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コラム No.80

CREコラム・トレンド

商用化進むか、ドローン物流

公開日:2019/07/31

少子高齢化による社会構造の変化や運転手の人手不足など、物流業界はさまざまな課題を抱えています。こうした課題を解決または改善するため、ドローンを使った物流改革が取り組まれています。

国交省が「ドローン物流」でとりまとめ

インターネット通販の普及に伴う宅配便の急激な増加と、それに反比例した運転手など配送の担い手不足が重なり、物流業界は慢性的な人手不足に陥っています。生産年齢人口は今後一層減少していくとの予想もあり、ドライバー不足は容易に解決しません。
一方、人口減少や少子高齢化、地方の過疎化が一層進み、また地方自治体の財政悪化で住民サービスが低下して、いわゆる買い物弱者を生んでいます。離島や過疎地などの地域で輸配送に従事する物流業者は低い積載率でトラックを走らせており、業務継続は年々厳しくなっています。国は2015年、「早ければ3年以内にドローンを使った荷物配送を可能とすることを目指す」方針を打ち出し、官民一体となった物流の活用に向けた取り組みを推進してきました。そして今年6月、国土交通省の「過疎地域等におけるドローン物流ビジネスモデル検討会」は中間とりまとめを公表しました。

ビジネスモデルの構築が不可欠

「とりまとめ」では、国交省が2018年度に全国5地域で実施した検証実験の結果を踏まえ、 2019年度に数件程度の商業サービス実現にメドをつけるため、ドローン物流ビジネスモデルの構築に関する基本的な考え方を整理。国や地方公共団体による初期段階の支援や地方公共団体による地域課題解決のための継続的支援の重要性を強調しています。
ドローンの商用化に向けた取り組みは、ここ数年実証実験のレベルで進んできました。「とりまとめ」でも、伊那市が進めているケーブルテレビを活用したドローン配送や、秩父市の送電設備上空を空の道として使い、キャンプ場にバーベキュー用品をドローン配送する実験が報告されています。
ただ、ドローン物流が利用者の利便に応え、継続的に展開されていくにはビジネスとして成立することが不可欠です。そのための国の支援措置として、「ドローン機体の購入や操作習熟のための経費を地方自治体も含めて補助すること、また住民に対するサービス向上のため、ドローン配送業者に対して継続的に運航経費を支援する必要がある」と「とりまとめ」は指摘しています。過疎地域でドローン物流が活躍するにしても、業者の側からすれば採算に乗せることが厳しいこと予想されるからです。官民一体を標榜するからには、こうした民間業者への経営的な支援は欠かせません。

検討されている3つのドローン物流事業

検討会における議論で現在ドローンの活用について具体案が検討されています。第2回の議事概要で、(1)災害時物流(2)工場内物流(3)オンライン診療に基づく処方薬配送の3つを検討していることが明らかになっています。

図1:検討が進むドローン物流の事例

集中豪雨や土砂崩れなどの災害時は、道路や橋など交通網が寸断され孤立してしまい、車両による救援物資をすぐに届けることができません。こうした状況では積載重量に限度はあるものの、ドローンは谷間を避けるようにして支援物資を運ぶことが可能です。また、災害によって無人と化した地域に対して避難を呼びかけるスピーカーを搭載したドローンを飛ばすことや、窃盗などの犯罪を防止するためドローンによる空撮で抑止効果を期待することができます。
工場内物流は、物流センターや物品倉庫などでドローンを活用することによって、工場内で低空飛行しバーコードを読み込んで管理作業を効率化することや、軽量の部品・資材の構内移動が見込まれています。
オンライン診療に基づく処方薬配送は、通院や医師・看護師など医療従事者が訪問医療を提供しにくい遠隔地または過疎地域に対して、インターネットを使ったオンライン診療の結果に基づいて処方薬をドローンで配送します。過疎地で通院している人の中には、交通の便が悪いために途中で通院を中断してしまい、病状が進んでしまう例があるといわれています。こうした事例が増えると、結果的に国の医療負担が増すことになります。通院の負担を軽減し、治療を中断しないために、地域の中にヘリポートを設けて、患者がそこで医薬品を受け取ることができる取り組みをしている自治体もあります。

ドローンは現在、さまざまな分野で利活用されています。前人未到の地に飛行して秘境を空撮し視聴者に貴重な映像を届けたり、セスナ機に代わっての農薬散布でも一役買っています。また、山間部や河川などを空撮による定点観測で地形の変化を調査し、天候不順による災害の未然防止のための3次元画像を提供しています。
ただ、課題も少なくありません。ドローン自身が軽量なために運搬できる荷物の重量は限定的ですし、無人で小型であっても航空機の一種で、多くの上空規制がかけられています。自由に飛べるわけではなく、原則150メートル未満の空域に限られます。スマートフォンで気軽に操縦できるので若い世代に人気がありますが、野放図に飛行を許せば事故のもとになります。
しかし、慢性的な労働力不足に悩む物流業界が過疎地域にサービスを提供したり、また都心部でトラックに代わる輸配送手段としてドローンが利活用されれば、業界の課題は軽減されるのは間違いありません。2015年からすでに3年が経過し、国のロードマップよりも遅れ気味ですが、商用化に向けてのインフラ整備が進み、国の支援を含めたビジネスモデルが構築されれば、ドローン物流は徐々に浸透していくのではないでしょうか。

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