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  • 土地活用法律コラム

コラム vol.077

家族信託®を活用した新しい財産管理と相続・認知症対策 vol.5
「争続防止信託」の活用とは?

公開日:2015/08/31

ステージIVの悩み:「争続対策」を家族信託で実現

我が国では「相続は揉める」といったマイナスイメージが強いと感じていますが、財産とは本来は所有者自身がその行く末を決める権利を持っているのですから、何かおかしいのではないでしょうか。
多くの人は、いわゆる「法定相続」が相続の常識と考えているようで、実際に多くの相続セミナーなどでは、最初に法定相続を前提として「配偶者が半分、子たち全員で残り半分の相続権がある」といった説明をしています。
しかし、本当は我が国の民法は遺言優先主義となっており、遺言があれば一応はその通りに相続されることになりますので、最初から法定相続が前提という制度ではありません。

最近、「遺言減税」という話題が出てきています。遺言書があれば相続税の基礎控除を少し引上げ、実質的に減税となる制度が近々導入されるようで、遺言を考えようとする人が一気に増えるのではないかと思います。ただ、我が国の民法には「遺留分制度」というものがあり、遺言によって特定の誰かに財産を相続させたとしても、法定相続人(兄弟姉妹を除く)が一定範囲で財産を渡すよう請求できるという権利を持っているため、その権利が濫用されることによって「争続」に繋がっているケースがとても多く、遺言をしただけでは完全な対策にはなり難いのが現実です。
この遺留分制度というのは、公平という名のもとに、財産所有者への貢献度に関係なく、無条件に権利を認めているもので、我が国の歴史上にも、また諸外国の法律にも同一の制度は無く、極めて特殊な仕組みであると思います。 そこで、家族信託の「物権の債権化機能」の出番がやってきます。

「物権の債権化機能」による遺留分給付型信託の活用

物権の債権化機能とは、言葉は難しいですが、要するに信託をすることによって、元々は一つの固まった所有権(物権)であったものが、極めて柔軟で融通の利く受益権(債権)に変わるという機能です。

所有権を二人以上が取得すると共有物となるしかなく、その後は共有者の合意がなければ何もできなくなってしまいますが、受益権は二人以上が取得しても単に複数の受益権に分かれるだけで、それぞれの権利が独立していることが特徴で、さらに受益権は契約で自由に作られるものですから、所有権では不可能な「譲渡禁止」などの特約事項を付加することも可能となります。

図表1:家族信託の4大機能

争続になって最も困るのが、仲の悪い人同士が同じ一つの所有権を共有する結果となり、互いの意見が合わない、あるいは話し合い自体ができないなどの理由でもって、結局何一つ物事が進まなくなることです。

例えば、親のAさんには、二人の子があり、Bさんは同居して身の回りの世話をするなど、絶対的に信頼を置いている親孝行者、Cさんは幼少時から親を全く顧みない親不孝者であったとします。
Aさんは当然、親孝行者のBさんに全財産を相続させたいと思うことでしょう。
しかし、我が国の民法はそれを許しておらず、例えAさんが「全財産をBさんに」との遺言をしたとしても、Cさんには法定相続分の2分の1、すなわちAさんの財産の4分の1を渡せと主張する権利があり、しかもその権利は極めて強力なもので、請求さえすればAさんの全ての財産について、Bさん4分の3、Cさん4分の1の共有となってしまうのです。そこで、そういった事態を回避するため、Aさんが元気な間に全財産を信託して所有権から受益権に変換しておき、その受益権の4分の1相当についてCさんにも与えるという契約にしておく方法があります。
受益権であれば、収益マンションなら毎月の賃料、株式なら毎年の配当というように、その権利割合相当分を支給するだけで遺留分相当を給付したことになりますので、Cさんも不満を言うことはできませんし、何よりも共有化を回避することが可能となります。

先の事例はCさんに遺留分を給付する形でしたが、例えばCさんが音信不通といった場合には、信託契約では全ての受益権をBさんに給付しておいて、もし事後にCさんが遺留分請求をしてきた場合には、その受益権の一部を与えるようにするという方法も有り得ます。
また、信託は相続ではないという前提から、最初から遺留分は存在しえないという見解も取れるのですから、あえて遺留分権利者を無視する契約内容も考えられるでしょう。
遺留分は、遺留分権利者が相続を知ってから1年、または相続開始から10年で時効消滅しますので、いずれはBさんが完全な権利を取得することになります。
このように、家族信託は、契約内容を工夫することによって、「争続」を回避する機能をも併せ持っているのです。

注:「家族信託®」は、一般社団法人家族信託普及協会の登録商標で、著者は権利者からの特別の許諾を得て本文中にて使用しております。

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