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コラム No.74

CREコラム・トレンド

国土交通省も不動産投資におけるESGやSDGsへの取り組みを推進

公開日:2019/3/29

国土交通省は2019年2月、「ESG不動産投資のあり方検討会」の初会合を開きました。近年、財務情報だけに頼らない投資判断が機関投資家の間で広がっており、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する傾向が強まっています。

時代の要請としてのESG

ESGとは、Environment(環境)、Society(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を取ったもので、企業や機関投資家が「より良い社会」を実現するために配慮すべき3つの要素を示す略語です。
世界ではいま、地球温暖化などによる気候変動や資源枯渇といった環境問題、男女不平等や人種・民族差別などの人権問題、さらに利益相反や法令違反など企業の「好ましからざる行動」の排除など「ESG」における諸問題に直面しています。こうした課題は、不動産投資の世界だけで求められているテーマというよりも、企業であれ個人であれ、置かれた立場で「より良い社会」を築いていく上での長期的な心構え、と受け取るべきものかもしれません。

財務情報の説明力低下

ESGが注目される背景は、いくつかのポイントがあります。ひとつは、財務情報の説明力低下です。例えば、わが国の上場企業は四半期ごとの決算短信や有価証券報告書といった財務情報を開示することを義務付けられています。こうした情報は国が定める法定開示や証券取引所が定める適時開示などの種類に分けられています。そのほか経営理念や経営ビジョン、中期経営計画、知的財産報告書、CSR報告書は任意開示になっています。企業のディスクロージャーは企業会計の国際化と相まって年々開示項目が増えています。

しかし近年、ある調査機関が国内の上場企業を対象にして、過去20年の純資産と経常利益の数値が株価に適切に反映されているかを調査したところ、必ずしも関連性は大きくないとの結果が得られました。これは、決算情報などの数値情報、定性情報だけでは企業価値の真の姿は把握しづらくなっていることを示しています。
そこで、企業がより良く共存していくため、従来の財務情報に加えて、環境・社会に対する認識や行動といった非財務情報を積極的に開示することが求められてきました。

ESGのためのSDGs

では、企業はESGに取り組むためには、どんなことをすべきなのでしょうか。それが、「SDGs」で、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)と呼ばれています。
「SDGs」は2015年に国連で採択され、2030年までに世界が達成すべき持続可能な開発目標とされています。貧困や飢餓の撲滅など途上国の支援を中心とした8つの目標に、健康や福祉の増進、技術革新、気候変動への対応など先進国の課題や環境問題が加わってできており、17の目標があります。企業はこうした世界的かつ広範な目標に少しでも貢献してくことが求められているのです。

ワーカーズキャピタルの存在

投資におけるESGが重要視されている大きな背景には、年金基金の存在があります。2005年、国連は機関投資家に対してESGの課題をその責任の範囲内において果たすべきであるという「責任投資原則」(PRI=Principles for Responsible Investment)を提唱しました。資金運用を委託された機関投資家などの受託者はESGに配慮して投資行動を展開すべきであるという提言で、環境破壊や人権無視、企業倫理に反した経営行動を行う企業に対しては投資すべきではないというものです。
国連の提案ですから拘束力はありませんが、世界で多くの機関投資家がこの提言に賛同したことから、ESG投資が世界中で拡大・普及するようになる契機になりました。とりわけ、世界の投資市場で中心的なプレーヤーである年金基金がこぞって「PRI」を支持するようになり、ESG投資は国際標準になってきているのです。

図:PRI署名機関数・合計資産残高

国土交通省「ESGを取り巻く動きと不動産投資に関する国連等の取り組み」より

いうまでもなく、年金基金は多くの労働者が長年にわたって拠出してきたファンドであり、退職後の重要な生活資金の原資になっています。それだけに、その資金の運用に関しては、少しでも多くの投資果実を追求するのは当然ですが、労働者の社会参加意識を背景にESG(環境・社会・コーポレートガバナンス)の非財務的要素を考慮する傾向が強いとされています。
年金基金は資産管理を委託している信託銀行などを通じて年金基金が株主権限を行使することもあり、公正で持続可能な社会形成に貢献することを目的としているファンドといわれています。

こうした年金基金は「ワーカーズキャピタル」といわれていますが、わが国の国民年金・厚生基金を運用し国内最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年にPRIに署名したことで、国内の資産運用業界に大きな影響を与え、ESG投資がさらに大きくクローズアップされることになりました。
GPIFは、海外の調査機関が発表した2016年度における世界の年金基金の運用資産額ランキングで1.2兆ドルとトップ。13位には地方公務員共済組合連合会が1832億ドルでランキングされており、日本のワーカーズキャピタルは投資市場の中で影響力のあるファンド勢力になっています。今後、世界中で高齢化が進み、年金基金の発言力が今以上に増すことは間違いありません。ESG投資が世界の投資市場で主流になるのに時間はかからないでしょう。

不動産投資市場におけるESG投資

国土交通省は、「ESG不動産投資のあり方検討会」でESGやSDGsに沿った中長期的な投資を投資家から呼び込むため、どのような情報開示が必要かについて議論していくことになります。今後、不動産におけるESG投資を拡充するための開示項目を検討することになると思われます。その場合、一つの指標となるのがSDGsではないでしょうか。国内最大の機関投資家であるGPIFが署名した国連の責任投資原則(PRI)はESG投資を支持していているからです。
わが国の不動産投資市場が海外の投資家を呼び込むには、世界的に拡大しているESG投資を拡充する必要があります。高齢化社会が進展するわが国では、介護施設を投資対象とするヘルスケア・リートなどは格好のESG投資であり、投資対象として一段の取り組みが求められるのではないでしょうか。

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