ニュースなどで話題になることもある「ZEH(ゼッチ)」。
しかし「どんな家なのかよく分からない」という方も多いのでないでしょうか。
でも実は、住宅を購入・建築する際にますます欠かせないキーワードとなっています。
今回は、そんな「ZEH」の概要やメリット、補助金のこと、
そして家を建てる前に知っておきたいポイントについて、
住宅業界の最新トレンドやハウスメーカー選びに詳しい、
住生活ジャーナリストの田中直輝さんにお伺いしました。
「省エネ住宅」とは?「ZEH」とは?
まずZEHを語る上で欠かせないのが省エネ住宅です。ここでいう省エネ住宅とは「省エネ対策を取り入れて、国による『省エネ基準』をクリアした住宅」のことです。地球にやさしい住まいづくりを行う上で、欠かせないキーワードです。断熱性能が高い素材が使われていたり、太陽光発電設備があったりするのが特徴の一つだといえるでしょう。
省エネ基準には2つの指標があります。
1. 外皮性能基準
屋根や外壁など建物の断熱性能に関する基準のことです。性能が良くなる=高断熱になります。気候の特徴などから日本全国を8つの地域に分け、地域区分ごとに基準値が設けられています。
2. 一次エネルギー消費量基準
「一次エネルギー」とは石油や石炭、天然ガスなどによるエネルギーのこと。エアコンや照明、給湯器など住宅内で使用される、加工された電気やガスについては「二次エネルギー」と称されています。近年、前者を基準とすることが多くなっていますが、これは省エネ効果や性能がより分かりやすくなるためです。
そして、省エネ住宅からさらに一歩進んだ住宅が「ZEH」です。
ゼロエネルギー住宅
「ZEH」とは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語で、建物の断熱性能を高めること、省エネ設備などの導入によって消費するエネルギーを少なくすることで「省エネ」を実現するとともに、太陽光発電などの再生可能エネルギーを創り出す「創エネ」によって、エネルギー収支が正味ゼロまたはマイナスとなる住宅のことをいいます。
2025年度から住宅の省エネ基準クリアは必須?
ZEH基準への引き上げも!
2025年までには、すべての新築住宅・小規模住宅を対象に「省エネ基準の適合」が義務化されることが決まりました。これは、地球温暖化が深刻化したことにより、2020年10月、政府が2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル宣言」を行ったことが背景にあります。2025年度以降、省エネ基準に適合しない住宅は補助金などの取得支援策の対象からは外され、原則としては建てられないということになるでしょう。
「ZEH」に関しては、経済産業省が「2020年までに、ハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上で、2030年度までには、新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」としています。(経済産業省資源エネルギー庁 省エネポータルサイト)
要するに国は、今後の住宅のスタンダードを「ZEH」としているのです。
「ZEH」は家計にも体にもやさしい
「省エネ住宅」や「ZEH」の基準をクリアした住宅は私たちにとってどんなメリットがあるのでしょうか。
省エネ住宅に取り組む目的は環境問題への対策ですが、それ以外にも、身近なところでたくさんメリットがあります。具体的には次のようなことです。
高断熱・高気密だから一年中快適で
体にやさしい
高断熱・高気密な家にすることで、室内の暖かさや涼しさが損なわれにくくなります。家の中の温度を快適に保ちやすくなるので、省エネをしながら一年中快適に過ごせるようになるでしょう。低断熱・低気密の家に多い部屋間の温度変化も小さくなりますから、特に高齢者に多いヒートショックの対策につながるといった健康面のメリットも期待できます。
長い目で見て家計にやさしい
高断熱・高気密なので冷暖房効率が良くなることによって、光熱費の削減も期待できます。国土交通省の小冊子(快適・安心なすまい なるほど省エネ住宅)によれば、これまでの住宅に比べ、ZEH基準の住宅(東京23区などの温暖地の場合)の方が、年間の光熱費が123,963円下がるシミュレーション※1も出ています。
