ダイワハウスコンペティション告知ページ
暮らしの中で、今まで当たり前に使えていた電気がなくなるとどのような楽しい家ができるか。これが今回のテーマです。
現代の家には、あらゆるところに電気が必要です。テレビや冷蔵庫、エアコンや電灯、コンピュータやスマ ートフォン、それらすべて電気を必要とし、それに頼 って暮らしを成り立たせ、家のかたちも決まっているといえます。効率が追求され、情報が溢れることが日常となると、その当たり前から戻れず、五感でものを理解することを忘れ、人間の可能性や自由を失っていることに気がつかずにいるといえるかもしれません。
では、その当たり前に使えた電気を使わない家を考えたら、どのような豊かさが手に入るでしょうか。昼から夜、そして朝を迎える時間の流れに敏感になり、季節や温度の変化とどのように向き合って生きていくかを考えることになったり、家の中では情報から遮断されることで、家族との距離や家の外の他者との関わりが変化するかもしれません。そして電気を使わないことを追求していくと、電気というエネルギーそのものの価値や、それがどこからきて、この先どうなるかということを考えることになるでしょう。
電気がなかった原始的な時代の家に戻るのではありません。不便だから辛いのではなく、ないからこそ得られる歓びをかたちにして、それがこの先の希望になるような提案を求めます。
敷地は架空でもリアルでも自由です。戸建て1棟や、戸建ての集合、併用住宅、リノベーションなど、形式やプログラムは問いませんが、ひとつの家として必要な空間を提案してください。人間の想像力で自由を考えていくきっかけになるような家を考えてください。
座談会風景。左から、八田氏、小堀氏、堀部氏、青木氏、平田氏。新型コロナウイルス感染症予防対策を講じたうえで実施し、撮影時のみマスク・パーテーションを外した。
建築家 AS
東京藝術大学教授
電気がなくなると、時間の流れも時間に対する感覚も変わるでしょう。そうした変化を敏感に感じることで人間の可能性が拡張するようなことが起こっても楽しいのだろうと想像します。夏は冷房がないと暑いかもしれません。でも、どうすればその状況が楽しくなるかを考えてほしい。電気がないことによって、家族の団欒が増えることもあるかもしれません。不便だから辛いというのではなく、電気がないからこその楽しさを生み出す提案に期待しています。
建築家 堀部安嗣建築設計事務所
京都芸術大学大学院教授
今こそ深く考えるべきテーマだと思います。電気がなくなった現代の暮らしは、単に昔の生活に戻るということではありません。それは、今までの当たり前の時間の流れ方を、どうすれば変えることができるのかを考えることだと思います。多様な案が出てくることを期待します。
建築家 平田晃久建築設計事務所
京都大学教授
僕らは今、激動の時代に生きています。しかし、今までの当たり前に引っ張られて、なかなか生き方を変えるのは難しい。そこで、電気がないという思考実験的な条件に向き合い、想像力を働かせることが、これまでの当たり前から解放され、本当の意味で自由になれるきっかけになるのではないでしょうか。私たちが生きる現代も、数百年前の人にとっては、想像し得なかったものだと思います。想像もつかないような暮らしを提案してほしいです。
建築家 小堀哲夫建築設計事務所
法政大学教授
電気という当たり前の存在がなくなった時、人間の感覚や建築のあり方がどう拡張していくかを提示してもらえることを楽しみにしています。このテーマにはエネルギー問題や環境問題など大きな背景がありますが、でもやはり自分ごととして考えてほしいです。現代に生きる自分のリアルな感覚に寄り添い、深く考えてみてください。
大和ハウス工業 上席執行役員
人間はこれまで電気を使って住みやすい空間をつくり上げていくことに尽力してきましたが、それがなくなるということに悲観的になるのではなく、そこに向かってどう挑戦していくのか、どう先に進むのか、ということを示してほしいです。