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コラム No.75

CREコラム・トレンド

待ったなしの「ホワイト物流」推進

公開日:2019/04/26

EC取引全盛のいま、現代の物流を支えるトラック輸送の生産性向上と労働環境の改善は待ったなし。国はこのほど、自動車運送改革を進める「ホワイト物流」運動への参画を広く呼び掛けるため上場会社などに協力を要請し、賛同する企業の社名を公表することにしました。官民挙げて推進している「ホワイト物流」について考えます。

トラック運転手の労働環境改善

インターネットが普及したおかげで、私たちはスマートフォンやパソコンを使って手軽に買い物をすることができるようになりました。しかしモノを購入することはITで実現できましたが、購入した商品を利用者の手元に届けるITは存在せず、人手を使わなければ実現できません。近年、物流の世界では交通渋滞を避ける配送ルート最適化システムの導入や、トラック輸送から大量輸送可能な海運・鉄道に切り替えるモーダルシフトが広がりつつありますが、利用者に直接届けることができるトラックにかなう輸送手段は見当たりません。

しかし、人口減少と高齢化が進展している現在、トラック運転手が不足し物流ニーズに対応するトラックの安定調達が困難になっています。トラック輸送における運転手の40年間における推移を5年刻みで見てみると、最も多かった1995年(98万人)と直近の2015年(76.7万人)を比べた場合、2割の減少になっています。また、トラック輸送の就業年齢で45歳以上59歳以下の構成比は44.8%で、同じ年齢層で全産業での構成比を比べた場合、12ポイント上昇しています。逆に、トラック輸送に携わる15歳から34歳までの若年層での比較では、全産業が25.1%なのに対して14.9%と10ポイント低下しています。

(図1)

「ホワイト物流」推進運動に関する中央説明会用資料
(2019年3月 国土交通省・経済産業省・農林水産省)より作成

(図2)

「ホワイト物流」推進運動に関する中央説明会用資料
(2019年3月 国土交通省・経済産業省・農林水産省)より

この数字で注目したいのは、トラック運転手の高齢化よりも、若年層での担い手不足です。物流業界でも60歳以上のシニア世代が活躍していますが、人口減少が進む今後を考えると、業界に入ってくる新たなトラックドライバーを増やす環境を良くしていくことのほうがより重要と思われます。そのためには、運転手の労働環境を改善・整備する必要があり、ホワイト物流は、運転手のより良い(=ホワイト)労働環境の実現運動ということになります。

荷待ち低減や手荷役改善で長時間労働解消へ

国土交通省・経済産業省・農林水産省の3省は、国民生活にとって切り離せない物流の安定化に向けて4月、上場企業や各都道府県の主要企業にホワイト物流推進運動の参加を要請し、賛同する企業の会社名を10月にも公表する予定です。国がこうした推進運動のなかで賛同者の企業名を明らかにする狙いは、トラック輸送における労働環境の改善にあります。近年は長時間労働や有給休暇の取得率が低い会社をブラック企業と非難する風潮があります。逆に言えば、労働環境が良好ならばより良い人材を確保できることにつながり、上場企業にとっては市場で高い評価を得ることができます。このため関係省庁は、企業の物流改革における取り組み姿勢を世間に公表することで運動への参画を促すことにしたのです。

企業に対する協力を要請する背景には、いくつかの改善ポイントがあります。ひとつは、トラック運転手の長時間労働の原因の一つにもなっている「荷待ち時間」の低減や「手荷役(手積み・手降し)」の改善で、荷主企業に求めるものです。ある納品先では、先着順で荷物の積み込みや積み下ろしが行われていました。しかしトラックと倉庫の間で積み下ろしを行うスペース(トラックバース)には限度があり、特定の時間帯に納品するトラックが集中しがち。その結果、長時間の無駄な荷待ちが常態化しているとの指摘があります。

(図3)

「ホワイト物流」推進運動に関する中央説明会用資料
(2019年3月 国土交通省・経済産業省・農林水産省)より

こうした場合には、納品先が予約受付システムを導入したり、トラックバースの利用時間を事前に設定して特定時間帯の集中を避けて平準化するよう求めています。運転手に過剰な労力を強いる手積み・手降しの改善も喫緊の課題。パレットの積極使用を奨励して物流業者と出荷企業、着荷企業の3者で調整し、手作業からフォークリフトによる荷役作業に転換するよう要請しています。こうしたシステム導入でリードタイムは短縮され、運転手の労働時間はかなり改善されると思われます。長時間労働が改善されれば、シニア世代の就業年数も伸びることが期待できますし、女性ドライバーの増加も今以上に増えることが予想されます。

国民にも理解・協力求めるホワイト物流

ホワイト物流は、企業関係者だけでなく、広く国民にも協力を呼び掛けています。宅配便の配送個数は年々増加の一途を辿っており、前述した「BtoB」(企業間取引)の世界を改善するだけでは効果が上がらないからです。「BtoC」(企業と個人の取引)で改めるところは少なくありません。

宅配便では、できるだけ1回で受け取り、宅配ボックスや業者の営業所やコンビニなどでの受け取りも活用するよう呼びかけています。また、モノを送るときは自分や相手が受け取りやすい日時・場所を指定し、インターネット通販などの販売を利用する場合は、できるだけまとめ買いして配送回数を低減することも重要です。ただ、受取時間の指定は現在、一部の大手宅配業者だけが対応しているに留まっており、利用者からも不満の声が出ています。一方、時間指定をしてもそれを守らない人も少なくありません。最も身近な配送手段である宅配便に関しては、相互協力と宅配業者における受取時間指定システムの業界統一が求められます。こうした努力なしに再配達の削減は実現しないのではないでしょうか。

いま最も深刻なのが引っ越しサービス。季節変動による価格の格差は社会問題といっても過言ではありません。「引っ越し難民」という言葉も生まれたほどで、年度末や年度初め、卒業・入学、就職シーズンになると、数倍の料金がかかります。それだけにホワイト物流推進では、転勤時期をずらす企業努力が欠かせません。また、トラック運転者の休憩と安全運転のため、高速道路のSA・PAや道の駅、コンビニなどの大型車駐車スペースへのマイカーの駐車を控えるよう呼び掛けています。

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