また、省エネ住宅やZEHを建てる際には補助金や住宅ローン減税のサポートもあるため、家を建てる際の初期費用やランニングコストだけでなく、長いスパンで見たときのライフサイクルコストで考えてみると良いでしょう。
<省エネ住宅と従来の住宅の年間の光熱費の差額>※1
断熱性・気密性に優れるため、冷暖房のエネルギー消費が減り、光熱費の軽減が期待できる
- ※太陽光発電による売電は含みません。
- ※各数値はシミュレーション用に試算したもので、実際の光熱費を保証するものではありません。
遮音性が高いので外部の騒音などを低減できる
省エネ住宅で用いられる高性能な断熱素材には高い吸音効果があるものもあり、そのため外部の音が室内に伝わりにくくなる遮音性が高まることが期待されます。さらにZEHの場合は、壁が従来のものより厚みを増すこと、窓に複層ガラスを使用しているため、さらに遮音性が向上し、室内の快適性の高まりが期待できます。
万が一の災害時も電気を蓄えて安心
台風や地震などの災害で停電になっても、太陽光発電や蓄電池を活用して電気を使うことができるため、安心して過ごすことができます。
例えば、ダイワハウスの「災害に備える家」は、業界初※2の「全天候型3電池連携システム」で、災害などによる停電時、雨天でも約10日分※3は普段通りに電力と暖房・給湯が使えます。
この「全天候型3電池連携システム」とは、電気を創る「太陽光発電」と「エネファーム(燃料電池)」、電気を蓄える「蓄電池」の3つを組み合わせたもの。停電時にはエネファームで発電した電力も蓄電できる「切換盤」を採用し、太陽光発電と連携することで、長期的な停電への備えを実現しているのです。
※1一般社団法人 住宅生産団体連合会 発行 「快適・安心なすまい なるほど省エネ住宅」(2018年12月1日 初版 第1刷発行)
住団連調べ。太陽光発電による売電は含みません。各数値はシミュレーション用に試算したもので、実際の光熱費を保証するものではありません。
- ・計算モデルは事業主判断基準モデルを使用
- ・光熱費シミュレーションは株式会社インテグラルのホームズ君「省エネ診断エキスパート」にて計算
- ・建設地について、温暖地は6地域の東京都23区、寒冷地は2地域の北海道札幌市を想定
- ・それぞれの断熱仕様は、「これまでの住宅」はH4年基準相当、「一般的な省エネ住宅」はH28年基準相当、「高度な省エネ住宅」はZEH基準相当を想定
- ・光熱費単価は、電気:26円/kWh、ガス:180円/m3、灯油:100円/ℓにて計算
- ・ZEH基準相当の太陽光発電設備は、温暖地、寒冷地ともに4kWにて計算
- ・各数値はシミュレーション用に試算したもので、実際の光熱費を保証するものではありません
- ※22019年2月 ダイワハウス調べ(プレハブ住宅業界)
- ※3水道・ガスが使える場合
「ZEH(ゼッチ)」を建てるなら
補助金や減税を上手く活用しよう
省エネ住宅は従来の住宅と比較して建築費が高くなりますが、国として省エネ住宅やZEHを推進し、普及させるため、国による補助金事業などを実施しています。さらに自治体による支援も行われています。
例えば、国の支援策として、2022年6月現在では、住宅を新築する場合、「ZEH支援事業(一般社団法人 環境共創イニシアチブ)」や「こどもみらい住宅支援事業」があり、これらにより数十万円〜100万円程度の補助金が交付されます。
<「ZEH支援事業」新築住宅を建築・購入等する個人が対象の補助事業>
※2022年6月20日時点の情報
※2022年4月28日時点の情報
所得税の住宅ローン減税による控除も、長期優良住宅・低炭素住宅で最大455万円、ZEH水準省エネ住宅最大409,5万円、省エネ基準適合住宅最大364万円、 一般の住宅は最大273万円(いずれも13年間)と大きな違いがあります。これらの制度は、変更になる可能性もありますので、住宅購入の際は確認しましょう。
「ZEH(ゼッチ)」を建てる際に気をつけたいこと
省エネ住宅=快適な家とは限らない。信頼できる事業者を選ぶことが大切
省エネ住宅やZEHには多くのメリットがありますが、「省エネ仕様・ZEHを選べば、絶対に快適に暮らせるのか」というと、そうとは限りません。例えば、窓の面積を少なくした方がコストは低く、断熱性能を高めることができるのですが、そのかわりに採光や通風の面で難が生まれ、開放感や快適性が失われてしまいます。
