ダイワハウスコンペティション告知ページ
今こそ改めて、他者との深い関わり合いをもつ家を考える。これが今回のテーマです。
「触れる」という言葉は、直接相手に触るという意味を超えて、自分の気持ちを相手に伝えて労りや親愛の情を示すことを内包します。また「触れられる」という言葉には、誰かが自分に気持ちを伝えて繋がる状態になるために、触れてもらえる自分になることを示します。そしてふたつが連続した「触れて触れられる」という状態を住まいで体現すると、どんな家になるでしょうか。それは、自分の歓びだけのために家を考えるのではなく、他者の歓びを自分の歓びにする家といえるでしょう。そして、触れてもらいたいと思われるように、自らが既成概念を取っ払い変わることや、自分とそれ以外の境界が溶け合うように関係性を再構築することにも繋がるはずです。
現在、世界中で新型コロナウイルス感染症の影響が未だ続き、他者との接触が禁じられ、直接対話したり、抱き合い歓びや悲しみを分かち合う機会が極端に減りました。便利なツールが普及したことで、直接会わなくても交流をもてるようになりましたが、効率が優先されると、五感でものを理解したり相手の気持ちを慮ることを忘れてしまいます。そのことを改めて問い、自分と他者との相互の関係性を考えることで、現在の社会や都市の中で家はどうあるべきか、この先の希望を見い出せる家を考えてください。
敷地は架空でもリアルでも自由です。戸建て1棟や、戸建ての集合、併用住宅、リノベーションなど、形式やプログラムは問いませんが、ひとつの家として必要な空間を提案してください。
「触れて触れ合える」という状態をどうとらえたかを定義して、多様な時代のこれからにふさわしい家の提案を期待します。
座談会風景。左から、南川氏、小堀氏、堀部氏、青木氏、平田氏。新型コロナウイルス感染症予防対策を十分に行ったうえで実施した。
建築家 AS
東京藝術大学教授
「触れる」と「触る」がどのように異なっているのかを自分の体験をもとに考えてください。同じ道具を使う行為でも「触る」道具と「触れる」道具ではその意味することが異なります。たとえばのこぎりを使う時、自分の手の延長と意識しているのこぎりは「触れる」ですが、自分とは異なるいわゆる道具の機能だけとすれば「触る」です。「触れる」と「触る」は、自分が他者と、どのような境界で接しているかということに関わると思います。そこを考えた家の提案を期待します。
建築家 堀部安嗣建築設計事務所
京都芸術大学大学院教授
自身の五感と他者の五感を感じざるを得ない言葉が見つかったと思います。それを踏まえてかたちをつくってもらいたい。オンラインやテレワークのよさもありますが、物理的に「触れて触れられる」ことも大事です。その両立を考えてもらいたいと思います。
建築家 平田晃久建築設計事務所
京都大学教授
目に見えなくても、さまざまなかたちで「触れて触れられる」ことがあります。人間同士の「触れて触れられる」の関係を超えて、「触れる」という言葉がもっている、もう少し大きな意味を考えてください。多様な案が出てくることを期待します。
建築家 小堀哲夫建築設計事務所
法政大学教授 梅光学院大学客員教授
コロナによって、手摺りに掴まったり、握手することを躊躇うほど「触る」ことが避けられています。こうした状況下では、「触れる」という言葉がもつ意味を考えさせられますね。「触れて触れられる」は、何かが共鳴していることを感じられて面白い言葉だと思います。魅力的な提案を期待します。
大和ハウス工業 上席執行役員
「触れて触れられる」には、テーマ会議の中で出てきた関わりや高め合うという意味が含まれています。コロナの状況にも繋がるテーマになったと思います。応募者の方がたにはその意図を汲んでもらい、人との関わりを高め合うことを表現してもらいたいと思います。