PROJECT 01

殿町プロジェクト

オープンイノベーションを誘発する、
人の交流が生まれるまちづくり

いとLAB+ プロジェクトストーリーのメインビジュアル

OUTLINE

日本最大級の重化学工業地帯・京浜工業地帯に位置する神奈川県・川崎。世界と日本を結ぶ玄関口である、羽田空港からもほど近い。世界の研究者たちも往来するこの場所に、ライフサイエンス・環境分野における世界最高水準の研究拠点と賑わいが両立したまちが誕生した。営業・設計・施工を大和ハウス工業が一貫して担い、約10年の歳月をかけ完成したまちづくりプロジェクトで大和ハウス工業が生み出したものとは。

PROJECT MEMBER

  • プロフィール写真01

    建築営業

  • プロフィール写真01

    建築設計

  • プロフィール写真01

    建築系施工

01

多様な人が混ざり合い、
新たな発明がおこる場所を

殿町国際戦略拠点、通称「キングスカイフロント」。羽田空港の南西、多摩川の対岸に位置し、約121,000坪におよぶ広大なこの開発エリアは、ライフサイエンス・環境分野における世界最高水準の研究開発から新産業を創出する、重要拠点として位置付けられている。 「殿町プロジェクト」の舞台となるのは、キングスカイフロントの西端、敷地面積4万6,172.96平方メートル(東京ドーム約1つ分)の「A地区」にあたる場所。かつてそこには企業の工場があり、その撤退後は都市再生機構(UR)が所有。行政主導の構想のもと進む開発の中で、土地の東側が住宅地に隣接するこの場所は、「研究開発だけでなく、まちの賑わいと交流を創出したい」というオーダーのもと開発パートナーが公募で募集されていた。閉鎖的なイメージのある工業地帯を、企業同士、さらには地域に開かれた場所へ。入札の末、大和ハウス工業が、「A地区」の土地を取得。川崎市との連携のもと、工場地帯のイメージを一新するプロジェクト、「殿町プロジェクト」が2014年に幕を開けた。まちびらきまで、10年を要したこのプロジェクト。牽引した営業担当は、社内関係者、行政、地域住民との協議を重ね、まちの構想を主導していく。

A地区(殿町プロジェクト)の全貌

行政が求めるニーズに応えるには、どうすればよいか。多角的な事業展開を活かし、生活利便施設も含めた複合開発こそ、わたしたちのミッションと考え、企画は進んでいく。例えば、長期滞在する研究者が泊まるホテルが必要だ。地域住民の方が活用するカフェやコンビニ、郵便局があったらどうか。このまちに訪れる人と住まう人にとって最適と考える施設や機能を当てはめることで、まちの構想の輪郭ができていった。

研究施設を4棟と、そのいちばん北には使用済プラスチック由来の水素エネルギーを電力として活用する世界初のサステナブルなホテル「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」を設けるプラン。ターミナル駅周辺ではない立地でのホテル誘致は想像以上に難航。そこで営業担当が提示したのが、「羽田空港周辺エリアをブランドの戦略拠点として位置づける」という提案。単なる立地条件の説明にとどまらず、エリアの将来性と企業ブランドの成長戦略を重ね合わせたこの構想に、東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が強い関心を示してくださり、最終的に誘致が実現した。

敷地の北西にあった公園と道を挟んだ向かいにある公園を一直線につなぐプロムナード(遊歩道)も形成し、各研究棟の1階にはコミュニティスペースやショールームをつくった。「オープンイノベーションが生まれるまちづくり」というテーマのもと、元々公園を取り囲んでいたフェンスを取り外すことを発案。行政に掛け合い、撤去することになった。敷地内とその外側との境界線をなくし、誰もが通過できるまちを実現した。

しかし、今回のプロジェクトは研究施設がその中心にある。セキュリティの問題が懸念される中、セキュリティラインを柔軟に3段階もうけることで、「まち」としてあるべき機能を確保。さらには緑豊かな植栽への日射を確保し、建物による圧迫感を抑えるため、下階よりも上階が後ろに下がっている構造(セットバック)を採用。それによって温かな日が差し、通行する人が開放的な雰囲気を感じられるプロムナードを実現した。

