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多様な人が混ざり合い、
新たな発明がおこる場所を
殿町国際戦略拠点、通称「キングスカイフロント」。羽田空港の南西、多摩川の対岸に位置し、約121,000坪におよぶ広大なこの開発エリアは、ライフサイエンス・環境分野における世界最高水準の研究開発から新産業を創出する、重要拠点として位置付けられている。 「殿町プロジェクト」の舞台となるのは、キングスカイフロントの西端、敷地面積4万6,172.96平方メートル(東京ドーム約1つ分)の「A地区」にあたる場所。かつてそこには企業の工場があり、その撤退後は都市再生機構(UR)が所有。行政主導の構想のもと進む開発の中で、土地の東側が住宅地に隣接するこの場所は、「研究開発だけでなく、まちの賑わいと交流を創出したい」というオーダーのもと開発パートナーが公募で募集されていた。閉鎖的なイメージのある工業地帯を、企業同士、さらには地域に開かれた場所へ。入札の末、大和ハウス工業が、「A地区」の土地を取得。川崎市との連携のもと、工場地帯のイメージを一新するプロジェクト、「殿町プロジェクト」が2014年に幕を開けた。まちびらきまで、10年を要したこのプロジェクト。牽引した営業担当は、社内関係者、行政、地域住民との協議を重ね、まちの構想を主導していく。
A地区(殿町プロジェクト)の全貌
行政が求めるニーズに応えるには、どうすればよいか。多角的な事業展開を活かし、生活利便施設も含めた複合開発こそ、わたしたちのミッションと考え、企画は進んでいく。例えば、長期滞在する研究者が泊まるホテルが必要だ。地域住民の方が活用するカフェやコンビニ、郵便局があったらどうか。このまちに訪れる人と住まう人にとって最適と考える施設や機能を当てはめることで、まちの構想の輪郭ができていった。
研究施設を4棟と、そのいちばん北には使用済プラスチック由来の水素エネルギーを電力として活用する世界初のサステナブルなホテル「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」を設けるプラン。ターミナル駅周辺ではない立地でのホテル誘致は想像以上に難航。そこで営業担当が提示したのが、「羽田空港周辺エリアをブランドの戦略拠点として位置づける」という提案。単なる立地条件の説明にとどまらず、エリアの将来性と企業ブランドの成長戦略を重ね合わせたこの構想に、東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が強い関心を示してくださり、最終的に誘致が実現した。
敷地の北西にあった公園と道を挟んだ向かいにある公園を一直線につなぐプロムナード(遊歩道)も形成し、各研究棟の1階にはコミュニティスペースやショールームをつくった。「オープンイノベーションが生まれるまちづくり」というテーマのもと、元々公園を取り囲んでいたフェンスを取り外すことを発案。行政に掛け合い、撤去することになった。敷地内とその外側との境界線をなくし、誰もが通過できるまちを実現した。
しかし、今回のプロジェクトは研究施設がその中心にある。セキュリティの問題が懸念される中、セキュリティラインを柔軟に3段階もうけることで、「まち」としてあるべき機能を確保。さらには緑豊かな植栽への日射を確保し、建物による圧迫感を抑えるため、下階よりも上階が後ろに下がっている構造(セットバック)を採用。それによって温かな日が差し、通行する人が開放的な雰囲気を感じられるプロムナードを実現した。
セットバック
公園側から見たセンターサークル(中央部円形広場)と研究施設
街区公園のフェンス撤去により敷地がシームレスにつながり、研究施設に憩いをもたらしている
当初、近隣住民の方からあがった「工業団地のように敷地がフェンスで区切られ、各企業がどのような事業をやっているのかわからない」「無機質・無秩序な開発が進んでいくのでは?」という懸念。それがどうだろう。行政や住民からの声を丁寧にヒアリングし、そのオーダーに応えるだけでなく、超えるための提案を行ったことで、今では放課後、公園では子どもたちが遊んでおり、犬の散歩をする人もいる。そのすぐそばには、白い上着を羽織った研究者もいる。そんな多様な人が垣根なく混ざり合うまちこそ、開発当初から描いていたまちの姿だった。
