人間よりも体温調節が苦手な犬には
適切な温度・湿度に環境を調整してあげる必要があります。
夏場の暑さや冬場の寒さが厳しい時期は、室内で留守番をしている愛犬を心配して
エアコンをつけっぱなしにする家庭も少なくないでしょう。
ここでは、エアコンをつけっぱなしにすると電気代がどれくらいになるのか、
すぐにできる暑さ・寒さ対策の方法や、光熱費を削減する家づくりの工夫などを解説。
飼い主と愛犬が健康で快適に暮らすためのヒントも紹介します。
-
Part1
犬がいると
エアコンはつけっぱなし?
最適な温度は? -
Part2
愛犬のためにエアコンを
つけっぱなしにすると、
電気代の月額はいくら? -
Part3
エアコン以外の、
愛犬を守る暑さ・
寒さ対策とは?
Part1犬がいるとエアコンはつけっぱなし?最適な温度は?

犬は汗腺が肉球や鼻先などにしかなく、汗で体温を発散しにくいため、特に暑さには注意が必要です。原産国、体の構造、被毛の状態など、犬種により暑さ・寒さへの強さが異なるため、ちょうど良い室温に調整してあげましょう。
基本的にエアコンはつけっぱなし
近年の年平均気温の上昇は、人間だけでなく愛犬の体調にも影響を与えます。人間よりも暑さに弱い犬は、室内であっても熱中症に注意しましょう。日差しが直接当たらないようにする、水分補給を頻繁に行うなどの対策に加えて、家族が不在のときも、留守番をしている愛犬のために、エアコンで冷房を効かせておくことが望ましいです。
また、サーキュレーターや扇風機を活用して、空気を循環させると、部屋の温度を効果的に調整することができます。空調の温度ムラをなるべくなくして、愛犬の居場所が快適な状態になっているか室温計で確かめながら、エアコンの設定温度を合わせると良いでしょう。

季節ごとの設定温度の目安
夏:25〜27℃
室温が28℃以上になると、犬の体調に与える影響が大きくなり、熱中症のリスクも高まるといわれています。上記の温度は目安ですので、特に暑さに弱いといわれる短頭種や被毛が密な犬種のほか、子犬、シニア犬など年齢でも適切な室温は異なります。また、エアコンの除湿機能で、湿度40〜60%に保つと、より快適に過ごせます。

冬:18〜20℃
一般的に犬は寒さに強いといわれますが、短毛種や小型犬、シニア犬などは暖房の効きが弱いと体温を維持できなくなるため注意が必要です。暖かい空気は上へ、冷たい空気は下へ集まるため、エアコンの空調効率を高めるようシーリングファンで空気を対流させたり、ヒーターなどの補助暖房、マットや毛布で調整したりします。呼吸器に負担をかけないよう、加湿器などで冬場も湿度40〜60%を保つようにしましょう。
また、春と秋については、朝晩と日中や、暖かい日と寒い日の、寒暖差が大きいため、エアコンの設定温度は24℃前後を基準に、気温に合わせて調整しましょう。
※部屋の広さやエアコンの状態などによって、設定温度と室温に差が生じる場合があります。暑いと感じる場合は、設定温度を低めに、寒いと感じる場合は、設定温度を高めに設定するなどしましょう。
犬種ごとの設定温度の目安
短頭種(パグ、フレンチブルドッグなど)
夏であれば25℃前後、冬であれば20℃くらいの低めの設定温度が安心。鼻先の短い愛らしい顔つきをした犬種を「短頭種」と呼びます。これらの犬は、鼻腔の狭さや気管などの構造により、呼吸がしにくくなる傾向があり、体温の調節が苦手で暑さに弱いのが特徴です。熱中症にもなりやすいといわれており、犬の呼吸の状態に注意して、特に室温の管理に気を付ける必要があります。