セットバック

公園側から見たセンターサークル(中央部円形広場)と研究施設

街区公園のフェンス撤去により敷地がシームレスにつながり、研究施設に憩いをもたらしている

当初、近隣住民の方からあがった「工業団地のように敷地がフェンスで区切られ、各企業がどのような事業をやっているのかわからない」「無機質・無秩序な開発が進んでいくのでは?」という懸念。それがどうだろう。行政や住民からの声を丁寧にヒアリングし、そのオーダーに応えるだけでなく、超えるための提案を行ったことで、今では放課後、公園では子どもたちが遊んでおり、犬の散歩をする人もいる。そのすぐそばには、白い上着を羽織った研究者もいる。そんな多様な人が垣根なく混ざり合うまちこそ、開発当初から描いていたまちの姿だった。

02

マーケットがなければつくる。
マーケットメーカーへの挑戦

最大のチャレンジは、特定の企業のために設計する専用ラボのほか、企業や研究者向けに研究専用の区画を貸し出す「レンタルラボ」を含んでいること。そもそも研究所に求められる建物のスペックは、研究する分野によって大きく異なる。半導体なのか、ライフサイエンスなのか、フードテックなのか。廃棄物の処理の重要度が高い研究分野もあれば、実験排水の処理や、高い階高であることが求められる研究分野もある。そんな中、研究分野を限定せずに企業を誘致するにあたりレンタルラボが備えるべきスペック基準の前例が、まだ日本にはなかった。研究施設とは、オーダーメイドで、分野特化が常識。まさにその正反対。まだレンタルラボというマーケットが存在するかどうかも分からない。しかし、ないからやらないのではなく、そもそもマーケットをここからつくっていく。そんな、新しい挑戦がはじまった。
設計にあたり、他社の施設をリスト化・指標化し、目指すべき施設の条件について繰り返し議論を行う日々。ときには、専門分野について専門業者の方を招き勉強会をひらいていただくこともあった。多くの事業者や海外のレンタルラボの誘致活動を行う企業に依頼し、インタビューもかつてないほど行った。そんな地道なノウハウとニーズの積み重ねや、数少ない先行事例をもとに「これが正解だろう」というアウトプットに向けて、手探り状態の中で進んでいった。

4棟あるラボの完成まで、短くない年月を要する。プロジェクトの途中で、設計の担当が変わることもあり得るかもしれない。だからこそ、使用する部材と建物全体のスケールは全て1,500mmの倍数で設定。例えば、外壁の割付も900mmと600mmのパネルの互い違い。サッシも3mごとに必ず目地がくるように設計を行っている。徹底したモジュール化によるルール設定を行うことで、設計する担当者が変わったとしてもまち全体の統一感や完成度が保たれる。そんな狙いがあった。水平性を強調した意匠性の高い外観デザインも、現場ではなく工場でつくったコンクリートのPC版を利用。「建築の工業化」を推進してきた大和ハウス工業のノウハウが活かされた設計になっている。

03

閉ざされた工場から、
日本の成長を担う場所へ

プロジェクト当初はマーケットの有無さえも不透明だったレンタルラボが中核になったまちづくり。今ではマーケットに参入する企業も生まれはじめ、挑戦が間違っていなかったことが証明されつつある。そもそも、今回手掛けているライフサイエンス系の研究は、薬の開発分野で欠かせないもの。人のヘルスケアに関する研究や、薬、医療機器の開発は、人類にとって重要性が高いことは言うまでもなく、レンタルラボの建築を通して、当社にそれに貢献することができた。「儲かるからではなく、世の中の役に立つからやる」。大和ハウス工業創業者の哲学は、こうした挑戦においても生き続けている。今回のプロジェクトを皮切りに、同様の展開を進めているプロジェクトが生まれている。そして、国内だけではなく、国外でもレンタルラボのマーケットを。そんな夢も、現在は芽生えている。

単なるまちづくりにとどまらず、企業間の連携やスタートアップなどを育成する仕組みづくりという、エコシステムの構築まで踏み込んだ今回の挑戦。研究施設を利用する研究者からは「顔の見える研究コミュニティが実現し、設計者の想いが現れた町」という評価もいただいた。これまで塀やフェンスで閉ざされていた場所が、緑豊かでオープンな空間となったことで、近隣住民の方々からの評判も高い。今では近隣住民の散歩コースとなっており、放課後には子どもたちが集まる場所に。休日にはセンターパークにある12mを超えるシンボルツリーのまわりでガーデンウェディングが行われるなど、開発当初には想定していなかった利用も広がっている。

