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コラム No.49

トレンド

不動産投資市場でも注目されるESG投資

公開日:2018/03/31

ESG投資とは

ESG投資とは、企業の長期的な成長に必要な3つの観点、つまり環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している企業を重視して行う投資のことです。短期的な投資や運用では、日々の相場動向や企業の財務情報などが重要な変動要因となりますが、長期的な投資先を選ぶ場合は、10年、20年先を見据えた戦略なども考慮する必要があります。
ESG投資は、財務数字に表れない「企業の見えない価値」を測るための評価指標として注目されるようになったのです。
ESGのスコアが高い企業は、魅力ある企業として投資家から投資先として選ばれやすく、ESGへの配慮が十分でない企業は、長期的に成功できないと投資家にみなされ、資金調達が厳しくなり、経営に影響が出る可能性があります。

責任投資原則(PRI)の世界的潮流

ESGという言葉が広まったのは、2006年に当時の国連事務総長だったアナン氏が、ESG投資のガイドラインである「責任投資原則」(PRI:Principlefor Responsible Investment)を提唱したことがきっかけです。投資原則は、以下の6つです。

  1. 1. 私たちは投資分析と意思決定プロセスにESGの課題を組み込みます
  2. 2. 私たちは活動的な株式所有者となり、株式の所有方針と所有習慣にESG問題を組み入れます
  3. 3. 私たちは、投資対象に対してESG問題について適切な開示を求めます
  4. 4. 私たちは、資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかけを行います
  5. 5. 私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために、協働します
  6. 6. 私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します

原則に賛同する世界中の年金基金や運用機関などに署名を求めたことがPRIの特徴です。国土交通省の資料によれば、署名機関数は年々伸びて、2017年10月現在1,832機関に達しており、「責任投資原則」は世界的潮流になりつつあります。

■PRI署名機関数・合計資産残高(2016年4月時点)

※1ドル=100円と換算

国土交通省資料より

国別のPRI署名機関数は、米国(17%)、イギリス(15%)、フランス(10%)の順に多くなっています。日本では、「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」が2015年9月に署名にしたほか、58機関が署名していますが、世界的にみればまだ少ないといえるでしょう。(2017年10月現在)

責任不動産投資(RPI)

UNEPFI※1(国連環境計画金融イニシアティブ)不動産ワーキンググループは、PRI(責任投資原則)を不動産投資に適用する考え方として、「責任不動産投資(RPI)」を推進し、投資家に、ESG項目を投資決定プロセスにおいて考慮するように求めています。UNEP-FIによる「責任不動産投資の手引き集その4」で、共同議長であるアンドリュー・サイマン氏とローワン・グリフィン氏は、次のようにコメントしています。

※1…環境および持続可能性に配慮した金融機関の事業のあり方を追求、普及促進することを目的とした、世界各地の金融機関のパートナーシップ

「不動産投資家は不動産の取得、管理、売却の意思決定に際してサステナビリティを考慮に入れることで、将来収益に関するリスクを最小化すべきである。不動産マーケットでサステナビリティが重視されることで、投資家は様々な利益を得る可能性がある。環境・社会・倫理基準が求める課題に対処することのできない不動産所有者は、自らの資産を毀損することになるかもしれない」

世界で200を超える金融機関が加盟しているUNEP-FIが推進する不動産市場において環境を重視する傾向は、世界的潮流であり、日本国内でも今後ますます進展していくと思われます。

日本国内のESG不動産投資の基盤整備

国土交通省は、国内外からの投資を喚起して活性化したいと考え、土地・不動産分野の市場成長に向けた取組を促進しています。
そこで、ESG投資原則が世界的潮流となりつつある中で、日本でもESG投資原則を取り入れ、不動産の環境負荷の低減だけではなく、働く人の健康性、快適性に配慮した不動産ストックの普及を進めています。
国土交通省は、ESG投資の普及促進に向けた勉強会、認証基準ワーキングチームを発足し、不動産の健康性、快適性の「見える化」のための認証制度のあり方や、不動産の鑑定評価に反映する方法を検討しました。これによりESGに配慮した不動産に対する国内外からの投資への喚起、そして不動産供給の促進への期待が高まっています。

働く人の健康性・快適性に関するオフィスビルの認証制度

この制度は、新築・既存のオフィスビル(自社ビル、賃貸ビル)を対象に、基本性能、運営管理、プログラムの3分類によって、「健康性・快適性」「利便性」「安全性」に関する内容を評価します。認証の有効期間は、3~5年です。

国土交通省「健康性、快適性等に優れた不動産に係る認証制度のあり方について中間とりまとめを行いました!」参考資料より

ESGに配慮した不動産が、投資市場において優位性が認められたり、オフィスビルの建築にはESGへ配慮することが当たり前の時代がくることも十分に考えられます。不動産の環境性能や、働く人の健康や働きやすさへの配慮を積極的に進めれば、賃料を高く設定したり、キャップレートに良い影響を及ぼし、より質の高い不動産ストックの形成が促進されていくでしょう。

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