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天井高をデザインすれば家はもっと豊かになる「カテドラル効果」を
取り入れた住まいづくり

「天井の高さが、人間の思考を左右する」という話を聞いたことはありますか?
例えば天井が高い空間では創造的な思考が広がりやすく、低い空間では集中力が高まるといわれています。
このような効果を「カテドラル効果」と呼びます。
天井を上手にデザインすれば、仕事に集中できるワークスペースや、多目的リビングなど、
自宅の中で多様な居場所を生み出すことが可能です。

そこで今回は、大和ハウス工業のハウジングマイスター(社内認定)の、
富岡謙一と佐々木喜則が、天井を設計する上で大事にしているポイントをご説明しつつ、
「カテドラル効果」を家づくりに取り入れるコツについて、事例を交えながらご紹介します。

Profile

大和ハウス工業株式会社 南関東支社 住宅設計部
横浜設計課 チーフデザイナー

富岡 謙一

一級建築士、ハウジングマイスター(社内認定)

福島県いわき市生まれ。親戚や父母、祖父母に囲まれ、年下のいとこたちの面倒を見ながら、にぎやかな環境で過ごしてきたことが、設計士としての原点になっている。オフタイムの趣味は料理と旅行。

大和ハウス工業株式会社 南関東支社 住宅設計部
横浜設計課 チーフデザイナー

佐々木 喜則

一級建築士、一級エクステリアプランナー、ハウジングマイスター(社内認定)

大学院卒業後、担当教授の建築家の設計事務所で建築を学ぶ。身近な住まいに興味を持ち、楽しい住まいのあり方を求めて設計活動を行い現在に至る。

天井の高さが人の思考に与える影響
「カテドラル効果」とは?

富岡:天井が高い空間は開放感があり居心地がいいと感じる一方で、天井が低い空間はおこもり感があって落ち着くと感じたことはないでしょうか?このように、天井の高さが人の心理に与える効果を「カテドラル効果」と呼びます。

カテドラルとは「聖堂」という意味で、高い天井を持つ教会の聖堂のような大空間が人に及ぼす効果から、カテドラル効果と呼ばれるようになりました。具体的には高い天井は人に心地よさを感じさせ、長い滞在を促すので、高級ホテルのロビーラウンジやレストラン、大規模マンションのロビー、人がたくさん集まる公共建築などに採用されています。逆に低い天井は集中力・没入感が高まり、短時間の滞在でも満足しやすいことから、1日に多くの人が訪れるファストフード店やカフェなどの飲食店で採用されることが多いですね。

佐々木:そうですね。そのため高い天井はアイデアを考える創造的な作業に向いていて、低い天井は細部を掘り下げる具体的な作業に適しているといわれています。私の経験上、仕事で煮詰まったときに公園に行くとアイデアが浮かぶことがありますが、これも高い天井の効果に通じるものがあるかもしれません。

富岡:私は集中して勉強をしたいとき、天井が低くてダークトーンの内装のカフェを選ぶようにしています。自分にとって落ち着きのある内装が集中力を高めてくれるという理由でそのカフェを選んでいましたが、改めて考えてみると、勉強がはかどるのはカテドラル効果のおかげでしょう。このように、後ほど詳しく触れますが、カテドラル効果はインテリアの色、採光や照明などを組み合わせることで相乗効果を得ることもできます

天井の高低差をつけると豊かな空間になる?

富岡:天井高に関して、興味深い実験データをご紹介します。家づくりにおいては、リビングやダイニングの広さを○帖と床面積で考えがちですが、実際に人が広さを認識するのは“空間の容積感”です。下図は同じ容積の部屋の比較ですが、床面積が狭く天井が高い部屋と、床面積が広く天井が低い部屋では、天井が高い部屋の“容積感”の方が広く感じる、というもの※1。つまり、都市部など敷地面積が限られている土地でも、天井を高くすることで広さを感じる空間を生み出せます。

特に、リビングは家族が長い時間を過ごす場所なので、天井を高く設計したい場所の一つ。光を効果的に取り入れる大開口も合わせて設計すると、さらに心地よさが高まります。科学的にも、自然光を浴びることで幸せを感じるセロトニン(幸せホルモン)を体内で分泌しやすくなります。

佐々木:一方で、書斎や寝室はあえて天井を低くした方が、おこもり感が出て落ち着く空間になります。天井の高い広々とした空間で仕事や勉強をするとあまり集中できませんし、天井の高い寝室で寝るのは落ち着きませんよね。

