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コラム No.70

CREコラム・トレンド

Eコマースの拡大と宅配便の再配達問題

公開日:2019/2/28

自宅に居ながら買い物ができる通信販売。テレビ通販やインターネットショッピングは、商品を届ける宅配業者の存在が不可欠です。しかし近年は、生活スタイルが多様化して在宅時間と配送のタイミングが合わずに再配達が増加し、ただでさえ深刻な物流業界の人出不足に拍車をかけています。官民含めて喫緊の課題になっている宅配便の再配達について考えてみます。

EC化率5%超え、 宅配個数は3年連続増加

国土交通省が調査した2017年の宅配便取扱実績によると、過去10年間では2009年度と2014年度を除いて、宅配便の取扱個数は毎年増加しています。特にここ3年は連続で増えており、増加ピッチが速まっています。

(図1) 宅配便の取扱個数の推移

出所:国土交通省「平成29年度 宅配便取扱実績について」

宅配便急増の大きな要因は、いうまでもなくインターネットショッピングの普及です。経済産業省が毎年実施する電子商取引(EC取引)の市場規模の推移を見ると、2017年のBtoC-EC取引は16兆円に達し、商取引全体に占める割合(EC化率)は2016年に5%を超えるまでになりました。わが国にインターネットが普及し始めたのは1995年といわれ、大手ECモールが1997年にできました。当初、EC化率は数値化できないほど極小でしたが、高速大容量のインターネット接続が普及し始めた2000年代初頭から一気に上昇。いまやインターネットショッピングは日常生活に不可欠な買い物手段の一つに成長してきました。

(図2)インターネットを利用した商取引市場規模の推移

出所:経済通産省「電子商取引に関する実態調査」

これまでインターネットショッピングは、国内外の大手ECモールやショッピングサイトが普及を後押ししてきました。その後、こうした大手サイトに続いて衣料品を専門に扱うサイトが登場して有名ブランドが出店するようになる一方、メーカー各社が自社のショッピングサイトを次々に開設するようになり、スーパーや百貨店などの流通大手も参戦。ショッピングサイトは百花繚乱の様相を呈してきたのです。

ある有名アパレルメーカーでは、全販売量の10%をEC取引が占めるよう3カ年の中期経営計画に盛り込み、計画どおり3年間で達成しました。こうしたEC化の積極的な取り組みは他業種にも広がり、インターネットショッピングは大手のモールサイトだけでなく、アパレルに限らず、メーカーによるインターネットショッピングが広がっています。

個別の企業におけるインターネットでの直販比率が高まると、商品を購入者に届けるための宅配便は法人単位で増えていくことになります。

再配達の労働コストは年間9万人のドライバーの労働力に相当する

こうした宅配便の急増で、深刻な問題になっているのが再配達の増加です。トラック輸送に頼る宅配便は、CO2排出量の増加という環境問題のほか、物流業界のドライバー不足を助長するものとして重大な社会問題になっています。総務省の「2016年労働力調査」によれば、トラック輸送就業者の約4割が50歳以上で占められており、高齢化が進んでいます。

※ 大手宅配事業者3社の合計数値、期間は10月1日~ 10月31日
国土交通省「宅配便再配達実態調査」より作成

国土交通省では、こうした問題に対応するため「総合物流施策推進プログラム」の中で、宅配便の再配達率の削減目標を2017年度は16%程度、2020年度は13%程度に設定して対策に取り組んでいます。今後、高齢者におけるインターネットの利用普及が進めば、インターネットショッピングの利用はさらに増加し、宅配便の取扱件数もそれに伴って増えるでしょう。約2割にせまる再配達を労働力に換算すると、年間約9万人のドライバーの労働力に相当するといわれており、再配達コストをできるだけ減らして通常配送に振り向けていかなければ、現在の物流システムは維持できなくなる恐れもあります。

建築基準法一部改正で宅配ボックス推進

再配達を減らすための方策としては、次のようなものがあります。

  1. (1)時間帯指定
  2. (2)メールなどのコミュニケーションツール
  3. (3)コンビニ受け取りや駅の宅配ロッカー
  4. (4)宅配ボックス
  5. ―などの活用

2018年9月に建築基準法の一部改正があり、オフィスや商業施設などにも宅配ボックスを設置しやすくなりました。商品の宅配ニーズの増加で普及が進んでいる宅配ボックスについて、建物用途や設置場所にかかわらず、宅配ボックス設置部分を一定の範囲内で容積率規制の対象外とするよう設置規制を緩和したのです。これまでは容積率がネックになって設置することができなかったオフィスビルや商業施設でも宅配便を受け取ることができるようになったことで、再配達の減少に貢献すると思われます。

商業施設などに設置してある宅配ボックスは、大きく分けて暗証番号で施解錠する「機械式(ダイヤル式)」と、操作キーで施解錠するコンピューター制御の「電気式」があります。
個人宅で宅配ボックスを設置する人も増えているようです。簡易型のものならば、大容量のものでも数千円から市販されています。

宅配ロッカーや宅配ボックスは、便利な反面、容量によって入りきらない場合には宅配業者が持ち帰ったりすることもあります。また、ダイヤル式の宅配ボックスで、宅配業者が暗証番号を書き忘れたり、間違えたりして荷物が取り出せなかったというトラブルもあるようです。

2018年11月に国土交通省と経済産業省が共催した「宅配事業とEC事業の生産性向上連絡会」で、再配達削減に向けた取組事例が取り上げられました。それによると、あるEC事業者は東京23区内で1時間単位の配達時間指定を導入。配達当日には30分単位でメールなどによる到着予定時間通知をした結果、サービス利用者の不在率が2%に減少しました。一般的な再配達率が15%~ 20%で推移している現状と比較すると、高い配達率を示しています。
また、宅配業者と不動産会社、宅配ボックス製造業者が協働して新しい宅配システムを開発し、マンション向けに各住戸専用の「玄関前宅配ボックス」を設置。マンション入居者の利便性向上、宅配物の再配達増加を緩和するための取り組みも行われています。
ECは将来的にもさらに発展していく可能性を秘めています。そのためにも、モノの移動を支える物流の改革が必要とされています。

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