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コラム vol.359-4
  • 賃貸住宅経営のポイント

2021年から動き出す新しい住宅政策とは?(4)頻発・激甚化する災害新ステージにおける安全な住宅

公開日:2021/08/04

POINT!

・頻発・激甚化する災害新ステージにおける安全な住宅・住宅地の形成が求められている

・命、生活、資産価値の3つを守るという災害対策の目的に沿った対応をしていく

住生活基本計画は、法の基本理念を踏まえ、令和の新たな時代における住宅政策の目標 を「3つの視点」と「8つの目標」で示したものです。今回は、「社会環境の変化」からの視点の2つ目の目標である「頻発・激甚化する災害新ステージにおける安全な住宅・住宅地の形成と被災者の住まいの確保」について見ていきます。

この目標は、今回の住生活基本計画で新しくできた目標というわけではありません。災害対策は常に私たちの生活の中で意識されてきました。しかし、地球的規模で気候が大きく変動している昨今、災害の規模やその影響も大きくなっています。2021年7月に熱海で起きた土砂災害を見ても、今までの常識が通じなくなっていることがわかります。この目標は、一歩先の状況を予測し、先を見据えた対応が求められていることの大切さを感じられる目標となっています。

図1:「社会環境の変化」の視点

出典:国土交通省「住生活基本計画(全国計画)(令和3年3月19日閣議決定)概要」

土地活用上で災害対策を行う際にベースとなる発想については、2021年3月のコラム「震災から10年を経て再検討すべき『賃貸住宅経営の災害対策』」で、以下の通りご紹介しました。

  • 1.ご自身が保有される賃貸住宅で「どのような災害に遭う可能性があるのか?」を認識することがスタートです
  • 2.そのために、リスクマネジメントの発想を活用することが大切です
  • 3.災害対策の目的は、(1)「命」、(2)「生活」、(3)「資産価値」の3つを守ることです
  • 4.防災上、技術的な条件を満たした賃貸住宅を提供することがとても大切です

建物など物的なハード面だけでなく、サービスや管理などソフト面の重要度が高まるなか、私たちが思い描く災害対策は、以上のような発想で展開されてくるはずです。

新たな住生活基本計画「安全な住宅・住宅地の形成」

新たな住生活基本計画は、「(1)安全な住宅・住宅地の形成」と「(2)災害発生時における被災者の住まいの早急な確保」という2つの項目で構成されています。このうち、「(2)災害発生時における被災者の住まいの早急な確保」は、主に災害発生後の行政サイドの話になります。土地活用で私たちが活かせるのは、「(1)安全な住宅・住宅地の形成」からの発想です。災害対策の目的を、(1)「命」を守るという視点から考えると、本計画に示された「ハザードマップの整備・周知等による水災害リスク情報の空白地帯の解消、不動産取引時における災害リスク情報の提供」「地震時等に著しく危険な密集市街地の解消とそれにあわせた地域防災力の向上に資するソフト対策の強化、無電柱化の推進。都市化に伴い無秩序に形成された住宅市街地 における狭あい道路等の現状分析を行い、防災・まちづくり部局等と連携し重点的に安全性を確保すべき地域の把握と対策を推進」に対応することが大切です。
例えば、ハザードマップなどを用いて、現地にどのような災害リスクが存在し、どのような対応が求められるのかという情報を提供します。
このような情報は、ご自身にとってネガティブな情報かもしれません。しかし、このような対応をご入居者と接する契約締結や更新時に災害リスク情報として積極的に提供できると、信頼関係構築に役立ち、長い目で見てプラスに働くでしょう。日本全国、どこを見渡しても何かしらの災害に遭う可能性はあるからです。
また、私のお客さまが実際にされていることですが、災害が発生しても一定期間は、最低限の生活ができるように食料・飲料や発電機器など備蓄品を、そのための物置などに確保しておくことをおすすめします。すぐに実践できて、安心感を得ることができるでしょう。

次に、(2)「生活」を守るという視点から考えると、本計画で下記のように示された住宅地の形成に対応することが大切です。
「地方公共団体の防災・まちづくり・建築等の部局間連携を強化し、地域防災計画、立地適正化計画等」を踏まえ、

