PROJECT 03

応急仮設住宅の自動配置プログラム

災害時の不安を、
ひとつでも、一秒でもなくす

プロジェクトストーリー03 メインイメージ

OUTLINE

災害大国、日本。災害によって住まいを失った被災者に、早期に安定した住まいの提供を実現する。大和ハウス工業は、プレハブ建築協会会員企業の一員として応急仮設住宅の早期供給に携わってきた。その中で2018年より、当社・大和リース株式会社・熊本大学の3者で応急仮設住宅の早期提供を目指した「応急仮設住宅の自動配置プログラム」の開発に着手。机上の研究に留まらず、研究開始後に発生した災害ではすでに実際の現場へ導入。大和ハウス工業の手によって、被災後の住宅供給のフローが大幅に短縮され始めている。

PROJECT MEMBER

技術本部技術戦略部

01

被災地に、一刻も早い住まいの提供を目指して

伊勢湾台風時のパイプハウス仮設住宅

創業以来、建築の工業化を推進する大和ハウス工業。創業商品である「パイプハウス」は、その名の通り鉄パイプ(鋼管) でつくられた仮設建築。そうしたルーツを持つ企業として、応急仮設住宅は当社だけでなく大和ハウスグループとして脈々と取り組んできたテーマでもある。「儲かるからではなく、世の中の役に立つからやる」という創業者の想いを受け継ぎ、被災された方にいち早く住まいをご提供する。何にも勝る優先事項として、今日まで取り組んできた分野のひとつだ。2018年に始まった今回のプロジェクトは、当社と熊本大学、大和リース株式会社との3者共同研究により、BIM※1(Building Information Modeling)を活用して供給プロセス全体の高速化・高品質化を目指す挑戦。従来、2次元のCAD※2図面で行っていた配置計画を3次元モデル(BIM)へと転換することによって、災害発生時の用地選定や配置検討の大幅な時間短縮の実現が期待できる。

これまで一般的だったCADは、言わば線と文字だけを使って図面をつくっていくもの。ところが、何か変更が発生した場合には、ひとつひとつ描き直すロスタイムが発生する。一方BIMを使用することで、変更が生じた際にも3Dモデルを移動するだけとなり、作業スピードが飛躍的に向上する。そもそものベース案をつくる際にも、敷地に対して複数の用途、サイズの建物をどのように配置するのが適切か自動で算出する自動配置プログラムによって初期案の提示が早くなり、3Dモデルでの提示が可能に。行政の方もイメージがしやすくなることで、打ち合わせの回数も少なくなり、合意決定のプロセス短縮への貢献が期待できる。

※1 BIM:建物の形状情報を3Dで可視化し、そこに部材の仕様や管理情報といった属性データを内蔵できるツール

※2 CAD:手描きの作図や手作業による製図技術をデジタルファーストのプロセスに置き換え、設計図書や技術図書の作成に伴う手作業での作図を自動化することができるツール

02

生まれた成果と、一秒を縮めるための研究

共同研究をスタートした1年後に発生した、令和元年東日本台風では、自動配置プログラムを初導入し応急仮設住宅の配置計画を実施。従来から大幅に期間を短縮した2日間での配置承認取得に成功。行政の方からは「こんなに早く上がってくるとは思わなかった」と驚きの声が上がった。

しかし、全てがうまくいっていたわけではない。例えば、一般的に配置計画を行うにあたり、測量会社に依頼し、土地の勾配などのデータを算出。それに基づいて配置計画を進めていく。しかし災害時は、一刻一秒を争い、そのステップを挟んでいる余裕がない。その中でも、正確な配置計画をするにはどうすれば良いか検討を重ね、その後も継続的にプログラムの改良とデータ整備を実施。敷地測量技術の検証や建物の図面作成の自動化も共同研究テーマとして、配置計画前後のプロセス改善にも着手。遠隔で応急仮設住宅の計画を支援するバーチャルトレーニングも実施し、災害発生に備えた支援体制の構築を模索してきた。共同研究のスタート時に研究室の学生リーダーを務めていたメンバーは、卒業後そのまま大和ハウス工業に入社。現在では、プロジェクトの中核を担っている。

そもそも、BIMの活用において大和ハウス工業は決して早い方ではなかった。しかし、現場からの声も吸い上げながら全物件のBIM化をわずか2年で達成。このようなスピード感ある推進により、大和ハウス工業は現在、BIM活用における先進的な取り組みを行う企業の一つとして位置づけられている。

BIM活用による応急仮設住宅の早期提供に関する取り組みの全体像

A

デジタル測量技術の検証と敷地モデル作成の検討

令和元年東日本台風発生に伴う建設型応急仮設住宅の配置計画に応急仮設住宅の自動配置ブログラムを初導入した。
通常7日程度かかる配置計画を2日で実施・承認取得まで達成し、プログラムの効果を確かめることができた。
それと同時に、当時時点のプログラムを実運用する場合の課題を把握することができた。

