パートナーと暮らす、二人の住まい。
「マンションも便利だけれど、戸建ての住まいに憧れがある」
「二人だと広さは必要ない?どんな家がぴったりなのかわからない」
そんな方に向けて、住まいづくりのポイントを設計士に問いました。
「二人暮らしの住まいづくりは千差万別。どんな家になるのか、設計士の私もワクワクします」
と語るのは、ダイワハウスのハウジングマイスター・池原尚志。
二人で家を建てるメリットや、個人の価値観を尊重する住まいづくりの考え方などを、
事例を交えてご紹介します。
Profile

大和ハウス工業株式会社
一級建築士・インテリアプランナー・
ハウジングマイスター(社内認定)
暮らしやすさと細かな配慮を大切にしたデザインを得意とする設計士。日常生活の実用的な動線や収納の機能性など、お客さまと共に細部まで考え抜き、機能の先にある美しさを探究します。
自由度が高い、二人暮らしだからこそ実現したい。
個性が引き立つ住まいづくりのポイントとは?
昨今のライフスタイルはさまざまで、どんな住まいも唯一無二ではありますが、例えば4人家族の場合は「3LDK~4LDK」のような大枠の目安というものがあります。ですが、二人暮らしの住まいは良い意味で想像がつかない、つまり『定番の形』が存在しません。私が設計した二人暮らしの住まいは、広さも部屋数も毎回異なります。これは二人暮らしの場合、個人の価値観や生活スタイルが直接的に影響するので、多人数の家族と比べて「個人主体」の住まいづくりが成り立ちやすいからだと考えます。二人暮らしの住まいづくりは、個人の意見を反映しやすく、自由度が高いのも魅力のひとつでしょう。
水回りを自在に配置できることは、注文住宅の大きなメリット

多人数の家族の場合、洗面所やトイレなどの水回りは、使いやすさを優先し、定番のレイアウトになりがちです。ですが二人暮らしの場合は、パートナーの同意さえあれば広さも数も自由に決められ、専用のものを持つことも容易です。例えば、「リビングをコンパクトにして、ホテルのような広い洗面スペースが欲しい」といった希望も、二人暮らしなら尊重しやすくなります。二人暮らしだからこそ実現できる贅沢な空間利用です。生活動線に沿って水回りを配置することは、身支度をスムーズにできたり、就寝時間が異なる相手に気兼ねなく利用できたりと、生活のしやすさに直結します。
関心が高まる、インテリアに自然に溶け込むキッチンデザイン

二人暮らしに限らず全般に言えることですが、キッチンは従来の「実用的な調理空間」から役割が変化し、インテリアに溶け込むデザイン性の高さが求められる傾向にあります。オープンな空間構成のLDKが主流になっている昨今、キッチンがLDKの印象を左右する重要なデザイン要素となっている例も多くみられるようになりました。個人のこだわりを反映させやすい二人暮らしの住まいでは特にそれが顕著に感じられます。キッチンを重要視されていても、「実は料理はあまりしない」という方も珍しくはなく、使用頻度とこだわりは必ずしも比例しません。これはキッチンに限らず、気に入ったものを持つことの満足感や、毎日の気分を高めてくれる情緒的な価値を、住まいでも重要視されるからではないでしょうか。
住まいと一体化する家具選びで、より居心地のよい空間へ
二人暮らしの場合、家具選びにもこだわる方が多い傾向にあります。住まいに取り入れたい家具があるのであれば、そのサイズやデザインを軸にして住まいづくりを考えるのも手法のひとつです。また、住まいの完成後に、ゆっくりと家具選びを楽しむのもいいでしょう。その際も、寸法やデザインに迷われたら、ぜひ設計士やインテリアコーディネーターにご相談ください。住まいと家具は一体でこそ、心地よさが生まれます。一体的であれば空間の完成度は格段に上がりますし、居心地の良さも高まります。
たとえお互いが同じ場所にいても、
思い思いの時間を過ごせる快適な住空間
家の間取りを考える上で、LDKなどの家族が共有する「パブリックスペース」と、寝室や書斎といった個人が使用する「プライベートスペース」という考え方がありますが、実は二人暮らしの場合はその境界が曖昧です。二人がリビングで集まっていても、それぞれが個人の時間を過ごすことが十分に可能ですし、全体的にプライベート性の高い住空間になりやすいと考えられます。そのため、あえて個室を設ける優先度は低いのかもしれません。
それよりも、それぞれのこだわりが詰まったスペースを検討するのはいかがでしょうか。例えば、美容意識が高い方は洗練された洗面スペースを、洋服が好きな方はアパレルショップのような雰囲気のクローゼットを考えるなど、個人の特性を活かした完成度の高い空間づくりをすることで快適性が高まるとともに、個性豊かな住まいが完成します。なかでも空間が独立するトイレは世界観をつくり込みやすく、ちょっとした遊び心を加えるのにおすすめのスペースです。個人の価値観を尊重しやすいのが二人暮らしの良さなので、ぜひ二人ならではの住まいを探求していただきたいです。
ここからは、「二人の個性が形になった住まいづくり」を実現された方々の事例をご紹介します。
【Case 1】 Kさま邸:
趣味の一致が生んだスタイリッシュなオープン空間

