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コラム No.167

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「2025年版土地白書」が公表。東京都心5区のオフィスが好調、物流施設は一段落も、不動産業向け貸出残高は過去最高

公開日:2025/06/30

2025(令和7)年版の土地白書がこのほど、公開されました。それによると、2024年の売買による土地取引件数は、全国規模で前年の129万件から3万件増え132万件。企業による2025年の土地投資額(計画値)は、日本銀行「全国企業短期経済観測調査」によれば、全産業で3兆7758億円(前年度比20.3%減)と減少傾向にあります。
2024年の土地取引件数は、法務省の「登記統計月報」による所有権の移転登記件数に拠っています。土地取引引件数(全国)は1997年をピークに下がり始め、2012年に底を打ったのを境に持ち直しています。地区別では東京圏(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県)が30万件台で推移し、大阪圏(大阪府・京都府・兵庫県)は10万件台、名古屋圏(愛知県・三重県)で10万件以下に留まっています。

「事後届出件数」の推移

事後届出件数および面積の推移をみると、2024年の土地取引面積は10年ぶりに5万haを超え(51,821)ましたが、土地取引件数は18,693件で前年よりも減少しています。
事後届出とは、土地売買取引の成立後にその内容を都道府県知事などに届け出るもので、国土利用計画法により定められています。土地取引が活発になれば届出件数は増加し、不動産市場が低迷すれば届出件数は減少します。

図1:事後届出の件数及び面積の推移

出典:国土交通省「2025年版土地白書」

「DI」はマイナスだが、今後は持ち直す?

企業の土地取引に対するマインド(景況感)は、どうなっているでしょうか。公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会不動産総合研究所の「不動産市況DI調査」によると、2025年1月時点で関東が-12.7ポイント、近畿が-13.6ポイント、そして全国で-14.2ポイントとなっています。DI(Diffusion Index:ディフュ-ジョン・インデックス)は、「良い」と答えた割合から「悪い」と答えた割合を引いた数値。「良い」が多ければプラス、逆の場合がマイナスと示されます。3カ月後のDIは関東が-9.2ポイント、近畿が-10.0ポイント、そして全国で-9.5ポイント。マイナスポイントが減っており、今後は景気が持ち直すとの希望的な観測が出ています。

都心5区のオフィスビル平均募集賃料は2024年に上昇

法人における土地利用の現状を見ていきます。東京都心の5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)では、コロナ禍の2020年初頭からオフィスビルの空室率が上昇しました。2021年7~9月期以降の空室率はほぼ横ばいとなっていましたが、2023年10~12月期以降下降線を辿っており、2024年10~12月期は4.2%となっています。オフィスビルの平均募集賃料は、2020年7~9月をピークに下落が続いていましたが、空室率と反比例するように、2024年に入り上昇しています。

図2:オフィスビル賃料及び空室率の推移(東京都心5区)

出典:国土交通省「2025年版土地白書」

1棟あたり床面積、「宿泊施設」「工場」は拡大傾向も「倉庫」は縮小

2024年の店舗着工面積は前年比6.4%減の約3,669千m2、一棟当たりの床面積は727m2で、前年比1.5%減。宿泊業用建築着工面積は前年比94.4%増の約1,755千m2、一棟当たりの床面積は620m2で、前年比52.7%増。訪日客の増加などでホテル・旅館の建築ラッシュが続いていることが背景にあると思われます。工場建設も堅調に推移しています。2023年までの統計ですが、2023年における工場立地件数は前年比13.3%減ですが、立地面積は15,440千m2(前年比20.6%増)。大規模工場の建設が立地面積の増加に繋がったと思われます。

一方、物流関係では「倉庫」が2024年の倉庫着工面積は、前年比22.8%減の約9,635千m2、一棟当たりの床面積は752m2で、前年比25.5%減となっています。倉庫は2010年に床面積、一棟当たり床面積ともに底を打ち、以降今日まで右肩上がりで推移してきました。2022年にピークを迎えたあとは下がり始めています。とはいえ、Eコマースを中心に物流ニーズは旺盛で、今後、広がっていくと予測される「物流2024問題」による働き方改革や物流業務の改革などによる影響がどのような需給バランスとなっていくのか、注目を集めています。

図3:倉庫着工面積の推移

出典:国土交通省「2025年版土地白書」

不動産証券化は、不動産投資信託(リート)、不動産特定共同事業、特定目的会社(TMK)、匿名組合方式―などのスキームがあります。国土交通省では2030年頃までにリートなどの資産総額を約40兆円にするという目標を設定していますが、2024年3月末時点の資産総額は取得価額ベースで約31兆円となっており、順調に増加しています。主な用途の資産取得額割合は、事務所が27.3%、倉庫20.7%、住宅は20.6%、商業施設は6.8%、ホテル・旅館は10.6%、ヘルスケア施設が2.1%となっています。

図4:リート等の用途別資産取得額の割合

出典:国土交通省「不動産証券化実態調査」

また、銀行等による不動産業向け新規貸出は、日本銀行「貸出先別貸出金」によれば、2024(令和6)年は前年から増加し15兆5519億円となっており、不動産業向け貸出残高は、引き続き増加傾向が顕著で、2024(令和6)年は過去最高の106兆7485億円となっています。

図5:不動産業向け新規貸出の推移

出典:国土交通省「2025年版土地白書」

企業による2025年の土地投資額(計画値)は減少傾向にあるものの、不動産業向け貸出残高は過去最高となっているなど、不動産市場への期待はまだまだ大きいようです。

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