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第1回 生物多様性の価値共創研究会セミナー

開催日 2022/03/16 14:00〜17:00
開催場所 奈良県奈良市西九条町4丁目1番1号みらい価値共創センター

第1回 生物多様性の価値共創研究会セミナー

イベント・キャンペーン情報





  COP26において「自然」が中心的話題の一つとなったように、世界の潮流では、気候変動と生物多様性は一体として地球の危機と捉えられています。この動きは金融界にも及び、企業も生物多様性に関して、社会貢献やCSRのみならず、ビジネスの機会やリスクヘッジとして取組む必要性が高まってきました。
 
そこで、2020年9月に欧米を中心とする大手金融機関が設立した「Finance for Biodiversity ledge」(生物多様性のためのファイナンス協定)に日本から唯一の参加企業である、りそなアセットマネジメント株式会社執行役員の松原稔氏より、生物多様性とビジネスの関係性、また金融はどのような枠組みを作り、企業と対話・評価しようとするのか、先行するヨーロッパの事情も踏まえ、分かりやすく解説いただきました。加えて、希望者のみオンライン交流会を実施いたしました。 


1.講演「生物多様性と金融について〜これからの生物多様性のビジネスのありかた〜」
りそなアセットマネジメント株式会社 執行役員 責任投資部長 松原 稔 氏
 金融機関で投資に関わる松原氏から、生物多様性と金融の枠組みについて解説をいただいた。
 投資家が企業を見る際には、その企業の持続可能性や社会・環境の変化にどう向き合おうとしているかといったところが意識される。特に最近は気候変動など社会の課題にどう対応しているか、というところがチェックされている。
 これまで、企業がステークホルダーに対してどう調整するかという時には法規制が有効に機能していた(ハードロー)。しかし今後は規範やコード(ソフトロー)が重要になってくる。それらの形成が世界的になされている枠組みになっている中、世界の企業はこれに向けて動き出しており、サプライチェーンの中に入っている以上は、日本の企業も逃れることはできない。特にソフトローは予見されるものとされないものがあり、コンセンサスが非常に大事になっているが、それを理解していく過程は非常に曖昧である。策定・伝播・受容・制定というプロセスを経てコンセンサスになる。例えば気候変動で言えば、策定にパリ協定、伝播がTCFD、受容がネットゼロ(脱炭素社会)という政府が示している枠組みだとすれば、こういったプロセスを経ながらソフトローが定着していくのである。企業としてはアンテナを高くしてコンセンサスがどこまで進んでいるかを確認していく必要もある。
 このような中で、生物多様性に関する動きはまさに変化が起ころうとしているところ。COP15ではコンセンサスが形成され、TNFDという自然資本版の情報開示指令のベータ版もでき、企業がボランティアで取り組むところからビジネスで関わっていく必然性が高まってきている。こうした動きを把握していくことが大事である。

 ところで、企業はなぜSDGsに取り組まなければならないのか。これからの15年、地球が直面する課題はさらに深刻化する。人口が増える中、人々は豊かさを求めるので経済は大きくなるはずであるが、限られた資源の中でビジネスとして関わっていくのは難しい。紛争などにより、地域分断型のビジネス社会が到来しようとしている。供給に対する問題もクローズアップされ、どう持続継続的な社会にしていくのかということが、喫緊の課題になっている。そんな資源制約化の経済活動が企業ビジネスにおいて強く要請される。サステナビリティがソフトローを形成されつつあり、更には企業の責任範囲が高まり、企業の持つパワーは格段に高まってきている。
 ソフトローのキーワードは「wish」・「want」であり、かつ企業が常にお客様や社会に価値を提供し続ける義務がある。そのようなことも長期だけでなく短期的な課題になってきており、重要なテーマになっている。
 社会から企業に対しての視線がこのように注がれる中、りそなアセットマネジメントでは、将来世代に対しても豊かさ・幸せを提供することをパーパスに掲げている。具体的には、インクルーシブルな社会経済、サステナブルな環境、企業文化を評価しうる資本市場の発展の3点である。中でも、サステナブルな環境の中に「生物多様性と森林保全」を具体的なテーマとして挙げ、取組を推進している。
 取組の優先順位として、企業の皆様の長期的な発展、社会にとっての重要性があるが、生物多様性はどちらにとっても重要である。時間軸も含めて分析すると、現状は社会構造が分断された「地域分断モデル」となっている。地域分断モデルでは、サプライチェーンが分断されるので、資源を確保するために土地開発や森林伐採が進行する。そのため多様性が減少、単一化による感染症のリスク拡大、食料需要も厳しくなってくるような深刻な問題となってしまう。こうした問題に企業がどうリスクマネジメントしていけばよいのか。

