ダイワハウスコンペティション告知ページ
家が笑うと、どんな暮らしが展開し、どんなかたちになるでしょうか。
笑うとひと言でいっても、それは実に多様です。楽しさや嬉しさから声を出して笑うこともあれば、微笑んで親愛の情を示すことや皮肉を込めて笑うこと、緊張から開放された時に笑うこともある。さらには、俳句の春の季語に「山笑う」とあるように、山の草木が一斉に芽吹き動物たちが動き始める、華やかな山の様子を表す言葉でもあります。そして、この感情表現は他者との関わりや、自分の置かれた環境の中で生まれます。自分が笑うだけでなく、誰かを笑わせたいという思いもあるし、共に笑い合う歓びもある。このような感情をもつのは人間しかありません。では、そんな人間特有の感情を家が表現したらどんなものになるか、それが今回のテーマです。
それは、現代の複雑な社会での日々の葛藤や緊張の中で、安らぎや歓びをもたらす家といえるかもしれないし、笑うことの本質であるユーモアを体現する家かもしれません。そして、誰かが笑えばつられて笑うように、家が笑うと、周囲の人びとやそれを取り巻く環境も笑うとも想像できます。しかし、笑うという瞬間を短絡的に設計してしまうと、逆に白けてしまう場合もある。家を設計することは、それを取り囲む状況を丁寧に読み解いてかたちにすることだとすると、ではどうやって家が笑うことを表現できるでしょうか。笑うということの多義的な意味や深さをとらえて、既成概念に囚われない、この先に一歩踏み出せる家を具体的に考えてください。敷地は架空でもリアルでも自由です。戸建て1棟や、戸建ての集合、併用住宅、リノベーションなど、形式やプログラムは問いませんが、ひとつの家として必要な空間を提案してください。想像力を膨らませて、これからの可能性を押し広げる家を考えてください。
座談風景。左から、八田氏、小堀氏、堀部氏、青木氏、平田氏。
建築家 AS
東京藝術大学教授
笑いにはこんなにもいろいろな種類があって多様だということですよね。ニコっと笑うのもあれば、微笑んだり、爆笑したり、ニヒルな笑みなどもありますね。それを職業にして、極めようとしている人も大勢いる。このテーマではまず、いろいろな笑いの中でどんなものがあるのかをよく見回して考えてほしいです。その中で、その笑うことを深く考察して、家というものを重ね合わせてみる。「笑う家」というのは、家が笑っていることにも、そこに住む人が笑えるような家にも、両方の意味に取れますが、どちらかに限定しないで考えてもらいたいと思います。面白い議論が起きる提案を期待しています。
建築家 堀部安嗣建築設計事務所
京都芸術大学大学院教授
俳句の季語の「山笑う」のように、文学的な表現や詩的に表現することもよいですし、笑いの本質であるユーモアや皮肉る提案もあるとよいと思います。その人なりの、笑うとは何かを見せてほしいです。
建築家 平田晃久建築設計事務所
京都大学教授
面白いと感じたから笑う、ということだけではなく、笑いにも多くの種類がありますよね。さらに笑いはひとりではなく、複数の会話の中や、誰かのアクションを見て起こる感情でもある。つまり、ひとりで成立するのはなく、他者との関わりの中で生まれるものです。そして、笑いには哲学や歴史があるように、人間の感情の中で最も深いものではないでしょうか。私たちもこのテーマに応える提案を通して、新たな発見ができる期待があります。多様性があるテーマなので、応募者には固定観念に縛られず、考えてほしいです。
建築家 小堀哲夫建築設計事務所
法政大学教授
私はこの議論を通して、その固定観念に囚われていたと気がついたところです(笑)。笑いには、泣き笑いや怒りの時の笑いまであります。文化や思想が違うことによっても異なることと、誰にでも通じるところがあるので、海外からの応募や西と東でどう提案が変わるのかも楽しみです。また誰しも、自分が笑って得る喜びだけでなく、皆を笑わせたいという欲もあるものです。それは先ほど挙げた「自分と自分も含めた他人」がいることを意識させます。家が笑うということは、中にいる自分も笑いたいし、家の回りの人たちも笑わせたい、というような発想も期待します。
大和ハウス工業 執行役員
僕自身、笑いは生きるためのビタミン剤だと思っているので、私たち関西人としては、うってつけの考えが広がるテーマです(笑)。多様な考えを示してほしいと思います。