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コラム No.29-2

CREコラム

不動産証券化のトレンドを追う第2回 本格化するか インフラファンド

公開日:2017/02/10

POINT!

  • ・インフラファンドは、景気変動の影響を受けにくい投資ファンド
  • ・現在のインフラファンドの投資対象はメガソーラーが中心
  • ・国や自治体の財源不足を補うために、民間資金の導入が進む

景気の影響を受けにくく安定した利回りが期待できる、と注目を浴びているのがインフラファンド。東京証券取引所が専用の市場を作り、2016年6月には太陽光発電関連の銘柄が初めて上場しました。

景気に左右されにくく安定した利回り

インフラファンドは、鉄道、空港、港湾などの交通・物流施設や、発電所などのエネルギー関連施設といった社会基盤(インフラ)の建設や運営に投資する金融商品です。2015年4月に東京証券取引所が専用の市場「東証インフラファンド市場」を創設、昨年6月には太陽光発電関連のインフラファンドが初めて上場し、12月には第2号が公開されるなど、インフラファンドの上場が相次ぎました。

インフラファンドは賃料収入を配当にあてるリート(REIT=不動産投資信託)と似ており、公共施設の使用料や売電といった収益を分配して投資家に還元します。インフラ自体が景気に左右されにくい性質のため、長期的に安定したリターン(配当)が期待できる点が特徴です。またインフラ設備の利用料金体系はインフレを反映したものになっていることが多いので、景気変動の影響を受けにくい投資ファンドともいわれています。

整備の立ち遅れと財政事業の悪化が背景に

インフラファンドは近年、世界各国で増加しています。というのも、多くの新興国が経済成長を遂げているにもかかわらず、国の財源不足によってインフラ整備が進んでいないからです。また先進国でも財政事情の悪化による支出難を補うため、新たなインフラ設備の建設や既存の公共事業の運営に民間の資金やノウハウを導入するPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)手法が増えています。

環境保護の世界的な高まりも、インフラファンドのニーズを生んでいます。クリーンエネルギーといわれる太陽光や風力などの発電所設備は、国や自治体だけで賄えないほど巨額の資金を必要とします。一方で、地方経済は衰退し、荒廃した土地がなんの手当てもされずに残っています。自然を利用したニューエネルギーの創造と、土地の有効利用及び自治体の増収対策が合致して日本の各地で太陽光発電施設などの建設が進んでいます。

PFIは、身近なところでは公立図書館の運営が挙げられます。全国各地の図書館で、大手の書店やCDレンタル業者に運営を委託しているところが増えています。さらに言えば、中国が提唱し2015年に発足したアジアインフラ投資銀行は、公共設備需要の高まりを象徴するものですし、アジア地域で中国と激しく争っている日本の新幹線も高速鉄道という社会基盤設備。インフラ整備が巨大産業化しているとの見方もできるでしょう。

巨大プロジェクトだけにファンドの見極めが大切

インフラファンドは、社会基盤となる設備を新しく建設するので、事業規模は巨大で施設が完成するまでには相当長期の期間を要します。1棟のテナントビルを運営し賃料を管理する不動産投資信託型のファンドと比べると、ケタ違いのビッグプロジェクトとなるのが一般的です。従って、ファンドの仕組みがどのようになっているのかをしっかり把握する必要があります。インフラファンドは、ファンドを組成する投資法人が子会社を使って自ら建設や運営に関わるなど、事業に直接参画していることが一般的です。上場ファンドは開示基準に沿って情報開示されていますが、非上場のインフラファンドは、情報が必ずしも十分ではありません。予想配当利回りだけに目を奪われてしまうことのないよう、ファンドの見極めをしっかりするよう気をつけたいものです。

経済インフラと社会インフラ

インフラ設備は、大きく分けて2種類あります。経済活動に利用される経済インフラは、鉄道や空港、港湾などの「運輸」、放送施設や通信衛星、通信基地などの「通信」、太陽光発電や風力発電、ガスのパイプライン、水道などの「エネルギー」に分けられます。
それに対して社会インフラは学校や病院、刑務所などです。
現在、インフラファンドの投資対象はメガソーラーが中心になっています。国内の上場インフラファンドは2つともメガソーラー案件であり、資源エネルギー庁の調査(2014年1月現在)によれば、国内にある10万MW以上の大規模太陽光発電所は稼働中が15カ所、計画・建設中が53カ所となっています。 インフラファンドが日本国内で上場されたのには理由がありました。それは税制優遇措置が取られたからです。再生エネルギー施設は非課税対象でしたが、資金の5割以上を再生エネルギー施設に投資する場合の非課税期間が10年に限定されていました。このため、上場後には課税扱いになり、収益が悪化した場合は、売り物である長期的な安定配当を投資家に提供しづらくなるからでした。この弊害を除くため2016年度の税制改正で非課税期間を20年に拡大しました。その結果、上場申請する会社が現れたのです。

インフラファンドの将来性は?

インフラファンドの市場が拡大するためには、当然ながら、さまざまな分野でインフラ整備が活発になり、民間資金の導入が進むことが求められます。わが国では鉄道や電力、ガスなどは民間企業の力で整備が進んできましたが、その他の公共施設の整備は民間への開放が進んできませんでした。近年では、前述したように国や自治体の財源不足を補う観点から、民間資金の導入が進みつつあります。インフラファンドもこうした流れに乗れば、市場が賑わいをみせることでしょう。

全国各地にできた地方空港の中には、安定的な運営に至っていないところも少なくありません。民間の資金とアイデアを活用して再生する余地があります。空港施設の運営権は今、本格稼働の動きを見せています。新関西国際空港が2015年11月、関西国際空港と大阪国際空港(伊丹空港)の施設運営権をオリックスとフランスの空港運営会社に売却、同社は2016年4月から44年間の運営事業権を獲得しました。仙台空港も2015年12月から30年間の運営権を民間に売却。高松空港、福岡空港も運営権を売却する予定です。
インフラ事業の民間活力導入(運営権売却)で広範な資金の調達が求められていけば、年金基金など、魅力ある投資先を求めている機関投資家の注目を集めることにつながります。そうすれば、インフラファンドの市場性は有望なものになるのではないでしょうか。

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