 その中で、生物多様性をどう守るかという観点では、ビジネスと生物多様性のギャップは埋まらないように感じている。それらをどう結びつけるかという触媒的な役割を果たしていく上で、ソフトコモディティという枠組みを与えて、そこからアプローチをしていく方法で企業と対話している。世界でも生物多様性の面で危機意識を持っているソフトコモディティは、パーム油・大豆・畜牛・天然ゴム・木材の5点であり、それらからアプローチして、企業の活動取組みと生物多様性の取組みにビジネスからアプローチしている。生物多様性とビジネスにどんな関係があるかと言えば、「受粉媒介者と食の持続性」「微生物と医薬」「森林破壊と新たな伝染病の流行」「森林破壊と調整サービス(水資源等)の変化」の4点である。
 代表的なソフトコモディティにかかるエンゲージメントとしてパーム油の調達がある。調達の際のリスクマネジメントの重要性をお伝えし、投資家からサポートしているもの。そうした枠組みから、サステナブルな調達のプラットフォームに多くの企業が参加するなど、日本にできることはたくさんある。それを有機的につなげていく上で、今日のような研究会は有効だ。
 ビジネスと生物多様性という枠組みを、どのようにみえる化・価値化するかという問題もある。生物多様性を保全することが結果として企業のビジネスにとって何のメリットがあるのか。どんなアウトプットが得られていて、どこにどんなポジティブのインパクトが与えられたか。

 社会課題解決に向けた取組の意義として、様々な解決すべき課題があり、あるべき未来とあってはならない未来のギャップ。様々な課題がある。活動一つは小さくとも、お互いを手繰り寄せていく、金融はそれをサポートしていきたい。



2.質疑応答・ディスカッション
 元に戻すという力を持っている生態系は非常に重要である。その効能を使って実現していくのは生物多様性を気づく重要なきっかけとなる。生態系は複雑であり、その枠組みを技術開発の中で金融が支援するというのは、長期的には重要なことになる。投資が技術開発のどこのタイミングでなされるかといえば、エンジェル投資家やプライベートエクィティがいて、長期投資家も入ってくる。そんな枠組みが金融にもあり、発展段階ごとの金融の役割がある。
 気候変動については多くの投資家がネットワークを作って活動しているが、生物多様性について同じような動きが増えてきている。TNFDという、自然資本がビジネスにおいてどの程度影響を与えているかを財務的な視点から開示すべきという枠組みが作られようとしている。日本が国際的なルール形成の中で果たす役割はある。金融としては、多くの企業との対話を通じて、新たな道筋を探っていきたい。


◆◆◆主催者としての所感◆◆◆
 生物多様性と、金融・ビジネスという一見つながりにくい世界の関連性を、解説していただきました。近年は企業に求められる社会的な責任は拡大しており、厳然たるルールだけではなく人々が求めるものにも応じていかなくてはなりません。その一つとして、生物多様性の維持に貢献することが求められています。
 更に、生物多様性とビジネスの関連をどう見える化していくかというのも大きなテーマとなっているようです。今後ますます国際的にも生物多様性への関心が高まっていくと考えられる中、日本企業がどのように取り組んでいくか、可視化しながらの貢献が必要になってきます。



◆◆◆講師の紹介◆◆◆
 りそなアセットマネジメント株式会社
 執行役員 責任投資部長 松原 稔 氏

  https://www.resona-am.co.jp/


◆◆◆プロデューサーの紹介◆◆◆
 株式会社新産業文化創出研究所
 代表取締役 廣常 啓一 氏

  https://icic.jp


 

 

お問合わせ先

担当 本社 人財・組織開発部みらい価値共創センター
住所 奈良県奈良市西九条町4丁目1番1号
FAX 06-6342-1399

0742-93-8062

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