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コラム vol.549
  • 日本社会のこれから

インパクト投資への認知は低いものの、若い層を中心に徐々に関心が高まる

公開日:2025/04/30

近年、ESG投資やその手法の一つとして「インパクト投資」と呼ばれる投資が増加しています。インパクト投資とは、財務的な収益を追求しつつ、社会的、環境的なインパクトを生み出すことを目的とする投資手法のことで、インパクトとは、事業活動によって生じた社会的・環境的な変化や効果ということになります。

これまで、投資とは大きく「リスク」と「リターン」という二つの判断軸で評価されることが多かったのですが、そこにインパクトという第3の軸を加えた投資がインパクト投資ということもできます。

インパクト投資とよく比較されるのが、ESG投資です。両方とも、環境問題の解決やサスティナビリティの実現を求める投資で、広い意味では、インパクト投資はESG投資に包括されることもあります。

ただし、ESG投資は非財務情報も考慮して企業の将来性やリスクを分析し、企業の持続可能性を評価するのに対し、インパクト投資は社会的成果を重視し、具体的な成果を測定します。企業の製品やサービスによって社会的・環境的課題を解決できるのかを測定・評価するのが特徴だといえます。

日本でもインパクト投資が大きく増加

インパクト投資の増加を示すデータとして、「GSG Impact JAPAN National Partner事務局/一般財団法人 社会変革推進財団(SIIF)」が公表した「日本におけるインパクト投資の現状と課題 - 2024年度調査 -」があります。この資料によれば、日本におけるインパクト投資残高は、17兆3,016億円(昨年度比150%)に到達。大きく増加しているようです。

※「インパクト投資に関するアンケート調査(2024年)」に回答した組織のうち、インパクト投資の要件を満たす59組織の投資残高(Asset Under Management,AUM)の総和

このレポートの中では、この拡大要因として、「新規参入よりも既存のインパクト投資取り組み組織による拡大が大きい」ということ、そして、「新規・既存ともに昨年度からの増加額の多くは銀行・生保が占める」という2点を挙げています。その根拠として、2023年から継続回答している50組織が昨年比4兆1,194億円(136%)の増加で、全体の増加額5兆7,602億円のうち72%を占めることから、既存のインパクト投資取り組み組織による拡大が主な要因であること。また、全体の増加額5兆7602億円の内訳では、大手銀行、生保が8組織で全体の94%を占めていることをあげています。

日本で昨年比150%の伸びを示しているといっても、世界のインパクト投資市場を見ると、2024年のデータで約235兆円(1.571兆ドル)へと成長しており、日本での成長の余地はまだまだあるようです。
今後への期待として、このレポートの中で、金融庁が事務局を務めるインパクトコンソーシアムが始動し、2024年12月末現在で法人・組織会員が339団体に達しており、官民を挙げてインパクト投資への機運が高まっていることを紹介しています。

インパクト投資への認知は高まるも、7.7%にとどまる

このインパクト投資ですが、現在日本においては、どの程度の認知なのでしょうか。
「日本におけるインパクト投資の現状と課題 - 2024年度調査 -」では、「インパクト投資に関する消費者意識調査」も行っていますので、その結果を紹介します。

意識調査の中で、「経済的なリターン(利益)を生み出すと同時に、社会課題解決も追求する投資を『インパクト投資』と呼びます。あなたは『インパクト投資』という言葉を聞いたことがありますか。最も当てはまるものを一つ選んでください」という質問があり、「意味をよく知っている」「意味を少し知っている」「言葉は聞いたことがあるが、意味は知らない」という3つの答えを選択した人の割合を紹介しています。

その結果は、「インパクト投資の意味を多少なりとも知る認知度」は7.7%(意味をよく知っている2.5%、意味を少し知っている5.2%)と、これまでの調査では、最高値(2022年は7.1%)となったようです。「言葉を聞いたことはあるが、意味までは知らない層まで含めた広義の認知層という点では、初めて20%(聞いたことあるが意味は知らない12.2%)に達した(2022年は17.6%)としており、徐々にではあるものの、インパクト投資の認知のすそ野は確実に広がっているとしています。
しかしながら、投資家の間では、すでに一般的な言葉となっている「インパクト投資」ですが、一般への知名度はまだまだのようです。

また、この調査では、年齢別、収入別、投資経験のありなし別の調査結果も紹介しています。まず、投資経験のある層は、「インパクト投資の意味を多少なりとも知る認知度」は12.9%、投資経験のない層は2.3%と、大きく差が開いています。

男女とも、投資経験ある20代、30代のいわゆるZ世代、ミレニアル世代の認知度が高くなっています。20代の投資経験のある男性の場合、「インパクト投資の意味を多少なりとも知る認知度」は38%と群を抜いて高くなっています。
また、「インパクト投資実施への関心度」を問う質問では、投資経験のありなしに加えて、収入による違いも大きく、投資経験のある世帯収入1500万円以上の層は、「大いに関心がある、やや関心がある」と回答した人は40%と全体の16.4%を大きく上回っています。

「インパクト投資を行うことに関心がある」と答えた人に、その理由を尋ねた質問では、やはり「社会課題の解決に貢献できそうだから」(8.2%)という回答が最も多く、インパクト投資を行うことに関心ある層(16.4%)のうち半数を占めています。

NISAの普及などで、投資経験のある人が増え、「インパクト投資」にも少しずつではあるものの、若い層を中心に、関心が高まってきている状況のようです。自分の投資が社会問題の解決につながるというエシカルな発想は、これからの社会には必要な考えではないでしょうか。

この記事のデータは、一般財団法人社会変革推進財団『2024年度インパクト投資に関する消費者意識調査』2024年より引用しています。

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