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コラム No.6-6

CREコラム

CRE戦略とは何か(6)中小企業・小規模企業の事業承継・資産承継とCRE戦略

更新日:2019/09/30
公開日:2016/05/26

中小企業の事業承継の問題

中小企業・小規模事業者の数については、2016年6月時点で357.8万者となりました。2014年と比較すると、23.1万者減少しています。合併や統合によって大企業は増加し、中小・小規模事業者は減少していますが、それでも日本の企業の大半は、中小・小規模企業であることが分かります。

  2014年(企業全体に占める割合) 2016年(企業全体に占める割合) 増減数(率)
中小企業・小規模事業者 380.9万者(99.7%) 357.8万者(99.7%) ▲23.1万者(▲6.1%)
うち小規模事業者 325.2万者(85.1%) 304.8万者(84.9%) ▲20.4万者(▲6.3%)
大企業 1万1110者(0.3%) 1万1157者(0.3%) +47者(+0.4%)
全規模(大企業と中小企業・小規模事業者の合計)  382.0万者 358.9万者 ▲23.1万者(▲6.1%)

経済産業省ニュースリリースより

※中小企業の定義

  • ・製造業:資本金3億円以下又は従業者数300人以下
  • ・卸売業:資本金1億円以下又は従業者数100人以下
  • ・小売業:資本金5千万円以下又は従業者数50人以下
  • ・サービス業:資本金5千万円以下又は従業者数100人以下

※小規模企業の定義

  • ・製造業・その他:従業員20人以下
  • ・商業・サービス業:従業員5人以下

日本の中小企業におけるCRE戦略は、多くの場合、経営者(オーナー)の交代、つまり事業承継・資産承継の際に問題として浮かび上がってきます。
事業承継は、従業員、取引先、営業先などの事業経営に関する財産の承継を指し、資産承継は、不動産などの財産の承継を指しますが、CRE戦略では、不動産などの資産を扱います。

事業承継は、従業員、取引先、営業先などの事業経営に関する財産の承継を指し、資産承継は、不動産などの財産の承継を指しますが、CRE戦略では、不動産などの資産を扱います。
中小企業・小規模企業の資産承継の際におけるCRE戦略に関する問題としては、

  1. (1)会社が所有・賃貸する不動産の管理ができていない
  2. (2)不動産の法人所有、個人所有が混在している
  3. (3)不動産資産が事業継続のために本当に必要かどうか不明

などの問題が挙げられますが、なかでも大きな問題となるのは、不動産の法人と個人の所有の混在でしょう。企業が事業用として使っている不動産などの資産が、オーナーの所有となっているケース、あるいは企業の所有とオーナーの所有が混在しているケースが少なくありません。
また、中小企業、特に小規模企業では、親族で経営を行う同族企業の形をとる企業が多く、多くの場合、いわゆる資本と経営とが同一となっています。

こうした企業では、資本金、借入金、担保、保証人、事業所など経営資源の相当部分を、創業者個人から提供としているケースが少なくありません。
このような状況に陥った中小企業・小規模企業の事業承継は、非常に複雑となり本来の事業活動にも支障が出ることも少なくありません。そこで、2008年(平成20年)10月に中小企業・小規模企業の経営の承継に伴う諸問題に対応するため、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)」が施行(民法の特例については2009年3月施行)されました。
さらに、2018年には中小企業経営者の平均年齢のピークが69歳になり、中小企業の廃業数もピークを迎えようとしているなか、2018年(平成30年)度の税制改革において、従来の事業承継制を改良した「特例事業承継税制」が創設されました。 この法律は、事業継承がスムーズに行われ、企業が永続的に発展していくことを支援しています。

資産の分割とCRE戦略

中小企業・小規模企業において事業承継対策を行うには、オーナーと企業の間でいかに資産を分割するのかという資産分割の問題が出てきます。
企業経営に必要な資産の中に個人資産が入ってしまっている状況から、オーナーと企業で資産を分割し、資本と経営を分離することが事業承継の第一歩となります。
そのためには企業経営の観点からCRE戦略の一環として、企業が使用しているオーナー個人の資産をオーナーから会社へ売却するなど企業所有に切り替え、資産の継続的利用が可能な状態にしておくことが望ましいでしょう。
また、組織の再編や見直しを通して、新たな法人を設立し、その法人が資産管理を行っていくという手法も考えられます。 事業用として活用しているオーナー個人所有の不動産を企業所有に移管すれば、オーナー個人には金融資産が残りますし、相続税の納税資金としても利用できるでしょう。
個人から移管し企業所有となった資産については、企業経営をサポートし企業価値を高めるための資産として、CRE戦略を実践して適切に管理・運営する必要があります。
たとえば、不動産管理・賃貸部門を資産所有・管理・賃貸会社として事業部門から分離し分社化するなどして、適切なCRE戦略に基づき、事業会社に賃貸することによって、不動産賃貸収入という安定収入を見込むといった手法を取ることも考えられるでしょう。
また、一定の条件に当てはまる事業用の土地・建物を買換えた場合には、譲渡税の課税の繰り延べを受けることができるという「事業用資産の買換特例」などの特例を活用することもできます。土地・建物を買換えることが可能になれば、それによって高い収益も期待することもできるでしょう。

中小企業のM&Aが活性化

中小企業の事業承継に関連した、M&Aも増加しています。日本には歴史の古い企業が数多く存在していますが、多くの老舗企業が、後継者問題を抱えているのが実情です。経営者としては当然、企業の存続が第一になりますので、M&Aによる方法を探るケースが増えています。
M&Aによって事業継承を求めるのは歴史の長い企業によく見られ、そうした企業は不動産資産を保有しているケースが多いからです。
かつては不動産を持っているというだけで融資を受けやすくなるという考え方もありました。土地の値段は下がらないという土地神話に基づいた考え方だったのでしょう。
そのため、今でも古い経営者の中には、不動産を手放したくないと考える人も少なくありません。
しかし、時代が変わり、せっかくの不動産を有効活用できないばかりに、「負の遺産」とされてしまうと、買い手がつきにくくなり、売れたとしても金額が抑えられてしまうでしょう。
M&Aにおいて売却金額は非常に重要な側面ですが、この場合、事業継承が最優先の目的ですから、低い金額で買収されるのを認めざるを得なくなります。
そうならないためにも、早い段階から、CREの有効活用によって企業価値を向上させておくことが、事業継承の観点からも有効な戦略になるといえるでしょう。

不動産資産を有する中小企業・小規模事業者の事業承継にかかわる問題に対して、CRE戦略は非常に有効な手立てのひとつといえるのではないでしょうか。

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