  • ・避難計画に基づく避難体制や避難施設の整備、避難場所の確保と連携した住宅改修や盛 り土等による住宅・住宅地の浸水対策の推進
  • ・避難計画や安全対策と連携した災害危険区域の柔軟な指定や土砂災害特別警戒区域等 の指定を進め、豪雨災害等の危険性の高いエリアでの住宅・住宅地の立地を抑制
  • ・災害の危険性等地域の実情に応じて、優遇措置等の対象となる立地を限定し、安全な立 地に誘導するとともに、災害の危険性の高いエリアにある既存住宅の移転を誘導」

例えば、管轄の行政、市町村でどのような災害対応を検討計画されているか、また、災害対策という観点から、お持ちの賃貸住宅が、防災上どのようなエリアなのかを確認しておいてください。
国土交通省では、以前から「タイムライン」(防災行動計画)を策定していました。災害の発生を前提に、防災関係機関が連携して、災害時に発生する状況をあらかじめ想定し、認識を共有したうえで、「いつ」、「誰が」、「何をするか」という行動面に着目して、防災行動とその実施主体を時系列で整理した計画のことです。
その中で、災害を(1)進行型災害(風水害など)と(2)突発型災害(地震など)に分け、事前対応・事後対応を決めていました。

図2:災害時の対応

出典:国土交通省 タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針(初版)(平成28年8月)

この発想をアレンジして、近年激甚化している進行型災害(風水害など)に対応する「マイ・タイムライン」という個人でも活用できるようなツールも用意されていますので、上手に活用したいもの です。

最後に、(3)「資産価値」を守るという視点から考えると、本計画に示された「住宅の改修による耐風性等の向上、耐震改修・建替え等による住宅・市街地の耐震性の向上」「食料、物資、エネルギー等を住宅単体・共同で確保し、災害による停電、断水時等にも居住継続が可能な住宅・住宅地のレジリエンス機能の向上」に対応することが大切です。

現在の人口減少と超高齢社会の対応として、行政も「コンパクトシティ」(街の集約化・効率化)を進めています。例えば、火災に弱い木造密集地域などで土地活用を行っている(または計画している)場合、その対策として行政からのサポートも期待できるでしょう。また、お持ちの賃貸住宅が水害に弱い、あるいは地盤が弱く大地震の際に注意を要すると思われる「災害レッドゾーン」や「浸水ハザードエリア」に該当する場合、戦略的 にお持ちの不動産資産を買い替えるなどの行動も必要になるかもしれません。

図3:都市計画法及び都市再生特別措置法の改正概要(安全まちづくり関係)

出典:国土交通省「水害対策とまちづくりの連携」(令和2年9月16日)より

具体的成果指標

本計画では、以下のような成果指標を掲げています。

  • 地域防災計画等に基づき、ハード・ソフト合わせて住まいの出水対策に取り組む市区町村の割合 -(令和2年)→5割(令和7年)
  • 耐震基準(昭和56年基準)が求める耐震性を有しない住宅ストックの比率 13%(平成30年)
    →おおむね解消(令和12年)
  • 危険密集市街地の面積及び地域防災力の向上に資するソフト対策の実施率
    面積:約2,220ha(令和2年)
    →おおむね解消(令和12年)
    地域防災力の向上に資するソフト対策: 約46%(令和2年)→100%(令和7年)

市街地対策という観点では、従来の洪水対策だけではなく、上下水道の逆流など生活インフラからの被害に対処するための取り組みが必要です。
特に都市部ではこの対策が重要でしょう。そして、新耐震基準(1981年)が導入されてから40年も経つわけですから、その解消にいよいよ動き出しそうです。具体的には、旧耐震から新耐震への補修、旧耐震建物の除却ということになるでしょう。しかし、空き家が旧耐震建物とリンクしていることから、これは同時に空き家対策にもつながります。最後に、前述した木造密集地域など危険密集市街地の対策に本腰を入れそうです。東京など大都市部に散見するエリアですが、利便性の高い、土地活用には良好なエリアが多いですから、ミニ再開発的な動きができると思われます。このような流れ(時流)に上手に乗って、ご自身の土地活用を良好な状態にしていきましょう。

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