Kさまご夫妻は、お子さまが独立されたのをきっかけに、二人暮らしのためのご新居を建てられました。二人ともモノトーンを基調としたスタイリッシュなデザインがお好みで、方向性がスムーズにまとまりました。一緒に過ごす時間をとても大切にされているご夫妻なので、LDKは広々とオープンに。個々に別々のことをしながらでも、自然と同じ空間で過ごすことができます。
また、外空間も生活の一部として使えるように、LDKとプライベート感のある中庭が連続する間取りをご提案。中庭で一緒に朝食を食べたり、洗濯物を干したりしながら日々の会話を楽しまれています。
【Case 2】Fさま邸:
それぞれのセンスや得意分野を活かした住まい

Fさまご夫妻が愛犬と一緒に暮らせる住まいを望んで建てられた、平屋のご新居です。インテリアのセンスとこだわりをお持ちの妻のRさまが、家全体のデザインを考えられました。特にリビングの大きなオープン棚がポイントとなっています。お気に入りの小物がディスプレイされており、住む人の洗練された感性が豊かに表現される空間です。また、リビングに上質感を加えている塗り壁や木目の化粧天井は、素材の知識をお持ちの夫、Kさまが高い関心を寄せられ採用されました。二人がそれぞれの得意分野を担当され、それらが美的に調和するお住まいです。

また、それぞれの生活リズムや使い勝手を考慮し、独立した専用トイレを設置。夫妻のライフスタイルや好みに合わせた設計により、快適な暮らしを実現されています。
【Case 3】Oさま邸:
生活スタイルに合わせてフレキシブルに使える、快適な睡眠環境

将来的に寝室を分けることもできるOさま邸の間取り
こちらはOさまご夫妻が建てられた平屋のご新居の間取りです。寝室と水回りを回遊動線でつなぐことで生活のしやすさに配慮しています。主寝室を二人で使われる予定ですが、将来的に寝室を分けることも可能なように、もうひと部屋をつなげて配置しています。
例えばお仕事の都合などで、どちらかの生活時間が変わった場合、お互いの睡眠に配慮して寝室を分けたとしても、どちらの寝室からもトイレや水回りにアクセスできるように動線を確保しています。

夫妻それぞれトイレや水回りにアクセスできる
また、寝室間の扉を開ければ空間は一体になるので、見守りが必要な際は開放して寝るなど、フレキシブルに使うことができます。
【Case 4】Oさま邸:
大人ならではの「こだわり」を散りばめたお住まい
パートナーと共に暮らすOさまは多趣味で高い感性をお持ちの方。こだわりが細部にまで行き届いた見所たっぷりのお住まいが完成しました。
1. 大空間の一角に佇む、ひとり時間を有意義に過ごせるスペース

時には友人を大勢招くこともあるという、「隠れ家バー」のような大人の住まいならではのLDK。その一角に、ひとりの時間も心地よく過ごせるスペースをつくっています。窓外の坪庭を眺められるように配置したソファは、大空間の中でプライベートな時間を過ごすことができます。また、床を一段下げて他とゆるやかに仕切ったことで、特別感を演出しています。
2. 二人のお気に入りが並ぶプライベートクローク

玄関ホールからつながる、ウォークスルーの広々としたクローク。収納の機能性はもちろんですが、間接照明やガラスの棚板など、アパレルショップのようなしつらえにもこだわって、外出前に気分を高めていただけるような空間づくりをしています。お洒落な二人ならではの魅力的なスペースです。
設計士と共に考える、二人の理想が詰まった住まい
実は二人暮らしの住まいづくりで最も難しいと感じているのが、相反する二人の要望をひとつの形にすることです。時にお客さまが「二人の要望がまとまってなくて」と、申し訳なさそうにおっしゃるのですが、まとめていただく必要は全くありません。もちろん二人の方向性が一致するに越したことはないですが、お客さまご自身で要望をまとめようとすると、どうしても対立してしまったり、一方がパートナーの意見に合わせてしまったりしがちです。私は、二人共が心から満足できる住まいづくりを目指しています。ですので、設計する際は、個々に要望を出し、個人の中で優先順位を決めてもらうようにお願いしています。それら二人の要望を読み解き、プロの視点と客観的な立場で住まいの形にするのが設計士の役割だと考えています。
まとめ
二人暮らしの住まいづくりの醍醐味は、お互いの個性を活かしながら理想の空間をつくり上げられることです。二人の相反する要望も、設計士の視点を取り入れることで上手く調和させることができます。LDKの使い方や水回りの配置など、ライフスタイルに合わせた自由な間取り設計が可能な注文住宅の魅力を最大限に活かしましょう。家具選びや収納計画まで、二人で楽しみながらつくる住まいは、きっと一生の宝物となるはずです。
※掲載の情報は2025年3月現在のものです。