長寿社会となり、介護は避けては通れない課題である。このような状況下、夜の介護環境で最も重要なアイテムの1つが照明であると考えている。しかし、手すりやバリアフリーといった住宅改修に比べ、介護に果たす照明の重要さを理解している方は、とても少ないのが現状である。
橋田氏は、1992年に照明塾を立ち上げ、現在は手作り照明教室を運営している。2005年からは、心のケアが必要な医療や介護の現場にあかりを届ける「あかりバンク」を立ち上げ、2012年には大阪のこどもホスピスに100点以上の照明を、2021年には横浜こどもホスピスに「あかりのおうち」を寄付した。その他、活動をまとめた書籍「あかりの学校」の発刊、重度心身障がい者の病院であかり展等も行ってきた。
これまでの活動でわかったことは、介護が必要な状態になった人にとっては、天井の照明(直接照明)は眩しく、睡眠や体内時計にも大きな影響を与えているということである。ところが介護する側の人にとって、その影響の大きさはほとんど認識されていない。私たちが行ったあかりのリノベーション例を紹介すると、医療的ケアが必要なこどものいる住宅のケースで、間接照明とあかりの組み合わせにより、直接照明と比して影ができにくく介護がしやすい、こどもの顔色がよくわかり体調管理がしやすい、まぶしくないのでこどもが落ちつく等の効果がみられている。更には、子どもと同じ部屋で過ごしている家族もくつろぐことができたという。
この照明手法は介護のための照明ということを考えたものだが、実は日常的に暮らしの質を高めるということにもつながる。また、災害発生時においては、あかりは命を守り、避難所では不安を和らげ、仮設住宅(応急住宅)では、孤独を和らげ、そして、復興時には、賑わいをつくることもできる。これは、あかり作りがまちづくりにも活かせる可能性を秘めているということでもある。
世の中にこの活動を根付かせるためには、ビジネス化することが大事であると考えており、今回の研究会をつうじて共創ができればと考えている。