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コラム No.83

CREコラム・トレンド

所有者不明土地の解消は進むか

公開日:2019/08/30

国土交通省はこのほど、所有者が不明で利用方針のメドが立たない土地の問題について対策を推進していくための工程表をまとめました。バブル期に制定された土地基本法の改正も含めて、新たな土地政策の骨格が固められようとしています。

時代の変遷とともに変化

わが国では人口減少や高齢化、過疎化の進展で空き家・空き地など所有者不明の土地を巡る問題の解決が喫緊の課題になっています。 2019年6月にいわゆる「所有者不明土地法」が施行され、反対する権利者が不在で利用されていない所有者不明土地について地方自治体に所有権を移転・取得し、一定期間中は地域の福利増進事業に利用することを定めました。
こうした不稼働不動産に対する問題の解決とともに、バブル経済期に制定された「土地基本法」の改正作業も始まっています。この法律は、 1980年代後半に起きた異常な地価高騰に対応するためにできたもので、投機的な土地取引を抑制して地価の急激な上昇を抑える狙いがありました。

バブル経済から現在までを土地政策で概観すると、第1期はバブル経済勃興期からその崩壊期(1985年~ 1995年)、第2期はバブル崩壊から人口減少の始まりまで(1995年~ 2008年)、そして第3期が人口減少時代の始まりから現在まで(2008年~)に分けられます。
第1期は土地基本法が制定され、土地取引の適正化と合理的な土地利用の確保に重点が置かれました。第2期は都市再生の推進と不良債権処理に対応した不動産証券化などの市場整備と防災、バリアフリー化など安全で質の高い生活基盤となる土地利用の実現が図られました。そして第3期はEC取引など成長分野の土地需要に対する環境整備とコンパクトシティや空き地・空き家対策の推進と、今年制定された所有者不明土地への対応などが挙げられます。

所有者不明土地問題

なかでも、待ったなしの土地政策といわれているのが所有者不明土地の問題です。今後、土地所有者が高齢化し、多くの土地が相続の対象になることが予想されます。しかしこうした相続対象の土地の中には、多くの地権者が区分所有するなど権利関係が複雑になっているものがあります。仮にこうした土地を自治体が借り上げて公園やグランドなどに利用したいと考えても、所有者を探索し権利移転などの事務処理を行う必要があります。そのための時間と費用は、全国ベースで考えれば巨額になります。また、こうした作業を担うだけのマンパワーは地方の小さな自治体にはなく、ノウハウも不足しています。
国交省が7月にまとめた「新たな総合的土地政策の検討について」によると、約18ヘクタールの所有者不詳の土地を公園として整備する計画があり、850筆・地権者170人のうち80筆・40人の相続登記がないため、樹木を伐採することができず、景観の悪化やゴミの不法投棄などを招いています。また各地で問題になっている家電製品や乗用車の不法投棄と見られる廃棄物の処分は、土地の所有者が不明のため不法投棄か保管かの判断ができず、行政代執行もできないケースが増加しているといわれています。

出典:国土交通省「新たな総合的土地政策の検討について」

2020年の土地基本法改正に向けた工程表

土地基本法は地価抑制の狙いで制定されましたが、国や自治体が土地に関する施策を構築する際の基本理念でした。その基本理念は、(1)土地についての公共の福祉優先(2)適正な利用及び計画に従った利用(3)投機的取引の抑制(4)価値の増加に伴う利益に応じた適切な負担、でした。基本理念は施行時以降の一定期間では有効でしたが、その後30年が経過し、国民の土地に対する考え方も変化しています。多くの人々が、土地や家屋は先祖代々から継承すべき財産と考えてきましたが、前述したように少子高齢化や過疎化、相続問題などにより、必ずしも土地を永続的に引き継ぐべき対象と見なくなっています。このため空き地・空き家が国内各地で増加しているにもかかわらず、現行の土地関連法制ではこうした問題に対する改善策が取りづらくなっているのです。
そこで国は来年までに土地基本法を改正するための工程表を作成し、所有者不明土地問題の解消に向けて作業ピッチを上げることにしました。すでに2月、国土審議会で土地所有者や近隣住民、国及び地方公共団体の責務を明確化し、所有者不明でも地籍調査が進むよう手続きを見直しました。また法制審議会では土地の登記官による探索結果を登録に反映させる制度を創設するなどの作業を行っています。

空き地・空き家は、放置すれば周辺の環境を悪化させ、放火など犯罪の温床にもなりかねません。また同一地区の地価を押し下げる要因にもなります。人々の住環境を脅かす所有者不明土地の問題は、国土の劣化にもつながるのです。
所有者不明土地問題は、林業の規模拡大を目指して2019年4月に施行された森林管理経営法における担い手問題と共通点があります。収穫期を迎えていながら伐採できずに放置されている所有者不明の森林が各地に点在しています。森林の境界を画定して遠距離の地権者から合法的に所有権を地方自治体に移譲し、さらに民間事業者に管理委託する制度で、林業における規制緩和策でもあります。所有者不明の土地を自治体に一定期間移す権利移転は、ある意味では個人の土地所有権における規制緩和の一環かもしれません。

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