パグ
長毛種・ダブルコートの犬
(柴犬、ゴールデンレトリバーなど)
犬種により異なりますが、19〜25℃を目安に設定温度を調整。「長毛種」とはその名の通り被毛の長い犬種で、「ダブルコート」とはオーバーコート(外側の毛)と、アンダーコート(内側の毛)の2層構造の被毛がある犬種のことです。寒冷地や四季のある地域にルーツを持つ犬種で、寒さには比較的強い一方、暑さには弱い傾向があります。

柴犬
短毛種・シングルコートの犬
(チワワ、トイプードルなど)
20〜25℃を目安に設定温度を調整。「短毛種」とは被毛の長さが3cm前後の犬種で、「シングルコート」とは被毛がオーバーコートのみの犬種です。保温力があるアンダーコートの毛がないことで、シングルコートの犬種は寒さに弱い一方で、暑さには強い傾向があります。ちなみに、小型犬として人気のチワワは個体によって短毛と長毛の両方のタイプがいます。

チワワ
<犬種ごとのエアコン設定温度の目安表>

※部屋の広さやエアコンの状態などによって、設定温度と室温に差が生じる場合があります。
暑いと感じる場合は、設定温度を低めに、寒いと感じる場合は、設定温度を高めに設定するなどしましょう。
<こちらもおすすめ>
Part2愛犬のためにエアコンをつけっぱなしにすると、
電気代の月額はいくら?

愛犬や家族の健康のために、仮にエアコンを1カ月連続して使用すると電気代はいくらになるのでしょうか。
算出条件
経済産業省資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ 2024年版」には、冷房期間と暖房期間を合わせた期間消費電力量に、1kWhあたり27円を掛けて算出した1年間のエアコンの目安電気料金が掲載されています。下記条件の場合、1年間の目安電気料金は23,186円となっています(東京の外気温度を前提にしており、使用する地域や使用条件、電力会社などにより異なります)。このデータを基に、下記でエアコンの冷房を1カ月連続して使用した場合の電気代を計算してみましょう。
- エアコン冷房能力:2.8kW(10帖用)
- 期間 冷房期間:5月23日~10月4日(134日)
- 室内設定温度:冷房時 27℃
- 1日あたりの運転時間:6時~24時までの18時間
- 住宅:平均的な木造住宅(南向き)
- 冷房期間消費電力量:251kWh(平均値)2022
※参考URL 経済産業省資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ 2024年版」
エアコンを24時間つけっぱなしにしたときの電気代
エアコンで冷房を24時間つけたまま1カ月使用した場合の電気代を計算するために、冷房期間消費電力量251kWh(134日)から、1日あたりの消費電力量を求めます。なお、上記条件では1日あたりの運転時間が6時~24時までの18時間のため、1.33倍しておよそ24時間となるようにして計算を行います。目安電気料金の単価は、上記の通り1kWhあたり27円を使用します。
冷房使用の場合
冷房期間消費電力量 251(kWh) ÷ 134(日)× 1.33 =
24時間あたりの消費電力量 約2.49(kWh)
24時間あたりの消費電力量 約2.49(kWh)× 31(日) × 27(円/kWh)=
1カ月連続して使用したときの電気代 約2,084(円)
以上は5~10月の平均データを基にしていますので、気温が高い8月だけで計算すると電気代が高くなると考えられます。また、これは10帖程度の1部屋のみにかかる電気代です。より広い部屋や、複数の部屋でエアコンを使用する場合などは、さらに電気代が増えるでしょう。さらに、一般的に冷房よりも暖房の方が電気代は高くなるといわれるため、冬場はさらに月の電気代が高くなる可能性があります。愛犬のためにエアコンを稼働させつつも、暮らし方、使い方の工夫で上手に節電できると良いかもしれません。
<こちらもおすすめ>
Part3エアコン以外の、愛犬を守る暑さ・寒さ対策とは?

