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コラム No.133

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盛土規制法が成立 来年5月にも施行

公開日:2022/06/30

土石流災害を引き起こすなど危険な盛土の規制を強化する法律がこのほど成立しました。
2021年静岡県で発生した崩落事故を契機に、盛土の規制強化が急がれていました。早ければ2023年5月にも施行されます。

土は「資源」、盛土は補強が不可欠

盛土(もりど)は文字どおり、用途に適合するように土地を整備するため新たに土を盛ることです。わが国の国土はいくつかの火山脈が走り、平地が少ないなど地形的に変化に富んでいます。このため山の斜面を切り開いたり谷を土で埋めたりして平地を確保し、住宅地や道路を整備しています。盛土もこうした国土の特性から一般的な土木工法として普及してきました。しかし、土地整備のための盛土とは別に、一時的にせよ放置された土(残土)が各地に数多く存在しています。

土は廃棄物ではなく活用が可能な「資源」として扱うので、建設工事などで出た余剰の土(残土)は、いったん別の場所に移して再利用の機会を待ちます。ところが土の需要が減少し、工事で取り除かれた残土は行き場をなくして堆積し、盛土として放置してしまうケースが増えました。当然ながら、掘り返して移動させた盛土は、ならして固めたとしても元の地盤にあったときと比べれば脆弱です。大雨になると地盤と盛土の境界が決壊して崩落するリスクが高まります。このため盛土の周辺に地下水を逃がす排水施設を設置したり、斜面をコンクリートで補強したりするなどして安全かつ適切に管理・維持することが求められます。

宅地造成規制法に盛土を追加し改正

2021年7月に静岡県熱海市で大雨の影響による盛土の崩落が発生し、死者・行方不明者28人、住宅被害98棟という大規模な土石流事故が起きました。静岡県の調査によると盛土には適切な排水設備は設置されておらず、自治体への届け出を上回る量で産業廃棄物も混ざっていたとして過去に行政指導を受けたことが判明しました。

盛土は農地に転用する場合は農地法、森林伐採の場合は森林法など、用途に応じた法律があり、盛土の高さや斜面の角度、排水の設置を義務付けています。ところがこうした規制の対象外にある土地が国内で数多く存在していることが国の調査で明らかになってきました。盛土を用途別に規制していた結果、規制が必ずしも十分に行き渡っていなかったのです。
国は危険な盛土を全国一律の基準で包括的に規制する法律が必要と判断し、従来の「宅地造成等規制法」に盛土を加えて「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称・盛土規制法)と改正しました。盛土規制法は、①スキマのない規制②盛土などの安全性の確保③責任の所在の明確化④実効性ある罰則措置―の4点を基本方針にしています。都道府県知事など自治体の首長は人家に被害を与える恐れのある区域を盛土の規制エリアとして指定し、規制区域の盛土は許可制にします。盛土を実施するエリアは地形や地質に応じて災害防止のために許可基準を設けた上に、施工の中間報告や工事完了後の検査も実施します。

また盛土の土地所有者だけでなく、崩落が発生した原因の行為者にも是正措置を命令できるようにしたほか、無許可造成や危険な盛土の改善工事など是正措置命令に従わなかった個人に対して罰金を科し、最大1000万円、法人には最大3億円と定めました。

課題山積 残土ビジネスとの関連も

今回の盛土問題は建設工事の過程で生じる「残土」とも密接に関連している、との見方があります。残土が国有地や私有地、山林や道路沿いに不法投棄されている問題です。残土のほとんどが公共工事に関連する建設現場で生じているといわれていますが、前述したように、「土」はゴミやプラスチックなどとは異なり再利用できる資源であることから、売買市場が存在します。このため国は規制の対象から外しているといわれています。国土交通省は2003年、「「建設発生土等の有効利用に関する行動計画」を定め、不適正処理の問題を含めた残土の有効利用についてガイドラインを示していますが罰則はなく、法的な対応に至っていません。

残土ビジネスは多額の利益を生むともいわれ、一つの県が条例を作って規制しても悪質業者は罰則のない、あるいはより罰金が少ない他県に流れるとの指摘があります。また行政指導でも改善が見られない場合は自治体が行政代執行する場合がありますが、その際の費用が高コストのため決断しにくいので改善措置が取りにくい、ともいわれています。土が資源として法的に取り扱われ事業として旨味がある間は、盛土に起因する災害リスクを完全になくすことは難しいかもしれません。

盛土規制法は他県逃れを防止するため全国一律で法の網をかぶせ、軽微な罰金でことを済まそうとする業者には最大3億円の罰金とハードルを上げました。国交省は6月にも盛土規制法で定めた規制区域の指定や造成許可基準などについて検討会を開いて議論し、法施行後5年以内に各地の盛土規制区域の指定を終える予定です。

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