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コラム No.137

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東京都が太陽光パネルの設置義務化へ

公開日:2022/10/31

東京都はこのほど、新築住宅を供給している大手住宅メーカーなどに対する太陽光発電設置の義務化についての基本方針を策定しました。
2025年4月からの施行を目指しており、わが国最大の都市がCO2排出量削減に向けて大きく動き出しました。

背景にある「2030年カーボンハーフ」とは?

国は2020年、地球温暖化の世界的な達成目標で2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を掲げました。これに対して東京都はカーボンニュートラルに貢献するための独自策として2019年に「ゼロエミッション東京戦略」を策定しました。エミッションとは熱や排気ガスなどを放出するという意味です。この戦略の中で、2030年までに温室効果ガスを50%削減させる「カーボンハーフ」を表明。
2050年に排出量ゼロを達成するためには、最初の10年間で目標の半分をクリアする必要があると判断しました。国も2030年までに新築戸建の6割で太陽光発電装置が導入されることなどの政策目標を掲げてはいますが、東京都は先行して具体的な達成目標を設定したことになります。
首都東京はわが国人口の約1割が生活する、エネルギーの一大消費地。その中で都内CO2排出量の7割は建物のエネルギー使用に起因しているといわれています。東京都が2022年9月に発表したところによると、都内におけるエネルギー消費量の約3割を家庭部門が占めていることから、家庭におけるCO2削減の取り組みは地球温暖化対策には必要不可欠で、とりわけ住宅の中でも熱の出入りが多い窓やドアの断熱改修は住宅省エネ化の推進で重要といわれています。
もちろんCO2排出量の構成比では経済活動における業務部門や運輸部門などが多いですが、近年は企業の環境保護意識の高まりなどを受けて産業界のエネルギー消費は年々減少しています。一方で家庭部門は増加傾向にあることから、都では省エネ推進対策として断熱性能が高く省エネ家電などを取り入れた「東京ゼロエミ住宅」を支援し、補助金制度などを設けてきました。

図1:都内CO2排出量の部門別構成比

出典:「東京都「カーボンハーフ実現に向けた条例制度改正の基本方針」(2022年9月9日)

断熱・省エネから太陽光発電へ

都は断熱改修や省エネ家電などによるCO2削減に加えて、大都市の特色に着目しました。それが「屋根」です。東京には1000万人を超える人が暮らしており、国内最大の約720万世帯数を誇ります(2020年国勢調査)。ということは、それだけ住居用の建物が多く屋根が多いことになります。ただ人口密集地である東京では敷地が狭くて屋根が小さかったり、日当たりが十分ではない地域が少なくありません。そこで都は「東京ソーラー屋根台帳」(ポテンシャルマップ)を作成して太陽光発電パネルの設置に適した建物及び地域かどうかを判断し、設置した場合の発電量などの情報を提供するようにしました。

大手住宅メーカー対象 初期費用ゼロも

東京都の試算によると、都内では年間4.6万棟※1の新築住宅が着工され2030年までに約40万棟、2050年までに約130万棟が新築されると見ています※2。既存住宅の現ストックは約200万棟あり※3、2050年には約70万棟が残りますが、これらはリフォーム時に省エネなどの改修を促進していく計画。年間4.6万棟といわれる新築住宅の98%は中小規模の建物であることから、東京都は太陽光発電装置の義務化などにより再生エネルギーの利用を促進し、首都の責務としてCO2削減を加速させたい意向です。

  • ※1 過去10年間の平均着工棟数を基に算出(東京都「カーボンハーフ実現に向けた条例制度改正の基本方針」より)
  • ※2 編注:東京都の資料に明記はありませんが、「戸建て住宅」の数値と思われます。
  • ※3 編注:「カーボンハーフ実現に向けた条例制度改正の基本方針」に基づいています。

図2:都内住宅の状況(2050年に向けた推移)

出典:東京都「カーボンハーフ実現に向けた条例制度改正の基本方針」(2022年9月9日)

太陽光発電設置の義務化は、都内で年間の供給延床面積合計が2万m2以上の住宅供給業者を対象に、一定の新築住宅への断熱・省エネ性能、再エネ設置の義務付けを実施・誘導する制度です。具体的には国の住宅トップランナー制度を基準に大手住宅メーカー約50社が対象となると見られています。東京都は戸建やマンションなど新築住宅を多く手掛けている大手の業者が率先して省エネ・再エネの物件を供給することにより、太陽光パネルの設置が新築物件のデファクトスタンダード(業界標準)となることを目指しているのではないでしょうか。

太陽光パネルの設置義務化は住宅供給者を対象にしていますが、設置費用は住宅販売価格に反映されるので、住宅購入者の負担であることに変わりはありません。標準的な戸建住宅に4キロワットの装置を設置する場合の費用は90万円あまりといわれていますが、売電や補助金活用などにより約10年で回収できるとの指摘もあります。また設置する屋根を電力販売事業者に提供して無償で太陽光パネルを設置すれば、初期費用がかからずに設置できる方法があります。発電された電気は居住者に販売され、使いきれない分を事業者が取得する仕組みです。類似する方法としてはこのほかにリース、有料で屋根を貸す「屋根借り」などもあります。

太陽光発電装置の設置義務化はニューヨーク市で2019年に開始、ドイツベルリン市で2023年1月から始まる予定で、国内では京都市が2022年に延床面積m2の新築・増築時に設置を義務化するなど国内外で拡大しており、東京都の取り組みが注目されます。

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