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コラム No.41

トレンド

30兆円の不動産投資市場に向けた、国土交通省「アクションプラン」を探る

公開日:2017/10/26

POINT!

・不動産投資市場の有効活用を最適化して、生産性、社会的厚生の向上につなげる

・環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)というESG投資が注目されている

国土交通省が平成29年6月に策定した「不動産投資市場の成長に向けたアクションプラン」(以下、アクションプラン)は、3年後に不動産投資市場を約30兆円にする目標を立てています。
CREの改革やJ-REIT(J-REIT)の改革など、市場活性化に向けて4つの改革を今後展開することになります。このアクションプランについて探ってみます。

政策提言であり、実行計画でもある

平成29年6月に策定された「不動産投資市場の成長に向けたアクションプラン」は、平成27年11月に始まった不動産投資市場政策懇談会の9回の議論を経てまとめられたもので、経済の三要素である「ヒト・モノ・カネ」のうち、「モノ」の大きな比重を占める土地・不動産分野の改革の推進に向けた政策提言であり、実行計画でもあります。
アクションプランの具体的施策は大きく分けて、以下の4つの改革からできています。

  1. (1)CREなどの改革(企業・団体不動産の活性化)
  2. (2)リート市場などの改革
  3. (3)不動産投資市場の投資環境の改革
  4. (4)人材育成の改革

不動産業はこれまで、ある製品が売れれば増産体制を敷くために土地を確保・取得して工場を新設するといった、他の産業の需要を受けて動くような、「受け身」の産業と見られてきたといわれています。
しかし、訪日外国人の急増によるホテル・旅館ニーズの高まりや、高齢化社会の本格化によるヘルスケア関連施設の充実など、不動産ストック有効活用は喫緊の課題になっています。これまでのように、不動産業が受け身のままでいては、社会的、経済的損失が避けられない、とアクションプランは説いています。そこで、アクションプランは、「モノ」である不動産投資市場の有効活用を最適化してノウハウを活用して、社会的厚生の向上につなげたいと考えています。

日本のCRE資産は430兆円、PREは590兆円

企業所有の不動産(CRE)は現在430兆円。我が国の不動産資産の規模は大きく、不動産投資市場のさらなる成長が期待されています。
CREは、貴重な経営資源の一つですが、大部分は、必ずしも企業価値の向上のために有効利用されているとはいえないのが現状ではないでしょうか。国はこれまで、オフバランス化による企業価値の向上などの施策を打ってきましたが、その効果は限定的です。

図1:日本の不動産資産

出典:国土交通省土地・建設産業局(2017年6月21日)「不動産投資市場の成長に向けたアクションプラン」

国土交通省は、今後増加すると予想されている空きビル問題の対応を中心に、従来の受け身のCRE戦略から積極的なCRE戦略への転換を求めています。
具体的には、以下の四つを挙げています。

  1. (1)CRE戦略ガイドライン・手引きの拡充
  2. (2)CREフォーラムの設置・運営
  3. (3)老朽化不動産の更新・活用の促進
  4. (4)PRE戦略の一層の推進

先進的なCRE戦略を実行した製造業などの取り組み状況の調査・分析を通じて、CREを発展・拡充させるために、CRE戦略の手引書の作成、CREフォーラムの設置などに取り組んでいます。

地方公共団体の不動産(PRE)に関しては、厳しい財政難の一方、遊んでいる土地や公共施設の再利用、地方都市などの駅前再開発などに対し、民間のCRE戦略とも連携して不動産資産を有効に活用することを期待しています。そのためには、民間の事業者が関与しやすい環境づくりへの取り組みを進めています。

図2は、CREフォーラムのイメージ案です。これまでCRE戦略の導入が十分に進んでいなかった業界や団体トップなどと不動産会社、金融機関、機関投資家、有識者からなるフォーラムを設置・運営します。その目的は「先導的なCRE戦略の導入・推進に当たってのボトルネックの把握と解決に向けた取り組みにつなげる意見交換の場・発信の場とする」ということです。

図2:CREフォーラムのイメージ(案)