配置承認時に作成した3Dモデル

竣工後の仮設団地写真

B

デジタル測量技術の検証と敷地モデル作成の検討

デジタル測量機器で計測した敷地データを3Dモデルに変換する技術検証を行った。

C

詳細図面の自動作成と数量拾いの自動化

配置計画で作成した3Dモデルを基に連棟の図面や部材数を自動算出するプログラムの開発を行った。

詳細な配置モデル

部材数量の自動算出

D

テンプレートデータの整備とプログラムの改良検討

災害発生時に即座に対応できるように、必要なBIM部品データ整備やテンプレートデータの整備を行った。それと同時に、実運用で見えた課題の解決・操作性の向上・追加機能の開発(設計案を評価する機能の開発等)に取り組み、プログラムの精度向上と機能拡張に取り組んだ。

E

バーチャルトレーニングの実施

自動配置プログラムを用いた迅速な配置計画を行える人材育成に加えて、大規模災害が発生したときに同時多発的な応急仮設住宅団地計画の要請に対応できるように、遠隔地の配置計画支援を想定したバーチャルトレーニングを実施した。

バーチャルトレーニングの様子
(共同研究)

F

2024年能登半島地震発生時の復興対応

阪神・淡路大震災および2004年の新潟県中越地震における被災地支援活動の経験を踏まえ、2006年、当社は応急仮設住宅建設を迅速かつ円滑に対応するために、グループ連携で応急仮設住宅建設検討委員会「DASHプロジェクト」を発足させ、応急仮設住宅建設マニュアルを制定した。

2024年1月1日に起きた令和6年能登半島地震では、地震発生から1時間で災害対策初動本部を設置。東日本大震災や熊本地震を経験した社員も多かったが、今回の地震では土砂崩れで道路が使えなくなったことから、移動や輸送に非常に時間がかかった。宿泊先から現場に向かうのにも片道3~4時間かかり、資材の納入だけでなく、技能者の宿泊先の確保も大きな課題となった。63名の社員、協力会社123社の約4,000名が全国から駆け付け、厳しい現場環境の中、復興に尽力した。

当社は災害発生時にいち早く復旧・復興支援にあたるため、2012年より毎年、「DASHプロジェクト」の一環として今後起こりうる大規模災害を想定した「応急仮設住宅建設机上訓練」を大和リース、大和物流、デザインアーク、大和ライフネクストと合同で実施。万一の災害にも対応できるよう備えている。

※DASHプロジェクト

  • D = Daiwa House Group
  • A = Action
  • S = Speedy&Safety
  • H = Heart full

大規模災害発生に伴う応急仮設住宅建設時に、大和ハウスグループ一体となって本部長指示のもと指導するプロジェクト。

当社グループの
主な応急仮設住宅建設実績

2004年新潟県中越地震1058戸
2007年能登半島地震102戸
2007年新潟県中越沖地震339戸
2011年東日本大震災11051戸
2011年平成23年台風12号災書75戸
2016年熊本地震1026戸
2024年令和6年能登半島地震1268戸

阪神・淡路大震災での応急仮設住宅(兵庫県加古川市)

副社長の村田、執行役員の松葉、執行役員の菊池が建設現場を訪問(2024.4.13)

03

いつかの備えを、いち早く

おそらくそう遠くない未来、日本は南海トラフ地震に見舞われる可能性が高く、さらなる精度向上は不可欠だ。イギリスやオーストラリアといった国々は、労働人口の減少を見越して、国策によってBIMの活用を進めている。戦争による難民に、いち早く応急仮設住宅を供給した事例もあがっている。そうした国々と、積極的な技術交流を行うことで、技術の精度を高め、将来的には日本の建築技術を輸出する。それが、大和ハウス工業の今後の夢のひとつだ。

応急仮設住宅の自動配置プログラムにおいては、現状実現できているのは、工程における川上の部分のみ。共同研究の枠組みで、詳細な図面を描くことにも取りかかり始めている段階。工業化技術にデジタル技術を掛け算することで、供給におけるトータルのリードタイムを短縮していく。震災は、いつ起こるかは分からない。だからこそ、開発に悠長なことは言ってられない。日本に住むすべての人が、有事の時も「住」に不安を抱えることがないように。そして、日本を超えて、世界からもその不安を少しでも早く無くせるように。いつか必ず起こるその時のために。研究はこれからも続いていく。

大和ハウス工業の技術について

ENTRY

夢は、見るものじゃない。
夢は、叶えるものだ。
考えながら走り続け、
大きな夢をかたちに。