土地活用ラボ for Biz

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コラム No.38-3

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「空き家問題の解決は地域の活性化を生む」(3)古民家を商業施設としてリノベーションし、地域を活性化

公開日:2017/12/25

人口の増減が、ある程度は安定している都市部などにおいては、空き家をリノベーションすることにより、住居として再生する取り組みが少しずつ増えているようです。
しかし、人口が減少し高齢化が進んでいる地方部にあっては、住宅の需要そのものが縮小していますので、住宅として再生するニーズはそれほど高くはないでしょう。一方で地方には、現代の生活様式には少し不向きな古民家や、小規模な武家屋敷などが数多く残されています。これらの物件を、住宅としてではなく、趣のある店舗や飲食店として活用し、地域のまちづくりを進めている事例があります。

古民家や武家屋敷を店舗にリノベーションして地域を活性化する

鹿児島県日置市は薩摩半島の中央部にあり、東は鹿児島市と接し、西は日本三大砂丘の一つ、吹上浜の砂浜が東シナ海を望んでいます。この地域は、薩摩焼の郷ともいわれ、古くから陶器づくりが盛んな地でもあり、芋焼酎の蔵元も多く残っています。
また江戸時代には、普段は農業を営んでいる在郷の武士達の里でもあったといわれ、街道沿いには、どっしりとした趣のある古民家や武家屋敷が点在しています。
この日置市では今、空き家や古民家を再生し、地域の活性化につなげる「ひおき古民家遊楽里(ゆらり)めぐり」と称した事業を展開し、成功事例として注目を浴びています。日置市商工会が作成したパンフレット「ひおき古民家遊楽里めぐり」には、市内の空き家や古民家を再利用した飲食店やカフェ、雑貨店を中心に60店舗以上が紹介されています。
画家である店主の油絵や婦人の陶器が飾られ、レモンや梅などの手づくりジャムなども販売しているカフェ「風木野陶(ふきのとう)」、地元伊作温泉周辺の黒い土を使った「いざく湯の華焼」を制作・販売している「松韻窯(しょういんがま)」、古布や和布・ちりめんなどを使った小物、タペストリーなど手作り品の店「野布(やふ)のさと」や「心ここちあん地庵」、赤や青など新しい色合いの薩摩焼を制作・販売する「陽窯(ようよう)」、元別荘をリノベーションしたバンガロー風のレストラン「空ノ間テラス」、築150年の古民家をリノベーションした家庭的なレストラン「ひる膳多宝庵(たほうあん)」など、古民家を改装し、地域の名産品や食材などを使った趣のある店が並んでいます。

古民家を改装して、女性目線のレストランを開業

ひる膳 多宝庵」の店舗は、150年の時を刻んだ小ぶりな武家屋敷です。主婦であった店主が事業を始めたきっかけは、介護のために母屋横の小屋を解体し、バリアフリー住宅を新築したときでした。残った古民家を今後どうするか、家族で迷ったといいます。見事な梁や柱などの貴重な材木、先人の大工仕事の技など、子孫に伝えていきたいという想いがあったそうです。そして、食べ歩きが好きだった彼女が思いついたのが、この古民家を多くの方々に見ていただき、器や音楽、素朴な家庭料理を提供し、「見て・聴いて・味わう」空間で癒しを添えたおもてなしをする、飲食店舗として改造することでした。そこで、自治体や商工会から資金面・経営面の支援を受けて、武家屋敷の趣を残したまま母屋をレストランにリノベーションしたのです。
現在、「ひる膳 多宝庵」は、40食限定の昼食コース料理のみと小規模ながら、地元の女性を中心に支持されて、連日満席状態だそうです。
空き家を利活用するきっかけは、所有者や地域によってさまざまですが、底流には、地域の伝統文化を愛する住民の方々の、まちづくりへの想いがあります。そして、これらの取り組みによって、地域での生き方・暮らし方、特に女性や若者が活躍する新しい地方文化の在り方が見えるような気がします。空き家となって取り壊される運命であった古民家を再生し、新たな地域の名所となり、来街する人々に価値のある空間を提供する取り組みは、地域活性化の成功事例として、他地域にとっても参考となるでしょう。

リノベーション(リフォーム含む)市場の現状と課題

国土交通省「世帯数及び住宅戸数の推移」によれば、1世帯あたりの戸数は年々増加し、平成25年では1.16戸(居住世帯のない住宅を差し引くと0.99戸)となっており、世帯数に対する住宅のストックは、ほぼ充足しているようです。しかし、日本における流通住宅全体に占める既存取引住宅戸数は約14.7%であり、80%程度である欧米に比べて低い水準となっています。このことからも、中古住宅ストックの利活用が、今後の課題であることが分かります。
それでは、リノベーション市場はどうかというと、住宅着工統計上「新設住宅」に計上される「増築・改築工事」および「設備等の修繕維持費」(リフォーム)の市場規模は約6兆円で、そのうち、「設備の修繕維持費」が約9割を占め、「増築・改築工事」は1割程度となっており、今後も横ばいで推移するのではないかといわれています。
リノベーション市場が、なかなか拡大しない原因としては、(1)リノベーション対象の構造や設備が多様で施主のニーズが千差万別である、(2)個々の事業ロットが小さいため新築に比べ費用が割高となる、(3)施主にとって費用対効果が事前に見えにくい、(4)改修施工の段階で現場の状況に応じた判断や施工が必要となり事前に費用見積りが難しい、(5)施工の工法や仕上がり品質が施工する職人に依存する、(6)設計通りに組み上げる新築工事と違い施工方法や使用する設備・材料などの幅広い専門的知識が必要である、などが一般的に挙げられています。
とはいえ、先にご紹介した空き家化が懸念される古民家に地域住民が年代の価値を見い出し、住宅としてではなく店舗など商業目的でリノベーションし、地域色を大切にしたまちづくりを進める取り組みは、空き家の利活用による地域の活性化の一つの方向性を示していると思います。
また、その取り組みの中で、地域によるリノベーション技術の蓄積や職人の育成が進めば、貴重な地域資源の掘り起こしにもつながっていくのではないでしょうか。

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