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コラム No.138

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空き家対策が加速 国交省で小委員会設置

公開日:2022/11/30

空き家対策が本格化してきました。国土交通省は2022年10月20日、社会資本整備審議会住宅宅地分科会の下に「空き家対策小委員会」を設置、今後少子高齢化が進み増加が予想される空き家に対する政策の方向性を議論し、発生抑制と利活用について2023年1月頃までに報告書を取りまとめる意向です。

2030年までに利活用と除却で70万戸減らす計画

国の推計によると、わが国の人口は2008年頃に1億2808万人とピークに達して以降減少しており、世帯数も2023年以降は減る見込みです。一方、住宅ストック数は2018年時点で約6240万戸。総世帯数(約5400万戸)より多く、数字の上からは住宅供給は充足している状況です。

しかし総務省の住宅・土地統計調査によれば、空き家総数はこの20年で約1.5倍(576万戸→849万戸)に増加。別荘など一時的な居住用(二次的住宅)や賃貸・売却のための空き家住居を除いた、実質的な空き家ともいえる「その他空き家」(長期の不在や取り壊し予定などの住居)は349万戸。この20年で約2倍に増加しています。2018年の空き家率の全国平均は5.6%で、10%を超えているのは高知県(12.7%)、鹿児島県(11.9%)、和歌山県(11.2%)、島根県(10.5%)、徳島県(10.3%)、愛媛県(10.2%)の6県。四国は4県中3県と空き家率が高い地区であることを示しています。

図1:空き家の現状と今後の方向性

出典:国土交通省住宅局「空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」(2022年10月)をもとに作成
注:数値は2018年時点

このまま推移していくと、空き家の総数は2025年に420万戸、2030年には470万戸に増えると国は推計しています。2021年3月に閣議決定された新たな住生活基本計画(2021年度~2030年度)ではこれを簡単な手入れ後の利活用で50万戸、管理が行き届いていない空き家の除却(解体・撤去)で20万戸を減らし、住生活基本計画の成果目標年となる2030年までに400万戸に抑えることを目指しています。

古民家やランドバンク、二地域常住などの利活用でも追い付かず?

今回設置された空き家対策小委員会での主な検討事項は、次の4項目です。

  • (1)空き家の発生抑制や利活用を積極的に進めるための方策
  • (2)空き家の適切な管理を促す方策
  • (3)利活用が困難な空き家の除却を促す方策
  • (4)空き家の所有者などに対する市町村や民間からの関与や支援のあり方

空き家を抑制・減少させる政策はこれまでも実施されています。2011年の東日本大震災で生じた所有者不明問題などを契機に空き家法が制定され、さらに2015年に空き家特別措置法が施行。倒壊のリスクや不衛生な状態の「特定空家」に対して修繕や解体、立木などの伐採を命じる強制措置を盛り込んだ空き家対策が本格スタートしました。2019年には耐震基準に適合した改築、または解体後に更地にして売却しやすくした場合は譲渡所得の3000万円特別控除する税制改正も実施されました。

特定空家に指定された物件は居住環境改善のため各地の自治体が補助金を出して解体・撤去したり、地域活性化のために「古民家」として改修を施して地域交流に活用されてきました。空き地や空き家の管理・流通・再生にあたる組織で民間の中古住宅供給支援機関である「ランドバンク」(空き家バンク)が登場し、空き家再生に繋げています。また、都心部と地方でそれぞれ暮らす「二地域居住など」も近年注目されています。しかし少子高齢化が今後本格化していく中では、空き家の増加を十分に抑制することはこうした活動だけでは厳しいと国は判断し、対策強化のため小委員会設置に動きました。

空き家法適用の流れは、助言・指導を受けたのち、その勧告に従わなければ固定資産税の住宅用地特例を除外し、それでも従わなければ50万円以下の罰金。さらに所有者不明の場合は自治体が解体・撤去し、その費用を徴求する代執行と続きます。しかし助言・指導はできても、代執行という強硬手段に至るまでには相当の時間と人手やコストの問題などが生じ、必ずしも抑制効果は上がっていないようです。

図2:特定空家に対する措置状況

出典:空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について(2022年3月31日時点国土交通省・総務省調査)

ポイントは政策の実効性を高めることにある

空き家対策では「除却」と「利活用」が2つの柱になります。これまで空き家発生防止のために住居を相続すれば税制上の恩典を与える一方、管理不全で特定空家になれば恩典をなくしてきました。除却(解体・撤去)には絶えず所有者不明問題が横たわり、時間がかかります。また利活用では1軒2軒程度の狭い敷地が更地になったとしても再開発に利用できるものではなく、古民家として再生するか状態が良ければ改修改築して中古住宅の流通市場に乗せる道がありますが、新築住居を好む日本人の特性があるため市場育成に難点があるといわれてきました。

ポイントは実効性を高めることにあります。これまで実施してきた空き家対策は適切・妥当なものであり、その方向性は小委員会の議論を経ても大きく変わるものではないと思われます。管理不行き届き家屋はひと目でわかります。しかし全国の自治体が置かれた財政状況では予算とマンパワーが不足しています。国は自治体が家屋調査とそれに続く対策を機動的に実施できる予算措置を講じることが重要になるのではないでしょうか。

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