ダイワハウスコンペティション告知ページ
あなたにとって帰りたい家とはどのようなものでしょうか。
もしくは、多くの人びとにとって帰りたい家とはどのようなものでしょうか。
これが今回のテーマです。
帰りたい。そう思える家にはさまざまな理由があります。
愛する人が待っている、愛着をもったものがある、自分を取り巻く時間が蓄積された場所である、その家を包む風景に安心する。
本来家とは、信頼する人と共同体で暮らし育む、もしくはひとりで自分を解放して明日の活力を生み出す、幸せの象徴です。
一方で、帰りたい家があるからこそ、人は夢をもって遠くへ行き、冒険や挑戦をすることができるといえます。
なぜなら、帰りたいとは、家に対する希望や憧れ、自らを称賛し肯定することも示すからです。
それは、自分が帰りたい家をつくるという当事者としての視点もあれば、俯瞰的に帰りたい家とはどのようなものか考える視点もあるでしょう。
敷地は架空でもリアルでも自由です。戸建て住宅や集合住宅、併用住宅、リノベーションなど、1棟でも複数単位でも形式やプログラムは問いませんが、ひとつの家として必要な空間を提案してください。
自分の身体感覚を使い、また他者の思いにも寄り添った、この先の種になる提案を期待します。
座談風景。左から、八田氏、小堀氏、堀部氏、青木氏、平田氏。
建築家 AS
これまでこのコンペを通して家に関するさまざまなテーマを考えてきましたが、ここ数年のテーマが抽象的過ぎたのかもしれません。たとえば、第18回で「笑う家」をテーマにした時は、当然楽しい家の提案がたくさん出てくると思ったのですが必ずしもそうではなかった。それは考えるべきことに抽象的な部分が多いと、どうしても自分の頭の中だけで考えてつくってしまい、堀部さんの指摘にあった、こんなところに住みたいとか、こういう家になったらいいという自分の素直な感覚が抜け落ちてしまったからだと思います。アイデアコンペであっても批判や皮肉で終わっているのはもったいないので、そこにそれぞれの個人的な思いを入れてみると前向きな提案になるのかもしれません。
建築家 堀部安嗣建築設計事務所
放送大学教授
私たちはこれまで、応募者が本当にその家を快適だと思っている建築の提案なのかという人の生身の感覚に対する考えを問わずに評価していたところがあるのではないでしょうか。とはいえ、アイデアコンペなので戦略を立てることは重要ですし、提案の斬新さが生身の感覚に繋がる種になることもあると思います。そう考えると、今回は住むということに対しての身体感覚と、若い人ならではの考え方や時代性、そして現在の社会背景が反映しやすいテーマがよいのではないかと思います。
建築家 平田晃久建築設計事務所
京都大学教授
僕としてはこれまで後ろ向きな提案を評価してきたつもりはありません。ただ、今までのテーマの抽象性が深読みに繋がっていたかもしれないので、もっと具体性をもったテーマの方がよいということは確かだと思います。この議論をきっかけに、このコンペが新しい展開にシフトできる可能性を探っていけるとよいですね。
建築家 小堀哲夫建築設計事務所
法政大学教授
他者と異なる発想やハッとする考え方の発掘がアイデアコンペの価値です。だからこれまで選ばれた案は、多数の応募の中でその発想に深い思考があるものでした。一方で、八田さんや堀部さんが指摘されたように、頭の中だけで考えてしまう提案が多い傾向もあり、実際に建築がどう成り立っているかを考えているかは疑問が残りました。堀部さんから生身の感覚を重要にするテーマをという言葉がありましたが、時間の流れも身体的な感覚に通じるところがあります。前回の「20年後へ」は時間をテーマに投げかけましたが、それをもう少し深掘りしてみるのはどうでしょうか。
大和ハウス工業 執行役員
ダイワハウスコンペティションは今回で第20回を迎えます。大和ハウス工業としてもこのコンペについて、さらにこの先を見据えた取り組みとして続けていきたいと思っています。前回は「20年後へ」というテーマでさまざまな提案をいただき大変刺激を受けましたが、こちらの想定とは異なり、未来に対してシニカルな提案が多く見受けられました。今回は建築をつくることに対して前向きな提案が増えるテーマとしたいと思います。