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コラム No.71-4

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「特例事業承継税制」シリーズ(4)複数株主から複数後継者への贈与税の取り扱い

公開日:2019/04/26

平成30年度税制改正による特例事業承継税制では先代経営者からの贈与等を条件に、先代経営者以外の株主からでも贈与でき、かつ特例後継者は特例承継計画に記載された3人まで認められます。どのような場合に、納税猶予を受けることができるのか具体的なケースを通じて紹介します。

複数株主から複数特例後継者への贈与等の基本的な考え方

先代経営者特例後継者への贈与の際の基本的なルールを整理すると次のようになります。

  • 基本ルール(1)
    先代経営者から特例後継者1人に贈与する場合には、特例後継者がすでに所有している株式等と合計して総株主等議決権数の3分の2に達するまでを一括して贈与する必要があります。また、贈与を受けたのちには同族関係者(特例後継者を除く)の中で筆頭株主でなければなりません。
  • 基本ルール(2)
    先代経営者から複数の特例後継者に贈与する場合には、贈与後に特例後継者の株式保有割合は総株主等議決権数の10%以上で、かつ同族関係者(特例後継者を除く)の中に保有株式数の上位者がいないことが必要です。
  • 基本ルール(3)
    先代経営者以外から株式等の贈与を受けた場合においてもこれらの条件を満たしていなければなりません。

ケース別、複数株主から複数後継者への贈与

(1)先代経営者から同族関係者と第三者への同時贈与

特例措置においても第三者への贈与が認められていますが、後継者ごとに同族過半数要件を満たす必要があります。したがって、同族関係者に贈与する場合、同時に2人の第三者に贈与しても特例納税猶予の適用を受けることはできません。あくまでも同族3人までか、第三者とその同族関係者2人までとなります。

(2)先代経営者から特例関係者 1 人に贈与した後、先代経営者以外から他の特例後継者に贈与

特例後継者で長男、二男、長女の3人の後継者の氏名を記載していた場合に、先代経営者(同族関係者の中で筆頭株主)が長男に、所有していた株式等のすべて30%を贈与したとします。その後にもともと15%の株式等を保有していた二男に配偶者が保有している株式20%を贈与し、他の同族関係者が長女に15%贈与した場合には、二男の保有株式が35%となり長男の保有株式を上回ることになります。
長男は、基本ルール(1)の条件で贈与を受けているので、筆頭株主を維持しなければなりません。二男の保有株式割合が長男を上回っても、特例後継者を除外して判定されますので、長男の納税猶予は取り消されず継続されます。

(3)先代経営者から特例後継者 2人に贈与した後、先代経営者以外から他の特例後継者に贈与

特例承継計画で長男、二男、長女の3人の後継者の氏名を記載していた場合に、先代経営者(同族関係者の中で筆頭株主)が所有していた株式等のすべてを長男に20%、二男に20%贈与したとします。その後にもともと15%の株式等を保有していた長女に配偶者が保有している株式15%を贈与した場合には、長女の株式数が30%となり、長男と二男の保有株式数を上回ることになります。この場合も、特例の適用を受けている特例後継者を除いて判定されますので、長男と二男は引き続き納税猶予の適用を受けることができます。

(4) 先代経営者から特例後継者 1 人に贈与した後、先代経営者以外から別の特例後継者 1 人に贈与

先代経営者45%、その配偶者25%、叔父20%、二男10%の保有割合で、特例承継計画で長男、二男2人の後継者の氏名を記載していた場合に、先代経営者が長男に所有していた株式等のすべて45%を贈与したとします。その後、配偶者が保有している株式25%を二男に贈与すると、二男の保有割合は35%となります。
この場合にも、長男を除いて判定しますので二男が筆頭株主で特例納税猶予の適用対象となり、長男も特例納税猶予が継続して適用されます。
先代経営者30%、その配偶者30%、叔父20%、長男11%、二男9%の保有割合ではどうでしょう。先代経営者が長男に所有していた株式等のすべて30%を贈与し、すでに保有していた株式と合計して41%で特例納税猶予の適用を受けました。その後、配偶者が所有している30%の株式を二男に贈与すると、二男の保有割合は39%となります。これは、基本ルール(1)にあたり、長男を除いて判定しますので二男が筆頭株主で特例納税猶予の適用対象となり、長男も特例納税猶予が継続して適用されます。しかし、叔父が二男に贈与した場合には29%となり、配偶者が30%で上回りますので適用できないことになります。

(5)先代経営者から特例後継者 1 人に贈与した後、先代経営者以外から他の特例後継者 2 人に贈与

先代経営者40%、その配偶者30%、叔父30%の保有割合で、特例承継計画で長男、二男、長女の3人の後継者の氏名を記載していた場合に、先代経営者が長男に保有株式40%を贈与し特例納税猶予の適用を受けたとします。その後、配偶者が保有している株式を二男と長女に15%ずつ贈与した場合には、前記「特例後継者の贈与に総株主等議決権数の10%以上」は満たしますが、「同族関係者(特例後継者を除く)の中に保有株式数の上位者がいないこと」については叔父30%のほうが多いため、適用条件を満たさないことになります。

(6)和9年12月31日までの贈与ですでに一般納税猶予の適用を受けている場合

一般納税猶予の適用を受けている場合、経過措置で経営贈与承継期間内に申告期限が来るまでは、先代経営者以外の株主からの贈与等についても一般納税猶予の適用を受けることができます。総株主等議決権数の3分の2に達する部分までで、相続の場合にはその評価額の80%に対応する相続税額が納税猶予となります。なお、一般事業承継税制の適用を受けている代表者が、令和8年3月31日前に特例承継計画の確認を受けて代表者を辞任した上で、令和9年12月31日までに代表取締役に就任した後継者に株式を贈与した場合、特例事業承継税制の適用を受けることができます。

(7)当初の特例承継計画において2人で確認を受け贈与後に追加する場合

当初の特例承継計画において後継者2人で確認を受け贈与した後に、3人目の後継者ついて変更確認申請書を提出します。その後に3人目に贈与することも可能です。この場合の判定は1 人になりますので、基本ルール(1)の要件を満たす必要があります。贈与を受けて特例の認定を受ける前は後継者を変更することが可能です。

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