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コラム No.130-1

CREコラム

不動産DX入門(1)DXとは何か

公開日:2022/04/28

産業界で今最も関心の高いテーマは、DX(デジタルトランスフォーメーション)でしょう。デジタル化やシステム刷新を切り口にした抜本的な経営戦略として位置づけられ、コロナ禍でリモートワークが増加したこともあって、導入機運が加速しています。今回から、不動産業界におけるDXについて連載していきます。

旧来システムのブラックボックス化が背景に

DXは今、業界業種を超えた共通の経営課題になっています。その理由のひとつに「旧来システムのブラックボックス化」が挙げられます。
例えば、銀行業界では1970年代後半から80年代にかけて、個人・法人ともに利用者が増えました。このため口座数が急増して事務処理が追い付かなくなり、コンピュータ化が加速しました。
利用者の裾野が広がると同時に新規の業務も増えていき、それに対応したシステムを導入してオンライン化を進めました。しかし、新たな事業が開始されるたびに急こしらえのシステムを構築したために、全体として継ぎはぎだらけのシステム構築になりました。システム構築を担うITベンダーは、クライアント企業の求めに応じるがあまり、個別のカスタマイズが増加。そうしてシステムが肥大化、複雑化する一方、システムに詳しい担当者が大量に退職するなど技術の継承者が減少し、巨大で陳腐化したシステムが残ってしまいました。

ITはさらに進展し「Windows®」などが登場、業務システムは「汎用機」と呼ばれる大型コンピュータの時代からオープン系システム、さらにクラウドの時代に入ってきました。こうしたシステムの変遷は、どの業界でも等しく起きていました。
こうなると、長期間使用してきた業務システムを維持・再構築するかに関わらず多額のシステム経費がかかり、経営を圧迫することになりました。

  • ※属人的な運用、保守状態のため、障害が発生しても原因がすぐにわからない、また、再構築したくとも現行システムの仕様が再現できない状況

2025年の崖とは?

経済産業省は2018年9月、「ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開」の副題を付けたDXレポートを発表しました。DXという言葉は欧州で2004年頃に登場したといわれていますが、わが国では経産省のレポートで知られるようになりました。
DXを語るとき必ず出てくるのが、経産省レポートに出てくる「2025年の崖」のフレーズです。導入後20年以上が経過した基幹系システムが全体の6割を超え、IT人材の不足が深刻になる一方、Windows®など従来からのITサービスがサポートを終了したり、5Gなどのデジタル新技術の波が押し寄せてくる状況で、レガシー(旧来)システムの刷新ができなければ、国内の産業界では2025年以降、最大12兆円の損失が発生する、という予測を指します。

DXレポートでは、既存のITシステムが技術面での老朽化を迎えると共に、システムの肥大化・複雑化、ブラックボックス化などの問題が経営戦略、事業戦略の足かせ、高コスト構造の原因となっており、戦略的なICT投資つまりDXの推進に水を差している。そして蓄積しているデータを最大限利用し、新たなデジタル技術を導入できるようにシステム再構築を図るべき、とDXの推進を説いています。

図1:ITシステム「2025年の崖」とは何か

DXのキモは効率と顧客サービスの改善

DXに関する記事や書籍を数多く見かけるようになりました。システム刷新を契機にした経営改革という「鳴り物入り」の戦略ですが、大上段に構える必要はないと思われます。その狙いは、企業内部においては業務の効率化、利用者に対しては顧客サービスの向上。つまり業務効率と顧客サービスの改善、この2点に尽きるといっても過言ではありません。ただし、この経営テーマを遂行するための「仕掛け」を求めるのがDXです。そこが、今日まで登場しては忘れ去られたシステム戦略や経営戦略と少し異なる点ではないでしょうか。

システム化によって業務を効率化し、それまで割いていた人員を営業部門など他のセクションに振り向けて業績向上を推進するのは、ごく普通の戦術です。経営トップもそのことは理解しています。しかし「ITを使ってやってみろ」など漠然とした物言いになり、システム再構築を通じた経営改革は掛け声倒れに終わったケースも少なくありません。またITベンダーにシステム構築を丸投げしたために作業の進捗がつかめず、システム稼働が大幅に遅れて経費が想定以上にかかり、経営を圧迫したケースも少なくありませんでした。こうした過去の失敗体験をもとに、DX推進においては経営ビジョンを明らかにし、経営者自らが積極的に関与することを求めます。そして推進体制を整備し、デジタル化すべき業務を洗い出したうえでシステム投資の優先順位を決めます。
(1)経営ビジョン、(2)経営トップの積極関与、(3)推進体制、(4)投資判断と優先順位、これらがDXを遂行するための「仕掛け」です。

図2:DX推進ガイドラインの構成

出典:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドラインDX推進ガイドライン」(2018年12月)

DXによって何を実現させたいのか、を決めておくことも重要です。デジタル技術は日進月歩。今は無理でも将来実現する可能性があります。
ロケットを作って宇宙に行くのではなく、宇宙に行きたいからロケットを作る。技術があるからやり方を変えるのではなく、やりたいことを決めて実現できるよう工夫することが肝要ではないでしょうか。

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