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コラム No.117

CREコラム・トレンド

実現に向け議論始まる「脱炭素社会」

公開日:2021/05/31

地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出を防ぐ「脱炭素」の実現に向けて議論が始まっています。国は住宅・建築業界に対して省エネ対策の強化を求めており、国土交通省などの関係各省は検討会での議論を重ねて2021年6月下旬に取り組みの方向性に関してとりまとめる予定です。

脱炭素とカーボンニュートラル

国土交通省、経済産業省、環境省の3省は2021年4月19日に「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」の初会合を開催しました。菅義偉首相が2021年1月の所信表明演説で、「環境対策は経済の制約ではなく、社会経済を大きく変革し、投資を促し、生産性を向上させ、産業構造の大転換、力強い成長を生みだす鍵となるもの」と語り、2050年にカーボンニュートラルを実現することを掲げるなど、環境対策に本腰を入れることを明らかにしました。

  • 検討会における主な論点
  • [家庭・業務部門]
    住宅・建築物における省エネ対策の強化について
  • ■中長期的に目指すべき住宅・建築物の姿
  • ■住宅・建築物における省エネ性能を確保するための規制的措置のあり方・進め方
  • ■より高い省エネ性能を実現するための誘導的措置のあり方
  • ■既存ストック対策としての省エネ改修のあり方・進め方
  • [エネルギー転換部門]
    再エネ・未利用エネルギーの利用拡大に向けた住宅・建築物分野における取組について
  • ■太陽光発電等の導入拡大に向けた取組
  • ■新築住宅等への太陽光パネル設置義務化の意見
  • 国土交通省「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」第1回資料より

検討会は政府のこうした方針を受け、脱炭素社会に向けた住宅・建築物におけるハード、ソフト両面の取り組みと施策の方向性を定める有識者会議です。住宅を新築する際の省エネ基準適合の義務化などを検討するほか、関連団体へのヒアリングなどを行い、2021年6月に結論をとりまとめるもようです。環境対策の重要性を痛感している方は多いと思われますが、環境用語の中には聞きなれない言葉もあり、直感的に理解するのは容易ではありません。そこで脱炭素とカーボンニュートラルについて少し考えてみましょう。

脱炭素とは、地球温暖化の原因であるCO2やメタンなどの温室効果ガスの排出を防ぐため、石油や石炭といった化石燃料に依存しないことを意味します。生産活動や消費生活で使うエネルギー(主に火力発電)は化石燃料を大量に使うので、CO2が大量に大気中に出ます。これを減らすためには化石燃料を使わないで水力や太陽光などの再生可能エネルギーを使うようにします。炭素を排出するエネルギーから脱却するので、「脱炭素」と呼んでいます。

脱炭素に関連して「排出枠」という言葉がよく出てきます。気候変動など環境問題に対する世界的な取り組みを定めた京都議定書(1997年)やパリ協定(2016年発効)などで、各国はCO2排出量削減について激論を交わしてきました。世界の国々では、経済活動を継続していく上で火力発電などCO2を使ったエネルギーの消費は現状ではゼロにすることが実質不可能です。そこで各国は国際的に取り決めた排出枠に沿ってCO2を「排出は最低限に抑えよう」と努力します。

しかしCO2を出す火力発電などのエネルギーがどうしても必要で、計画している排出枠ではエネルギー不足になり経済活動が停滞しかねないと判断した場合、目標値よりCO2を少なく抑制し排出枠に余裕のある国から「排出できる権利」すなわち「排出枠」の全部または一部を買い取ってCO2を排出します。排出枠を売った国は環境改善を行ったことにより利益を得ます。こうしたビジネスを排出権取引といいます。世界の環境対策は、この排出枠をできるだけ順守することに力点が置かれているといっても過言ではありません。

そして「カーボンニュートラル」とは、排出したCO2量と同量のCO2を回収して埋め立てたり貯蔵して削減し、「排出量」=「削減量」の均衡を保つ、カーボン(炭素)の量を中立(ニュートラル)にするという意味です。

計算が複雑な省エネ基準

2021年4月に改正建築物省エネ法が施行されました。省エネ基準の適合義務の対象範囲が拡大され、ビルやオフィスなど非住宅部分の床面積合計の下限を2,000m2から300m2に引き下げて中規模の新築建築物にも適用することになりました。ただ、小規模のビルや住宅などは適合義務の対象外になっています。

また、300m2未満の小規模住宅や建築物を設計する場合、建築士が建築主に対して省エネ基準への適合の適否などを評価・説明することを義務付ける制度も新たにできました。しかし省エネ基準の計算は複雑で、国土交通省が全国の中小工務店や建築士を対象に2018年に行ったアンケート調査では、計算できると答えた人は5割にとどまっているなど、説明義務化にはまだ課題が残されています。このため国土交通省は、コロナ禍であることも勘案して法改正について学べるオンライン講座を2020年9月に開講するなどの対応を図っています。

住宅・建設部門における脱炭素の取り組みは、端的に言うと「省エネ」と「再エネ」になると思われます。検討会における主な論点も、住宅・建築物の省エネと、再生可能エネルギーなどを活用してエネルギーを転換してくことにウエイトが置かれています。2021年4月19日の第1回会合では、小泉進次郎環境相が言及した太陽光発電パネルの設置義務化に対して、「日照条件や立地の違いを考慮して対応することが必要ではないか」などの慎重論が出ました。

図1:世帯当たりの用途別エネルギー消費の推移(単位:%)

経済産業省「エネルギー白書2020」をもとに作成

図2:家庭部門におけるエネルギー源別消費の推移(単位:%)

経済産業省「エネルギー白書2020」をもとに作成

経済産業省「エネルギー白書2020」によると、国内の家庭用エネルギー消費は、用途別にみると家電機器の普及と大型化で動力・照明の比重が高まる一方、暖房や厨房、給湯が減少しました。省エネタイプのエアコンや給湯器が増えたことが背景にあるようです。エネルギー別にみるとオール電化の影響から電気のシェアが飛躍的に高まる反面、石炭などの消費はほぼ消滅し太陽熱が登場しています。太陽光発電もこの中に含まれると思われますが、導入が進むのはこれからのようです。

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