大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

メニュー
コラム No.131

CREコラム トレンド

データセンターの地方分散でリスク管理と将来のインフラを支える

公開日:2022/05/31

デジタルの力で地方を活性化し、コロナ後の新しい生活様式を創り上げる成長戦略「デジタル田園都市国家構想」が動き出しました。2021年10月に誕生した岸田文雄内閣の目玉政策のひとつであり、構想実現に向けて今後インフラ基盤整備が急ピッチで進みそうです。

デジタルで地域の諸課題を解決する

岸田首相は就任後の臨時国会で所信表明演説を行い、その中で「地域が抱える人口減少や高齢化、産業空洞化などの諸課題をデジタルの力を活用して解決していく」と語り、「デジタル田園都市国家構想」について力説しました。同構想は首相が唱える「新しい資本主義」の実現に向けた政策の一環ですが、地方創生やデジタルの推進といった前政権が積み残した懸案の側面もあるようです。

構想の実現には、インターネットなどIT関連のシステム環境の整備が大前提で、総務省や国土交通省などの関係省庁が中心になって検討を進めてきました。総務省が2022年3月にまとめた「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」によれば、以下の取り組みテーマを定めています。

  • (1)光ファイバ、5G、データセンター/海底ケーブルなどのインフラ整備を地方ニーズに即してスピード感をもって推進。
  • (2)「地域協議会」を開催し、自治体、通信事業者、社会実装関係者などの間で地域におけるデジタル実装とインフラ整備のマッチングを推進。
  • (3)2030年代のインフラとなる「Beyond 5G」の研究開発を加速。
    研究成果は2020年代後半から順次社会実装し、早期のBeyond 5Gの運用開始を実現。

データセンターは災害リスク回避で地方分散

光ファイバは、居住者向けでは2020年度末時点で未整備の世帯が39万で、世帯カバー率は99.3%。これを2027年度末に99.9%(未整備世帯は5%)まで低減させる計画です。また2023年度末までに、光ファイバおよび携帯電話のいずれも使えない地域を解消させる計画です。携帯電話4事業者にける「不感地帯」は、2021年度末で40集落、519人になっています。

図:今後の未整備世帯数の目標値

出典:総務省「デジタル田園都市国家インフラ整備計画(概要)」(2022年3月29日)

地方では過疎化が進み、少子高齢が顕著になっているため、システムによって教育や医療の分野でインフラ基盤を整備し、公共サービスの充実を図りたいところです。しかしシステム環境を整備しても、過疎地域の自治体財政はひっ迫しているうえに、そもそも利用者が少ないため、維持管理コストが増大して持ちこたえられないという「二律背反」が生じてしまいます。
とりわけ離島では、海底ケーブルの敷設といった大掛かりな整備が必要となることが多く、財政規模が小さい自治体の力だけで実現させるのは厳しいのが現実です。このため国はブロードバンド事業者が負担しているコストを軽減して、システムインフラの基盤整備が早期に進むよう、電気通信事業法を改正して「ユニバーサルサービス交付金」制度を創設する予定です。また地方の自治体や通信、携帯電話事業者などと地域協議会を組成して地域ニーズに合った環境整備を進めていくようにしていきます。

データセンターと5G、6G

5Gは4Gを上回る超高速性だけでなく、遠隔地でもロボットなどをスムーズに操作できる「超低遅延」、多数の機器が同時にネットワークに繋がる「多数同時接続」という優れた特長を持っており、さまざまなモノがインターネットに繋がる「IoT」社会の実現に不可欠の通信技術。自動運転や建設機械の遠隔操作など多くの産業分野で具体的な取り組みが進んでいます。
わが国では2019年4月に初めて5G用周波数の割り当てを実施して以降、基盤整備が進んでいますが、地域によって基地局や子局などの展開に格差があります。このため5G展開の基盤となる親局の全国展開を実現させ、2023年度末に全国の5G人口カバー率を95%(2020年度末実績は30%台)、全市区町村に5G基地局を整備(合計28万局)、2027年度末に99%の達成を目指します。
全国各地で展開しているスマートシティ計画や自動運転などデジタル実装が増えると、膨大なデータを蓄積・処理するデータセンターの重要性が一段と高まります。データセンターは現在、6割程度が1都3県の「東京圏」に一極集中しています。
首都圏が大地震で被災すれば、わが国の通信ネットワークは寸断される恐れがあり、データセンターの地方分散は、「デジタル田園都市国家構想」の中では最重要課題といっても過言ではありません。 データセンターは十数か所の地方拠点を5年程度で整備する計画です。海底ケーブルは、わが国を周回する海底ケーブルを3年程度で完成させ、陸揚局の地方分散を促進させます。陸揚局とは、海底ケーブルの両端にある施設のことで、ここから陸上の通信網に接続されます。いずれも投資規模が大きいため、総務省・経済産業省で1000億円規模の補助金を出して支援する方向です。
わが国では2020年に5Gの商用サービスが始まりました。モバイル通信は約10年ごとに新技術に世代交代し、その都度高速化してきたといわれています。5Gの次世代「Beyond 5G」すなわち6Gも世界で激しい開発競争が起きており、2030年頃の商用化が見込まれています。国内では2025年の大阪万博を起点として社会実装と国際標準化を推進する計画です。

メルマガ
会員登録

注目
ランキング

注目ランキング