ライフサイエンス分野の企業や大学のラボが集まり、それぞれの資本を活かしてイノベーションを起こしていく。新たなグローバルビジネスが生まれ、日本の成長戦略の一翼を担うようになる。そう遠くない未来、この場所からそんな未来が実現するかもしれない。

殿町スカイランタンフェス

受賞歴

2024年度「グッドデザイン賞」 受賞
(2024年10月)
かたちのある無しにかかわらず、人が何らかの理想や目的を果たすために築いたものごとをデザインと捉え、その質を評価・顕彰する「グッドデザイン賞」を受賞。 凛とした佇まいの町並みと豊かな緑化空間、住宅地域とロジスティクス地域の境界線に近く、住民による持続的な賑わい創出が期待できる点などが評価されました。また、川崎市臨港エリアの新しいシンボルとして、京浜工業地帯の新しい道標となることも期待されています。
「第12回 みどりの社会貢献賞」 受賞
(2024年8月)
企業などにより良好に管理され、市民開放等による地域貢献や生物多様性保全などの環境活動で顕著な功績が認められ、全国の範となる緑地について表彰する「みどりの社会貢献賞」を受賞。敷地内の緑地を有人管理のもと、地域住民にも開放し、イベントなどの利用に供されている点や雨水貯留施設を建物下に設け、緑地空間と相まってグリーンインフラとしての機能を高めていることなどが評価されました。
2023年度「川崎市 都市景観形成協力者表彰」 受賞(2024年3月)
川崎市の都市景観形成に対して理解を寄せ、市の施策に積極的に協力した事業者を顕彰する「川崎市 都市景観形成協力者表彰」を受賞。企業の先進性を表現するデザインと、これまでの工業地帯のイメージを一新し、臨空臨海部の新たな景観の創出に寄与している点が評価されました。
照明学会 2024年「照明施設賞」 受賞
国内各地域における照明利用の水準を高め、照明技術の発展と普及に貢献し得る優秀な業績を顕彰する「照明施設賞」を受賞。町並みが一帯的になるような配灯を計画し、色温度を統一しました。照明でセンターパークとシンボルツリーが存在感を放つよう演出しています。
「SEGES(社会・環境貢献緑化評価システム)」にて「都市のオアシス」に認定(2024年4月)
企業などによって創出された良好な緑地と日頃の活動や取り組みを評価し、企業緑化の価値を見える化する制度「SEGES(社会・環境貢献緑化評価システム)」にて「都市のオアシス」に認定。多摩川河口に近い工場跡地の再開発事業として、構想当初からしっかりと緑地を形成する計画を練って再開発を進めたこと、近隣の都市公園とのつながりを考慮し、地域住民にも開放している点が評価されました。
「名古屋モザイクDESIGN AWARD
2021〈非住宅部門〉」 銀賞受賞(2021年10月)
2021年、「殿町プロジェクト」完成に先立ち、竣工していた「殿町プロジェクト」内の研究施設が集積するレンタルラボ「Research Gate Building TONOMACHI -3-」が「名古屋モザイクDESIGN AWARD 2021〈非住宅部門〉」で銀賞を受賞。レンタルラボとしての機能にふさわしい先端性、清潔感、信頼感、品格を床や壁に用いたタイルで表現し、研究者同士のコニュニケーションスペースも創出しています。家具や植栽とも調和しながら、人間味のある研究施設となっている点も評価されました。

アート

アートによって研究者・化学者へさまざまな言葉を投げかけています。

ここが国家戦略特区でありライフサイエンスの最先端集約地である説明文になっています。1周で3回説明文を繰り返しています。

ミストが出ると御影石のショットブラスト仕上げが濡れて色が濃くなることにより磨き仕上げの文字が隠れるような仕組みとしています。

ENTRY

夢は、見るものじゃない。
夢は、叶えるものだ。
考えながら走り続け、
大きな夢をかたちに。