省エネ基準を満たすことが必須とはいえ、快適性が損なわれてしまうのは嫌ですよね。また、省エネ基準を満たす設計かどうかは、図面上で計算して導き出されるものですが、施工の段階で設計通りに実現できないということもあり得ます。
高い施工力でプランを実現しそれを維持できてこそ、「省エネ」と「住み心地の良さ」を両立できます。なので、そういったノウハウや実績がある、信頼性の高いハウスメーカーを選ぶ必要があるといえるでしょう。
ZEHに関しては、ZEHビルダー・ZEHプランナー登録制度というものがあります。一般社団法人 環境共創イニシアチブのウェブサイトで、各事業者の目標や実績を確認できますので、ZEHを検討している場合は確認してみましょう。
「理想の住まいに必要なこと」を
見直し、知識を身につける
ZEH仕様・省エネ仕様の住宅を建てる場合、従来の住宅と比較するとどうしても費用は高くなる傾向にあります。そのため、以前よりもさらに、住まいの理想や条件を整理して取捨選択する必要がでてきます。例えば、今後は敷地や建物のサイズダウン、あるいは比較的地価が安い場所での建築などを積極的に検討すべきかもしれません。「予算の範囲内でなるべく職場から近くて広い家」のような漠然とした考えでいると選択肢を狭めてしまい、満足度の高い住宅取得が難しくなるでしょう。
快適=広い、とも限りません。同じ広さの家でも、設計の違いで住み心地は大きく変わります。「子どもは20年くらいで巣立つけれど、本当に4LDKが必要なのか」など、わが家にとって必要なことを考えましょう。ご家族によって快適な住まいの条件はさまざまで、すべての人に当てはまる絶対的な正解はありません。どんな家が良いか条件を整理するには、情報収集に時間をかけ、多くの事例を検討する、複数のハウスメーカーを比較するといった努力が求められます。
魅力的な「ZEH(ゼッチ)」で、
心地よく・エコな暮らしを実現
ここまで住生活ジャーナリスト田中さんのお話を伺ってきましたが、これからの家づくりにはエネルギー消費量を減らすだけでなく、創る、蓄える仕組みを取り入れることが必要なようですね。
- (1)断熱をさらに強化=省エネ
- (2)省エネ機器を導入=省エネ
- (3)太陽光発電を設置=創エネ
ZEHレベルの高断熱仕様で耐久性が高く快適な住まいに
H28年省エネ基準を上回る高断熱仕様を採用。これにより暖冷房費を大幅に削減することが可能に。「外張り断熱通気外壁」は耐久性も高く、住む人にとっても快適です。
省エネ&創エネでエネルギーの自給自足を目指す
省エネと創エネを実現するため、積極的に省エネ機器や太陽光発電を導入。これにより、電力会社から買う電気を減らし、暮らしに必要なエネルギーを自給自足することを目指しています。月々の光熱費の削減が期待できます。
さらに、家じゅうのエネルギー状況を把握し、より快適でエコな暮らしに必要な情報を提案してくれる「Life Assist2」もポイントの一つです。発電や売電、使用電気量などをモニターで確認できるので、家族全員で楽しく省エネに取り組めるほか、災害情報を確認できる、照明やエアコンなどを起床や帰宅に合わせて、スマートフォンから遠隔でコントロールできるなど便利な機能も備わっています。
また、ダイワハウスの「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」は、天井高や大きなサッシによるゆとり、開放感が特徴的ですが、実は省エネ基準もクリアしています。ZEH仕様・省エネ仕様の住宅を検討される場合は、カタログや展示場などで、その魅力を確かめてみると良いでしょう。
まとめ
今回は、「ZEH」についてご紹介しました。住宅に求める条件としては、立地や広さなどを重視する方が多いと思いますが、これからは省エネも非常に重要なポイントとなります。今すぐに家を建てる予定がないという方も、家づくりに関する情報収集をして「未来の当たり前」を検討されることをおすすめします。
Profile
田中 直輝さん
All About「ハウスメーカー」選びガイド。早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てはもちろん、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。