コラム vol.097
ケースで学ぶ「土地活用と税金」(1)
賃貸住宅を建てた場合の税務メリット
公開日:2015/11/27
土地活用の選択肢には、賃貸住宅のほか、マンション・オフィスビル・駐車場などがあります。
今回は土地の上に賃貸住宅を建てた場合、どのような税のメリットがあるかについてお話しします。
土地は持っているだけだと、当然ながらキャッシュは生みません。国としても土地の放置はあまり歓迎しておらず、土地の活用を税務面でもバックアップしています。主に土地の上に賃貸住宅を建てることによる、固定資産税の税務メリットを見ていきましょう。
ケース1 固定資産税の税務メリット
東京都内で100平米、市場価格3,000万円の土地を持っていることを想定します。
持っているだけで何もしないと、約25万円の税金が毎年無条件に発生します。
土地の市場価格(公示価格とします)3,000万円 × 7割 = 固定資産税評価額 2,100万円
2,100万円 × 7割(非住宅用地の負担調整措置)= 固定資産税課税標準額 1,470万円
固定資産税 1,470万円 × 税率 1.4% = 約21万円
土地計画税 1,470万円 × 税率 0.3% = 約4万円
合計25万円
となります。
固定資産税の計算はAさんと同様ですが、その土地に賃貸住宅を建てると「住宅用地の特例」という優遇制度が適用されます。具体的には以下のような固定資産税の圧縮がなされます。
小規模住宅用地※ | 一般住宅用地 | |
固定資産税の特例額 | 評価額×1/6 | 評価額×1/3 |
都市計画税の特例 | 評価額×1/3 | 評価額×2/3 |
※住宅敷地で200平米以下の部分
今回のケースだと、小規模住宅用地に該当し、固定資産税は6分の1の5万円、都市計画税は3分の1の2万円、合わせて7万円程度となり、何も建てなかった場合と比べ、18万円の税務対策となります。
※賦課期日(1月1日)において賃貸住宅が建設中の土地は、住宅の敷地とはされず、この特例は使えません。特例は建物が建った翌年度から使えることにご注意ください。
さらに「新築住宅の減額」という制度があります。以下のケースでは、新たに課税される年度から3年度分(マンションなど、3階建て以上の耐火・準耐火建築物は5年度分)の賃貸住宅の固定資産税額(家屋分のみ)が2分の1に減額され、さらに税務メリットが出てきます。
併用住宅の居住部分の床面積が50平米以上280平米以下であること
土地活用の1つの選択肢として、「駐車場」で運用するというのも考えられます。ただし税務上単なる「構築物」であり、住宅のような特例措置がありません。従い、Aさんと同様毎年25万円の固定資産税・都市計画税が発生します。
ケースを通じて、土地の上に賃貸住宅を建てることの税のメリットは理解できました。ではどのような構造の賃貸住宅を建てると、さらに税務対策になるのでしょうか。また、税務対策を最大化する計算方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
ケース2 構造の違いによる税務メリット
賃貸住宅の構造には軽量鉄骨のほか、鉄筋コンクリート(RC)、木造などがあります。
ケース1で触れた土地のうえに、6,000万円の賃貸住宅を建てるものとします。その場合、軽量鉄骨、RCでどのような税の違いがあるのでしょうか。
まず減価償却の違いがあります。減価償却計算における耐用年数は、RCの場合は、47年です。毎年132万円が減価償却として経費が取れます(6,000万円×0.022)。
一方、軽量鉄骨(3mm超~4mm以下)の場合は耐用年数が 27年です。すなわち、毎年228万円を減価償却費として経費が取れることとなります(6,000万円×0.038)。
したがって、耐用年数の短い軽量鉄骨造の賃貸住宅を選ぶほうが、年間約96万円の税務対策となり、税務上はより有利となります。
今回は6,000万円の賃貸住宅を建てるということですが、さらに税務メリットを取るためにはどうすればよいのでしょうか。それは、「賃貸住宅の建築価格を分解し、各内訳ごとに減価償却を行う」というものです。
例えば、6,000万円の賃貸住宅の建築価格の内訳を以下のように想定します。
- ・本体建築工事………3,400万円
- ・電気設備工事………1,000万円
- ・給排水設備工事……800万円
- ・空調設備工事………800万円
先ほど「軽量鉄骨の耐用年数は27年」と言いましたが、これは6,000万円の賃貸住宅を一体として減価償却をする場合のお話です。このように内訳ごとに減価償却を行う場合には、それぞれの内訳ごとに異なった耐用年数を設定することができます。
具体的には、本体建築工事は27年(軽量鉄骨の住宅)、電気設備工事は15年、給排水設備工事は15年、空調設備工事は13年と言った形です。特に注目すべきは、本体より短い耐用年数が付されている電気・水回り・空調の類です。これらは賃貸住宅本体よりも劣化が進みやすく、更新までのタイミングが短いことから、耐用年数も法律により短く制定されています。
内訳ごとに減価償却費を計算すると、
- ・本体建築工事………3,400万円÷27年=126万円
- ・電気設備工事………1,000万円÷15年=67万円
- ・給排水設備工事……800万円÷15年=53万円
- ・空調設備工事………800万円÷13年=61万円
計307万円となります。
先ほどの建物一体で減価償却した場合だと減価償却費は約220万円となっていましたが、こうして内訳ごとに減価償却をすることにより、さらに80万円以上も経費として計上(=税務対策)できることになるのです。
賃貸住宅の家賃に対する税金は、土地のオーナー様にとっては頭の痛い問題です。負担をなるべく抑えるため、「構造」や「減価償却の計算方法」を工夫し、賢く税務対策を行いましょう。
ここでは具体的なケース(年収800万円のBさん)を見ていきましょう。
(構造別の耐用年数の設定や、工事ごとの減価償却計算の詳細については、最寄の税理士にご相談ください。)