現、また高齢者以外の方々とのふれあいが基本テーマとなっている。田園内に散在する居住ユニットにも「地域とのふれあい」を促進させるための仕掛けが盛り込まれており、住人同士のふれあいが無理なく自然に行われ、いきいきと安心して暮らせるコミュニティを描き出している。居住ユニット以外の施設の提案が文章のみの表現になっており、そこでの生活シーンが見えてこなかったのが残念ではあるが、新しい街づくりの1つのコンセプトとして、これからのコミュニティのあり方を考える上で参考になる。
(濱 隆)

受賞作品 Anti-Aging for Aging in Place 健康に住み続ける家
受賞者  貴志 泰正 / 松本 大輔

Anti-Aging for Aging in Place 健康に住み続ける家 貴志 泰正 / 松本 大輔

体をあまり使わずに過ごせる家はとても快適そうに見えます。しかし、体の負担は減らせても体力も低下させてしまいます。健康に住み続ける家とは、心身機能を出来るだけ保持して真の快適性を持続させる家です。段差を積極的に活用し、その効用を巧みに取り入れた住宅の横には菜園もあります。心の健康も維持しながら、適度な運動量を確保しつつ楽しみながら段差を利用することができます。その場その瞬間の刹那主義的快適性ではなく、長い目でみた快適性をアピールした「しつらい」が高く評価されました。
(岡田 明)

受賞作品 土間の抜け道
受賞者  岡 慶一郎

土間の抜け道 岡 慶一郎

歴史的な街並みを持つ町屋の再生の提案である。一階の土間を表通りから裏へと通じる路地として開放し裏庭へと連続させる手法は見応えがある。しかし、新しく生まれた路地の横に居場所空間をつくり出しコミュニティを活性化させる提案は既視感があった。二階に高齢者が住む集合住宅を提案しているが住居プランに革新性が見いだせなかった。着想点・図面表現は評価できるが全体的に物足りなさを感じた。
(竹原 義二)

受賞作品 Continuas & Cut House 家族とつながり、住人とむすびついた集合住宅
受賞者  松本 僚平

Continuas & Cut House 家族とつながり、住人とむすびついた集合住宅 松本 僚平

4家族が適度な距離を保ちながら住む共同住宅の提案である。“あみだくじ”のつながりが多様な空間変化をもたらし、その模型写真は とても魅力的である。さらにこれを、状況に応じて4家族間で空間を融通し合えるようなアイデアにまで昇華させれば、家族の成長や高齢者の老化などの生活変化に対応できる「新しい時代の共同 住宅」にもなり得る可能性を秘めている案である。今後の展開を期待したい。
(森 一彦)

受賞作品 坂と菜園のある風景
受賞者  杉中 俊介

坂と菜園のある風景 杉中 俊介

京都のにある集合住宅団地の敷地に菜園つき集合住宅の提案です。農業を営むことによって健康に誇りをもって暮らすご老人たちの姿が心をなごませます。この様なミニ田園都市を都市のあちこちに出現させれば、都市の緑化問題、農産物の
地産地消、などの課題がご老人の底力によって解決されそうなそんなユートピアの可能性を感じさせます。
(有村 桂子)

受賞作品 呼吸する小学校 少子高齢化時代における小学校の役割
受賞者  池田 真人

呼吸する小学校 少子高齢化時代における小学校の役割 池田 真人

小学校はつねに地域の中で期待されている公共施設であり、少子高齢化時代をむかえ、新しいあり方が模索されはじめている。すでに全国で小学校の空き教室をディサービス、高齢者住宅、学童保育などへの展開が試みられている中で、この案は時間軸で柔軟に対応する小学校の新しいイメージを提示している。ただ、そこに盛り込まれた機能は従来の枠内にあり、子どもや高齢者、地域住民がいきいきする環境デザインとは何か、さらなる追求が望まれる案でもある。
(森 一彦)

大和ハウス賞 賞金10万円

【戸建住宅部門】
受賞作品 狛江の家 〜住み継がれる家〜
受賞者  加藤 五月

狛江の家 〜住み継がれる家〜 加藤 五月

「応募作品の多くが、今の高齢者にポイントをあてた提案だったのに対し、狛江の家の視点は16歳の長男を主人公において、今後のライフスタイルの変化を考え、より高齢化社会を迎える近未来を考える上での、重要なアプローチである点を評価しました。その中で単純に住み継いでいくだけでなく、将来の高齢者がいきいきと生活しているシーン提案が細部に盛り込まれていることも評価の一つとしました。」
(住宅事業推進部  水谷 勲)

【低層集合住宅部門】
受賞作品 分畳「情」住宅
受賞者  永井 孝直 / 藤井 公平

分畳「情」住宅 永井 孝直 / 藤井 公平

この作品は、高齢者が集まって住む上でいかにして楽しくコミュニケーションをとるかを可動間仕切りを使って実現するという提案です。新聞(瓦版)形式で洒脱な文体・構成によるプレゼンで江戸情緒を感じさせる下町の長屋のような「なにやら楽しげな老後」を思わせるイラストがよくできています。集合住宅で可動間仕切りを使った例は多くありますが成功例はほとんどありません。使う側の用途、目的に応じた重い間仕切り、軽い間仕切りを開発する必要を痛感しました。
(集合商品開発部  島 正登)

【マンション部門】
受賞作品 CONDONORC 分譲マンション高齢者コミュニティ
受賞者  松浦 弘樹

CONDONORC 分譲マンション高齢者コミュニティ 松浦 弘樹

応募総数182件中マンションそのものの提案及びマンションでも考えられる居住空間の提案があわせて29件ありました。既にある色々なニーズ・アイテム・情報を組み合わせた提案が多く見うけられました。選出した案においては、マンション内でのリノベーション費用の捻出・新規入居者獲得・団地内での住替え等の考え方をまとめ、マンション建物の階層毎にターゲット層を分け一つの建物で共存出来る提案をされています。今後のマンション事業における取組の一つの案でも有ると考えられます。住まいの設計の部としては提案内容に具体的な表現がやや乏しいものの考え方やコンセプトを評価して選出いたしました。
(マンション事業推進部  馳川 二朗)

【高齢者施設部門】
受賞作品 「スミカエ」団地 多世代が暮らすコミュニティ
受賞者  山田 信博

「スミカエ」団地 多世代が暮らすコミュニティ 山田 信博

これからの高齢者社会を考えるとき高齢者が地域社会に生活の基盤を置き生活を継続していく支援が必要である。そのとき高齢者世代のみの生活、逆に若者、子育て世代等のいない生活空間はナンセンスである。その意味で今回の「スミカエ」提案は一団地に高齢者グループホーム・保育所といったミニ社会の構成を重要視ししていて団地としての垂直的構成から面的構成への広がりを感じさせ将来的発展を期待するものである。
(シルバーエイジ研究所  松浦 正悟)

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