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コラム No.119

CREコラム・トレンド

グリーンインフラとEco‐DRR

公開日:2021/07/30

植物や河川、森林など自然の持つ力を生活基盤の改善に活用していこうとする考え方「グリーンインフラ」が最近、注目されています。国土交通省もこのほどグリーン社会の実現に向けた「国土交通グリーンチャレンジ」のなかでグリーンインフラを活用した自然共生地域づくりに取り組む意向を示しました。生態系を活用した防災・減災(Eco‐DRR)にもスポットが当たっています。

欧米で生まれた社会資本整備手法のひとつ

グリーンインフラ(Green Infrastructure)は、自然が持つ多様な機能や仕組みを使ってインフラを整備したり土地の有効利用計画に役立てたりすることで、社会的な課題を解決しようとする取り組みや考え方を指します。高層ビルや高速道路、堤防、ダムなどの巨大建造物を「グレーインフラ」と呼ぶことがありますが、グリーンインフラはグレーインフラに必ずしも依存しない国土整備の新しい手法で、まちづくりから景観の形成、自然再生など多様な波及効果を生みだすことが特徴となっています。1990年代後半から欧米を中心に生まれた社会資本整備手法です。

わが国では2015年の国土形成計画で初めて「グリーンインフラ」の用語が登場し、同年の社会資本整備重点計画などでその内容が盛り込まれました。そして2020年に国土交通省が「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」を設立。自治体や企業、学術団体などから広く参加を募り、情報発信と収集の場を設けて議論を展開することにしました。
そして2021年7月、同省はグリーン社会の実現に取り組む重点プロジェクト「国土交通グリーンチャレンジ」をとりまとめ、そのなかで6つの重点施策のひとつ「グリーンインフラを活用した自然共生地域づくり」を掲げ、グリーンインフラに対する施策を打ち出しています。

  • ・流域治水におけるグリーンインフラの活用推進など
  • ・生態系ネットワークの保全・再生・活用、健全な水循環の確保、CO2吸収源の拡大
  • ・ヒートアイランド対策
  • ・グリーンファイナンスを通じた地域価値の向上
  • ・グリーンインフラ官民連携プラットフォームの活動拡大などを通じた社会実装の推進
  • 国土交通省 「国土交通グリーンチャレンジ」より抜粋

流域治水とは、これまでの河川の管理に携わる関係者が主体になって行ってきた治水対策を一歩進めて、河川流域全体の関係者が協働して展開させる治水対策のこと。集中豪雨による河川の氾濫が毎年のように全国各地で発生しており、地域住民の生活に深刻な影響を与えています。堤防の建設などによる災害リスクの低減だけでなく、自然の力を生かすグリーンインフラの活用で、遊水地による雨水貯留や浸透機能の確保・向上などの対応を進めていくものです。

ヒートアイランド(Heat Island=熱の島)とは、アスファルトやコンクリートが熱をためるため都市の気温が郊外に比べて高くなる現象です。高温地域が都市部を中心に島のような形状に分布することから命名されています。民間建築物の敷地や公共施設の緑化で地表面を覆ったり、郊外から都市部に吹き込む「風の道」を作るなどの施策を推進していきます。

土地の自然利用で自然災害リスクの回避と低減

一方Eco‐DRRは「Ecosystem-based Disaster Risk Reduction」の略で、直訳して「生態系を活用した防災・減災」と呼ばれています。自然の力を防災や減災に活用する考え方で、緑地や雨水貯留浸透施設の活用による洪水対策などがあります。

生態系とは、動植物や微生物などの生き物と、水や土、大気、太陽の光エネルギーなどで構成されている自然環境の仕組みと相互関係を総合的に表した言葉です。Eco‐DRRの基本的な考え方は、(1)生態系を利活用することで自然災害リスクを軽減し社会の脆弱性を低減すること(2)土地を自然のまま利用し続けて危険な自然現象にさらされないようにして災害リスクを下げること、といわれています。

図1:自然災害のリスク低減のアプローチ

出典:独立行政法人 国際協力機構(JICA)
「生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)の実践 ~その効果、国際動向とJICAの取り組み」

Eco-DRRの基本的な考え方は、自然のままの土地利用を継続して自然災害リスクのある場所を避け、万が一の事態になっても生態系によってそのリスクを低減することです。Eco-DRRでは「暴露の回避」「脆弱性の低減」という聞きなれない言葉が出てきます。
暴露の回避とは、津波や高潮の影響を受けやすい海岸沿岸部や土砂災害の起きやすい急斜面の近くなど自然災害リスクの高い場所に住居や道路建設などのインフラ整備を避けること。人命や財産を危険な自然現象から回避することです。
脆弱性の低減とは、生態系を利用して自然災害リスクをできる限り軽減することです。人間は自然災害に対して無力であり、脆弱な存在です。いったん災害に遭遇すれば、道路や交通網、電気・ガス・水道などのインフラも機能停止します。これが社会の脆弱性です。

Eco-DRRは世界各地で実践されています。例えばスイスのアルプス山脈では雪崩や落石、斜面崩壊といった山地災害を低コストで防止・低減するために森林を保護林に指定し保全管理しています。森林という生態系を利用して防災を図ることが人工の構造物に比べて最大10分の1のコストで済むといわれています。

日本国内に多く散在する「棚田」は斜面の谷あいに階段状に作られた水田ですが、適切に管理すれば雨水浸透効果が生まれ、豪雨や台風時の土砂崩壊や地すべりの軽減といった国土保全機能があるといわれています。

わが国は1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けました。近年は相次ぐ台風の上陸や集中豪雨による河川の氾濫や土砂崩れなど、毎年のように大規模な自然災害が私たちの生活を脅かしています。国は2013年に強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靭化基本法を制定し、大規模な自然災害を最小限に食い止める施策を展開しています。

自然の力を利活用して住み良い生活空間を創造するグリーンインフラ、生態系を重んじて自然災害を軽減するEco-DRR。SDGs(持続可能な開発目標)やESGにも合致した取り組みとして今後も注目していきたいものです。

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