エアコンをつける以外に、家でできる暑さ対策、寒さ対策にはどんなものがあるのでしょうか。ここでは、比較的手軽に取り入れられる便利グッズや、家づくりや暮らし方の工夫、おすすめのアイテムなどを紹介します。
暑さ対策
お昼寝などで長時間使うベッドやマットは、触れた際に冷たく感じる接触冷感素材の生地やジェルを使ったものなど、犬用のさまざまな暑さ対策グッズがあります。おしゃれなクールバンダナも、水に濡らして使うものや、保冷剤をしまえるものなど豊富にそろっています。
家づくりの工夫
床にタイル素材を使い、涼しさを感じられるペットスペースを設けるという方法があります。また、外の熱をなるべく室内に入れない、断熱性能の高い家にすると良いでしょう。

寒さ対策
冷たい空気は下にたまりやすく、床からも寒さを感じやすいため、犬の寒さ対策は下から暖かくすることがポイントになります。電気マットで自動的に適温を保つよう設定されたペット用ヒーターや、電子レンジやお湯を使って温める犬用の湯たんぽなどを活用すると良いでしょう。居場所の下にカーペットやラグを重ねてあげたり、ベッドに毛布を敷いてあげたりするのもおすすめです。なお、一般的な電気カーペットの上で犬を過ごさせる場合は、設定温度が高くなりすぎないよう十分注意しましょう。
家づくりの工夫
床からの冷えをやわらげるために、建物の断熱性能を高めることが重要です。空調の温度のムラが生じにくく、下から暖かさが伝わる床暖房を設置できれば、犬も寒さを感じずに暮らせる住まいにできます。また、窓ガラスを介して熱が外へ逃げてしまうことが、部屋の暖房効率を損ねる大きな原因となるため、床や壁だけでなく窓も断熱性能の高い仕様を選択すると良いでしょう。

<こちらもおすすめ>
Part4年間7万円の光熱費削減!?
愛犬も家族もうれしい高断熱の家とは?

近年は「酷暑」と呼ばれるほど夏の暑さが厳しく、最高気温が35℃以上の猛暑日が50日以上となる地域も出てきています。これから家づくりを予定している方は、暑さ寒さを気にせず暮らせる断熱性能の高い住宅を建てるのがおすすめです。
住宅の断熱性能を表すのが断熱等級で、現在は新築住宅に断熱等級4以上が義務付けられています。2025年7月から、大和ハウスではさらに上の断熱等級6を標準化(注文戸建住宅)しました。ちなみに、省エネ性能が高いZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の水準が断熱等級5となりますが、大和ハウスが標準化した断熱等級6はそれを上回り、未来の住宅のスタンダードを先取りしています。
従来よりも断熱材の厚みを増した「内外ダブル断熱(エクストラ断熱)」を標準仕様とすることで、大和ハウスでは安定した気密性・断熱性を実現。快適性や冷暖房の光熱費の削減といったメリットに加えて、外気の熱をしっかり断熱して大きな窓から自然の光を取り込み、ゆとりある空間で開放的に暮らせます。
年間光熱費を約7.1万円削減する高断熱住宅
断熱等級6の住宅は、1992年制定の新省エネ基準に即した断熱等級3の住宅と比較して、最高気温40℃の夏場にエアコンを消したときの温度上昇を最大約5~6℃低く抑える※1ことができます。また、断熱等級6にすることで断熱等級3と比較して年間光熱費を約7.1万円削減でき、さらに太陽光発電システムを搭載することで年間光熱費を約14.1万円削減することも可能です※2。
今、犬を飼っている、またはこれから飼いたいと考えている方なら、エアコンの長時間使用に伴う光熱費が気になるところでしょう。断熱性能の高い住まいなら、室温が安定することでエアコンの空調効率が高まり、電気代の削減はもちろん、快適性も向上します。これから家づくりを予定している方は、ぜひチェックしてみてください。