さらに、天井の低いところから高いところへ、逆に高いところから低いところへと、天井高にメリハリをつけるとカテドラル効果はより強調されます。天井を自在に上げ下げできるのは、戸建住宅のメリットといえるでしょう。

カテドラル効果を取り入れた住まいのアイデア

一般的な住宅の天井高は「2m40cm」が多い中、ダイワハウスのxevoΣ(ジーヴォシグマ)は天井高が「標準2m72cm※2」あり、もともとゆったりとした空間設計となっているのが特徴です。加えて「カテドラル効果」を取り入れて設計することで、より空間に目的を持たせ、視覚的にも豊かな演出をすることができます。ここからは実際の施工事例とともに、設計の工夫によってカテドラル効果を取り入れた空間のアイデアについてご紹介いたします。

事例1. 吹き抜けで天井高を確保:
開放感を演出

佐々木:こちらは3階建てのお宅で2階リビングの一部が大きな吹き抜けになっている事例です。3階からも光を取り込むことで明るさが強調され、天井高を意識しやすいことからより開放感のあるリビングを実現しています。

富岡:さらに、窓を大きく取ることで内と外のつながりが生まれ、室内にいながら屋外にいるような居心地の良さも感じることができます。

事例2-1. 天井高に変化をつける:
ひとつの空間を多目的な場に

佐々木:次は、LDKの天井高を変えた平屋のリビングの事例です。ご友人をたくさん呼んで楽しく過ごすのが好きだというご夫妻のご要望で、キッチン・ダイニングは大きな勾配天井を生かして開放的に、リビングは天井高を抑えて落ち着ける空間に設計されています。扉などで完全に空間を区切るのではなく天井高に変化をつけることで、リビングを広く確保したまま2つの異なる効果を違和感なくつなげることができています。

事例2-2. 天井高に変化をつける:
おこもり感と開放感を兼ね備えた2つのワークスペース

佐々木:こちらは階段周りに対照的な2つのワークスペースを設計した事例です。ワークスペースは天井が低い方が集中できるので、このような階段下のデッドスペースを有効活用できます。階段下は集中空間、スキップフロアは2階まで吹き抜けた開放的な空間を実現しています。

富岡:天井高によって居心地の良さが変わるいい事例ですね。カフェでも集中したいときは天井が低い店の奥まった席、アイデアを考えたいときは外のテラス席などと使い分けるのが効果的なのと同じように、階段下ではお子さまが集中して宿題に取り組み、スキップフロアでは親がのんびりと読書という使い方もできそうですね。

事例3-1. 床面に段差を設ける:
高低差で空間を緩やかに仕切る

佐々木:これまでの事例は直接的な天井の工夫によって開放感やおこもり感を演出するものでしたが、こちらは床面の高さを変えることで天井高に変化をつけ、同じ空間を緩やかに領域分けした事例です。

リビングはロースタイルにして天井を高く、写真奥の書斎スペースは床を上げることによって天井高を制限し集中できる空間をつくっています。

このように、ひとつの空間でも天井や床に変化をつけると趣が変わります。ダイニングテーブルでお子さまが勉強したり、リモートワークをしたりするご家庭であれば、ダイニングの天井を下げたり、床を上げたりするのも一つのアイデアです。

富岡:オープンキッチンの飲食店では、カウンターに座るお客さまと目線が合うよう、キッチンの床を下げることがあります。ご友人を招いて料理を振る舞うことがご趣味のオーナーさまで、座ったゲストと目線が合うようにダイニングの床を一段上げた方もいらっしゃいました。目的や用途に合わせて天井や床の高さを操作すると、暮らしが豊かになりますよね。

事例3-2. 床面に段差を設ける:ロースタイルと低めの窓で落ち着きのある空間に

富岡:床を掘り下げたロースタイルリビングの事例をもう一つご紹介します。ダイワハウスの注文住宅「xevoΣ」の天井高は2m72cm。さらに床を36cm下げたロースタイルリビングを選べば、天井高は3m8cmとなり、こちらの事例もかなりゆとりのある天井高です。しかし、あえて開口部の上部を壁で覆うことで窓から差し込む光を制限し、実際の天井高がもたらす開放感とともに、隠れ家のような落ち着ける雰囲気も両立した事例になっています。