出典:国土交通省土地・建設産業局(2017年6月21日)「不動産投資市場の成長に向けたアクションプラン」

リート改革~老朽化と供給不足のミスマッチ解消へ

地方の都市では、公共施設や駅ビル周辺などで不動産ストックの老朽化・遊休化が進んでいます。その一方で観光、物流、ヘルスケアなど成長分野への不動産供給が不足するというミスマッチが生じており、その解消が課題となっています。
これは、成長分野でありながらも現時点では将来価値が懸念されているために、十分な投資家層を取り込めていないからだと思われます。高齢化社会はまさに本番を迎えており、介護施設のニーズはますます高まっていますが、一方で、たとえばヘルスケア関連施設から得られる収益は診療報酬に依存する性質があり、国の保険制度の変更で収益が変化するなどのリスクがあります。
アクションプランでは、不動産投資のリスク分散を図って投資家のニーズに応え、一層の投資資金を呼び込むべきと説きます。そのために、投資用不動産の多様化を進めます。
たとえば、ヘルスケア関連や物流の分野ではリートの組成が増えつつありますが、病院、インフラ、海外不動産などをリートの対象不動産に加えていく予定です。
一方では、上場リートではない「私募リート」を積極的に使ってCREを進めることも提言しています。

図3:J-REIT用途別保有資産状況(平成29年3月末時点)

投資信託協会公表データより国土交通省作成

J-REITが取得する不動産は、近年では、ホテル、ヘルスケア施設等への多様化が進んでいるものの、オフィス、住宅、商業施設等に比べると資産規模は小さい。

図4:J-REIT・私募リートの銘柄数・資産規模の推移

<J-REIT>

(資産規模)投資信託協会公表データ
(銘柄数)不動産証券化協会HPより国土交通省作成

  • ※2001年9月、2002年3月はARES推計値
  • ※鑑定評価額に基づく

<私募リート>

不動産証券化協会「私募リート・クォータリー(2017年3月末)」

  • ※2011年、2012年は前年12月と当年6月との中間値であり、推測値
  • ※所得価格に基づく

出典:国土交通省土地・建設産業局(2017年6月21日)「不動産投資市場の成長に向けたアクションプラン」

私募リートは平成22年以降組成されてきているが、まだJ-REITに比べ銘柄数も少なく、比較的資産規模は小さい。

注目されるESG不動産投資

決算書などの財務データには表れない、企業の「見えない価値」に着目して投資先を選ぶ、ESG投資が注目されています。環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)への取り組みを評価するものです。世界的な規模では投資残高が約23兆ドル(約2,600兆円)と運用資産の3割近くに達している、との報道もあります。
アクションプランでは、不動産投資の分野でも、ESG投資に沿った環境・社会・ガバナンスに優れた不動産の供給と投資環境の整備が課題としています。現状では「ESG不動産投資」と呼べるだけの評価方法が確立されていないので、新たな認証制度や鑑定評価への反映の仕組みを構築するとしています。
認証制度については、オフィス環境が人の健康や居住快適性、労働生産性の向上にどれだけ貢献しているかを点数化して評価する「WELL認証」も話題になっており、ビル保有の企業で導入が増えています。こうした認証制度がESG不動産投資とリンクすることも考えられます。

投資環境の改革と人材育成

土地・不動産分野の改革を進めるためには、投資家にとって不動産投資市場が魅力ある市場であることが不可欠です。今後は環境や社会、ガバナンスに配慮する「ESG投資の原則」に沿った中長期的な投資を、多様な投資家から呼び込む必要があります。
また、日本の投資市場を金融商品などと同様に不動産投資商品を投資家に選んでもらえるよう、日本の不動産投資環境の整備を進めることが喫緊の課題となっています。アクションプランでは、国内だけでなく海外の投資家を含めて、不動産投資の全般にわたって、広範な情報開示も進めていくべきだと提言しています。
このため、不動産投資運用の総合的な評価の手順を示したガイドラインの策定や、三大都市圏に加えて札幌・仙台・広島・福岡の地方中枢都市を含めた、オフィスと住宅市場に関する成約資料のインデックスなどの資料を提供していきます。
不動産投資市場は成長を遂げていますが、まだまだ成長の余地はあります。しかし、たとえば地方の不動産証券化では担い手不足が続いているように、まだまだ人材不足の分野にとどまっています。
アクションプランでは、産・学・官・金の連携を図りながら、企業の内部に蓄積されたノウハウを活かした専門家の育成のための民間プログラムの推進や大学における不動産教育の機会の提供等を促進する必要がある、と述べています。

図5:MarketMakerとなる人材育成を推進

不動産業がパッシブ(受け身)からアクティブに転換することで市場は活性化し、さらなる成長を遂げていく。アクションプランは、日本の不動産投資市場が他の業種から影響を受けて成長していくのではなく、自ら進んで攻めの姿勢に転じていくことでより成長を遂げることを期待しているようにも見えます。

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