サプライチェーン
「総合物流施策推進プログラム」が2019年3月に改訂(1) サプライチェーン効率化のために付加価値を生む物流へ
公開日:2019/08/30
2017年7月に閣議決定された、「総合物流施策大綱」に基づいて具体的施策を取りまとめた「総合物流施策推進プログラム」について、その進捗と振り返りとして、2019年3月に改訂版が発表されました。
参考:「総合物流施策推進プログラム(平成31年3月28日改訂版)」(国土交通省 物流政策課、国土交通省 道路局企画課道路経済調査室、経済産業省 商務・サービスグループ物流企画室)
総合物流施策推進プログラムは2017年に、総合的な物流業務において、「(1)サプライチェーン全体の効率化・価値創造のために付加価値を生み出す物流への変革(=繋がる)~競争から共創へ~」「(2)物流の透明化・効率化とそれを通じた働き方改革の実現(=見える)」「(3)ストック効果発現等のインフラの機能強化による効率的な物流の実現(=支える)~ハードインフラ・ソフトインフラ一体となった社会インフラとしての機能向上~」「(4)災害等のリスク・地球環境問題に対応するサステイナブルな物流の構築(=備える)」「(5)新技術(IoT、BD[ビッグデータ]、AI等)の活用による“物流革命”(=革命的に変化する)」「(6)人材の確保・育成、物流への理解を深めるための国民への啓発活動等(=育てる)」という6つの視点から、2割の生産性向上を目標に、99の施策としてまとめられたもので、2019年にこの施策についての見直し、施策の追加が行われました。
生産性の向上には、まず、サプライチェーン全体での見直しが必要です。「(1)サプライチェーン全体の効率化・価値創造」の分野でもいくつかの新規の施策、拡充が提唱されています。
2017年時のテーマとしては、
・荷主、物流事業者の事業間連携
・RFID 利用拡大等の環境整備
・モーダルシフトの促進
・コールドチェーン物流サービス等の国際標準化
・農林水産物・食品の輸出促進のための物流の取り組み
などが挙げられ、これらによって付加価値を生み出す物流への変革を目指すとしていましたが、今回の改訂では、さらにこうした施策にドライブをかける内容となっており、具体的な数値目標も改訂されました。
ポイントとなる部分を紹介します。
(1)事業者間連携等による物流生産性向上の推進
まず、国土交通省から、さらなる事業者間の連携によって、ドライバー不足、荷物の小口化などに対応するため、荷主・事業者が連携して、物量の平準化、荷姿・データ仕様の標準化が提唱されています。
また、国土交通省・経済産業省・環境省・農林水産省が共同して、「物流総合効率化法」の枠組みの中で、流通業務の効率化を図る事業に対する計画の認定、複数の物流事業者・物流施設による荷物情報共有システムの構築・改修の支援、モーダルシフト促進のための支援など、共同輸配送促進のための支援を実施するとしています。
具体的な数値目標として、輸送モード別積載効率(トラック)2016年度 39.9% → 2020年度 50%、物流総合効率化法による認定件数(輸配送の共同化)を2016 年度 3件 → 2020年度 100件、を掲げています。
(2)スマートサプライチェーンの構築のための環境整備
次に、ICTの積極的な導入も含め、効率的なサプライチェーンの構築にも新規施策が挙げられています。経済産業省からは、2025年までにコンビニの全ての取扱商品に電子タグ(RFID)を貼付することが挙げられており、2025年には、推計1,000億枚/年等の商品管理を目指すとしています。これに伴い、屋外での使用などの使用環境の多様化に向けた対応を進めるとしています。
また、農林水産省からは、「農林水産物・食品の物流効率化・高度化の促進」として、農林水産物・食品流通での物流の効率化・高度化を実現するため、生産者、流通事業者、物流事業者等の関係者が連携した一貫パレチゼーション(パレット積みのまま発送から到着の荷卸しまで一貫して輸送する方式)の取組や、共同配送、モーダルシフト、ICTを活用したトラック予約受付システムの導入等を促進するとしています。これらによって、手待ち・荷役作業等を2017年に対し、2020年度は30%削減するという目標を掲げています。
(3)海外における物流のシームレス化の推進
物流の生産性向上には、当然海外へも目を向ける必要があります。国土交通省からは、日中韓物流大臣会合の枠組みのなかで、日中韓及びASEAN諸国における物流資機材の標準化・リターナブル化を推進するとし、農林水産省からは、日本の高品質なコールドチェーン物流サービス等の国際標準化や農林水産物・食品の輸出促進のための物流面での取組等を推進することで、高い付加価値を生み出す物流への変革を実現するとしています。
サプライチェーン全体の効率化には、ICTを中心とした技術革新が欠かせません。しかし、全体としての改革には、国・荷主・事業者・消費者が一体となって推進していく必要があります。物流自体に価値を生み出すという国内での取り組みは海外におけるビジネスの拡大にもつながりますので、これら施策の結果に期待が高まっています。