事例4. リビングに通じる天井高を抑える:メリハリのある天井高がリビングの開放感を印象づける

富岡:リビングに通じる玄関の天井に注目した事例です。玄関の天井高を抑え、奥に続くリビングの天井高と差をつくることで、リビングに入ったときの空間の広がりをより知覚しやすく、訪れた人にドラマチックな体験をもたらしてくれます。

佐々木:リビングよりも天井高を下げているとはいっても、一般的な住宅の天井高である2m40cmは確保できているので窮屈感はないですよね。もともとの天井高が高いダイワハウスの住まいではこうした天井高の演出が可能になります。

カテドラル効果を際立たせる
「光」「インテリアマテリアル」の関係

カテドラル効果は天井の高さだけでなく、インテリアの色・素材、採光や照明などによっても相乗効果を狙うことができます。それぞれの要素をいくつかピックアップし、実例とともにポイントをお伝えします。

【色】ダークカラーで
おこもり感を演出

富岡:集中空間を演出するには色も大切な要素です。この事例のように、天井や壁紙をダークトーンにすると、包まれているようなおこもり感を感じることができます。

書斎は天井高を抑えて設計し、窓はそれほど広く取らず、ダウンライトとスポットの照明で集中的な光を設計するケースが多いです。

【採光】地窓で目線を下に誘導し、
落ち着く空間に

富岡:床面に接した低い位置に地窓をつくり、低い目線で光や自然を感じることで、おこもり感を演出した事例です。床の間をやさしく照らす間接照明によって光の重心を下げているのもポイントになっています。

【照明】間接照明で天井を曖昧にする

佐々木:住まいの照明として広く用いられる「シーリングライト」や「ダウンライト」ではなく、天井を照らして反射した光を照明にする間接照明(コーブ照明)を使用することによって、空間に奥行き感を生み出し、実際の天井高よりもさらに高く見せる効果があります。

このように、天井の高さを曖昧にして「その先」があるように見せる手法はいくつかあります。

【インテリアマテリアル】
「その先」を感じさせるルーバー天井

佐々木:天井にあしらった杉材のルーバーがアクセントになっている本事例。こちらも先ほどの事例と同様に、「格子の隙間」を黒くすることによって天井高を曖昧にし、格子の先にも空間が広がっているような奥行きを感じさせることができます。

【軒天】天井とのデザインを統一し、開放感を演出

佐々木:天井と軒天のデザインをつなげて、内と外の境界を曖昧にするのも空間を広げる手法のひとつです。窓を床面から天井いっぱいまで取ることで、視界を遮るものをなくし、縦方向にも横方向にも空間が広がり、開放感を得られます。

富岡:こういった設計をする場合、構造上、窓の上に垂れ壁ができてしまうことは少なくありませんが、ダイワハウスの住宅に採用されているグランフルサッシなら2m72cmの天井高いっぱいまで“窓”にできます。これは当社の強みです。

富岡:間取りを考えるときにはつい「面積」で考えがちですが、先ほどの容積のお話のように、縦方向の「天井高」にもぜひ注目していただきたいと思います。とはいえ、「とにかく天井を高く」すれば良いというわけではなく、空間としてのメリハリが大切です。天井高を操作すれば家はもっと豊かで面白い空間になると思いますよ。

佐々木:家族が集まってくつろげる天井の高いリビング、天井が低く作業に集中できる書斎や隠れ家的な趣味の部屋など、家の中にさまざまな個性を持つ空間があると、おうち時間はもっと楽しくなります。お客さまがどんな過ごし方をしたいかをイメージして、ご要望を我々設計士にお聞かせください。

まとめ

ダイワハウスでは、高い天井のメリットを担保しつつ、目的にかなった天井のデザインが可能です。今回はカテドラル効果に関連する事例を複数ご紹介しましたが、もし「天井高」に興味をお持ちでしたら、ぜひ実際に展示場などを訪れてみてはいかがでしょうか。写真では実感できない「心地よさ」や「開放感」を肌で体感することができますよ。

  • ※1参考:須田 眞史、長澤 泰、西出 和彦「室空問における容積の知覚に関する実験的研究 臥位での 空間の知覚特性に関する研究 その2」(1998)
  • ※2天井高は2m40cm、2m72cm、さらにグランリビングモア(36cmダウン) と折上天井(8cmアップ)を組み合わせることで、最高3m16cm(1階のみ)まで実現(xevoΣの場合)。天井高は間取りや建設地、建築基準法(法令)等により対応できない場合があります。
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