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コラム vol.341-5
  • 賃貸住宅経営のポイント

「所有者不明土地」関連法改正の行方(3)所有者不明土地を“減らす”【2】共有を解消しやすくし、私的に利用しやすくする

公開日:2021/02/26

POINT!

・遺産を共有して後に解決できない「争続」に発展することが所有者不明土地の原因になる

・民法の共有制度を見直し、共有を解消しやすくする制度が創設される予定

「所有者不明土地」関連法改正の行方(1)「所有者不明土地になることを“予防する”で、「(相続)登記の義務化」について触れました。具体的に、相続開始と権利の取得を知ってから3年以内の登記申請を義務化し、正当な理由なく怠れば10万円以下の過料を科すというルールが新設されます。また、相続人の申し出だけで登記ができる制度や所有不動産の一覧を証明書として発行する制度を設け、登記手続きの負担 軽減を図る改正がなされます。これは、法務省民法・不動産登記法部会において、「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」の決定によるもので、おそらく2021年3月の年度末までにこの案に基づいた法案が国会に上がり、法律になる予定です。

また、「所有者不明土地」関連法改正の行方(2)「所有者不明土地を“減らす”」にて、「土地所有権の放棄」についてお伝えしましたが、新しく、「相続等により取得した土地を国庫に帰属させる制度」(建物がないなどの一定の条件を満た し、10年分の管理費相当額を納めれば、相続等により取得した土地を国庫に帰属させる新しい 制度)が創設されるようです。今回は「所有者不明土地を“減らす”」のもう1つの視点、「共有を解消しやすくし、私的に利用しやすくする」について見ていきましょう。

共有の問題点

相続争いの代表例として、以下のような事例があります。

  • 両親のうち、先に亡くなった父親の相続(一次相続)のときには、母親の老後のために現金や預貯金関連の遺産は母に相続してもらい、残った不動産(実家の土地建物)に関しては仲の良かった兄弟姉妹で共有にした。
    時を経て、母親が他界したとき(二次相続)には、実家の土地建物以外はめぼしい財産は残っていなかった。そして、実家のその後の利用方法について相続人の間で話し合ったものの、「そのまま残したい」「売却したい」「賃貸経営したい」と意見がバラバラになり、仲が良かった兄弟姉妹の関係がギクシャクしてしまった。

このように、一次相続のときに共有関係にしてしまうと、その時は両親のうちどちらかが存命なので大きなトラブルにならなくとも、二次相続の際には個々人の意識や事情により、意見をまとめることが困難になり、最悪の場合、いわゆる「争族状態」に陥ってしまいます。

相続争い「争族」の現状は?

遺産争い「争族」の現状を確認してみましょう。

最高裁判所「第8回裁判の迅速化に関わる検証に関する報告書」(2019年7月)を見ると、新受件数(審判+調停)が年間約15,000件、1時間当たり約1.8件発生している計算になり、高齢化の影響等により遺産分割争いが長期的に見て増加傾向にあることがわかります。また、平均審理期間についてもここ数年間12ヶ月を下回る11.5ヶ月水準で推移しており、長期的に見れば短縮傾向にありますが、1年近く争うことになります。相続税の確定申告期限である10ヶ月を過ぎてしまうので、円満解決するためにも対策は必要です。

図1:遺産分割事件 新受件数(審判+調停)及び平均審理期間の推移

最高裁判所「第8回 裁判の迅速化に関わる検証に関する報告書」(2019年7月)より作成

よく「財産はそんなにないので、遺産争いなんて関係ない」と言われる方がいらっしゃいます。ただ、現実はその逆で、「遺産が少ない=分ける財産がない」からこそ、遺産争いになっているわけです。最高裁判所「平成30年度司法統計年報(3家事編年刊)」によると、家庭裁判所が扱う遺産分割に関する事件(つまり、遺産争い)で、財産額が5,000万円以下の事件が全体の約3/4になっていることからも、そのことがわかります(図2参照)。

図2:遺産の内容別遺産の価額別(全家庭裁判所)

最高裁判所 司法統計年報(平成30年度)52「遺産分割事件のうち認容・調停成立件数(「分割をしない」を除く)遺産の内容別遺産の価額別 全家庭裁判所」より作成

つまり、事例のように遺産争いが顕在化する可能性が高くなりますから、多くの実務家が言っているとおり、できるだけ共有名義での相続は避けたほうが良いでしょう。

共有とは、どんな権利?

共有権とは、所有権を複数で共同して持ち合い、対象になっている物を利用していく権利です。例えば、今回のケースでは遺産である土地建物を使っていくことになります。共有権が1/4だからといって、1/4の部分しか使えないというわけではなく、対象になっている土地・建物全体について、共有持分に応じて利用ができます。
対象になっている物を「保存」したり、「管理」したり、「変更(処分)」したりすることができますが、持っている共有持分によりできることが限られています。
例えば、「保存」は対象物の現状を維持することであり、共有者全員にとって不利益が及ばないようにすることなので、1人で対応できます。
「管理」は、賃貸借など対象物の性質を変えずに収益を上げることです。管理を行うには全員の損得が影響してくるので、共有持分(価額)の過半数で決める必要があります。
「変更」は、対象物の物理的変化を伴う行為、つまり、宅地造成や売買など処分することをいいます。全員の損得が強く影響してくるので、共有者全員の同意を得なければ対応できません。
ですから、一旦、共有状態になってしまうと、処分したくても全員が合意しないと売却などはできないことになります。全会一致でない限り何もできない状態に陥りますから、今回の事例のように時を経て、共有者それぞれが引けない事情を抱えてしまうと、全会一致は現実的には不可能になります。仮に共有権の解消ができたとしても、問題解決のためには多大な費用や手間(時間)がかかることが予想されます。結局、途中で断念せざるを得ず、結果として、その土地建物が所有者不明土地=管理不全土地や空き家となり、増加するという状態になります。

以上の点から、所有者不明土地問題の解決のためには、共有権の解消を容易にするなどの道筋を立てることが不可避になります。

今後の動きを予測する。共有は解消しやすくなる?!

前述の法務省民法・不動産登記法部会において、「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」では、相続人による遺産分割が行われず、複数人による共 有状態となった土地について、一部の所有者が不明でも、裁判所の決定を経て利用や処分が 可能になります。
また、相続開始後10年経過しても分割協議が行われなければ、法定相続分で分割を行える仕組みも設け、土地が共有状態とならないようにします。ですから、契約の時効と同様、10年という分割期限を経過した後は、遺産分割は各相続人の法定相続分に応じて行うことになります。
今まで難しかった個別の共有権の解消についても供託制度を用いることにより不明所有者の持 分を買い取ることもできるようになります。とても大きな法改正&制度改正になるので、相続に与える影響も非常も大きくなります。
十分に注意することが必要です。

2019年から順次施行されている民法(相続編)改正のように、相続をめぐる世の中の動きは大きくなっています。また、徐々に表面化している新型コロナウイルス禍の経済的な影響による今後の税収確保のため、また増加する相続に対応するため相続“税”の改正などの可能性も否定できません。
今後も注意深く、情報収集に努めましょう。

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