- ※1試算条件:温熱環境シミュレーションプログラム「AE-Sim/heat(エーイーシムヒート)」にて試算。
【共通】建設地:埼玉県熊谷市、気象データ 実在年拡張アメダス気象データ2018年を使用。
延床面積97.88㎡/空調エアコン/空調(冷房26℃/運転時間:LDKで5~7時・17~23時/主寝室で22~7時/洋室2室ともに17~19時および20~7時)試算条件により異なる。
【断熱等級3の家】外皮平均熱貫流率(UA値):1.54/冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値):3.8/1・2階天井高2400mm
【断熱等級6の家】外皮平均熱貫流率(UA値):0.44/冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値):1.2/1階天井高2720mm・2階天井高2400mm。 - ※2試算条件:当社光熱費算出ツール「ecoナビゲーター」にて試算。
【共通】建設地域:東京/延床面積:97.88㎡/空調:エアコン/調理機器:ガスコンロ
【断熱等級3の家】外皮平均熱貫流率(UA値):1.54 ηAc3.8/太陽光発電:搭載なし/給湯:ガス給湯器/1・2階 天井高:2400mm
【断熱等級6の家】外皮平均熱貫流率(UA値):0.44 ηAc1.2/太陽光発電:搭載あり(4.104kW)/給湯:高効率ガス給湯器/1階天井高2720mm・2階天井高2400mm/売電価格:1~4年24円、5~30年目8.3円と仮定して試算。
※シミュレーションしたものであり、一定の数値を保証するものはありません。数値は建物・立地・使用条件および時期により異なります。
Part5犬がいる家庭の温度管理Q&A

家族の一員として長く一緒に暮らすために、知っておいた方が良いことや、注意した方が良いことをQ&A形式でまとめました。
Q:子犬やシニア犬の場合の
エアコン設定についての注意点は?
子犬やシニア犬は、体温調節機能が働きにくいことが多いため、様子を見ながら温度を管理するようにします。一般的に、子犬やシニア犬は体が冷えやすい傾向があるため、エアコンの温度を設定するときは、成犬より少し高めにしてあげると良いでしょう。
※小型犬・超小型犬は11歳以上、中型・大型犬は8歳以上、超大型犬は6歳以上が高齢期の目安

Q:犬の体調変化(夏バテや
寒がるなど)を知らせるサインは?
部屋の温度調整が必要な、犬の体調の変化を知らせる代表的なサインには以下のようなものがあります。
暑いとき
- 口を開けて舌を出し、ハアハアと呼吸している
- 口からよだれをたくさん出している
- 水を普段とは違って頻繁に飲みたがる
- 体に触ると熱を持っているように感じられる

寒いとき
- 体を小さく丸めて、じっとして動かない
- 体をぶるぶると小刻みに震わせている
- 暖かい場所や人間のそばに移動してくる
- 水を飲む量が目立って減る

特に注意が必要な熱中症については、上記で紹介した<暑いとき>のサインに加え、ぐったりして、けいれん、嘔吐、下痢、血尿などの症状が出ることがあります。すぐに部屋の温度や湿度を調節して、涼しい場所で水分補給を行い、獣医師へ相談しましょう。

Q:短い時間だけど、
愛犬に留守番をしてもらうとき、
窓を開けて外出しても良い?
窓を開けても、犬は風に当たるだけでは体温を効果的に下げることができず、エアコンを消した状態では室温が急に上昇する可能性もあります。外にいる犬やほかの動物などに興味を持って網戸を壊して飛び出してしまうリスクもあり、特にマンションの高層階では大事故につながることも考えられます。窓を開けることにメリットはあまりなく、むしろデメリットが多くなるため、外出時は窓を閉めてエアコンをつけたままにするようにしましょう。

Q:愛犬の留守番時に見守り用の
ペットカメラはあった方が
良いですか?
日中、愛犬だけで留守番をすることが多い、または共働き世帯や一人暮らしの場合、ペットカメラを設置することでスマートフォンから様子を確認できるので安心です。エアコンがきちんと効いて快適に過ごしているか、体調を崩していないか、外出先でも確かめられます。子犬やシニア犬、持病のある犬など心配事が多い場合は特におすすめです。愛犬だけでなく家の異常にも気づきやすくなり、防犯にもつながるでしょう。

Q:夏場に愛犬を散歩させても
大丈夫な外気温の目安は?
外気温が27~28℃を超えたら散歩はやめた方が良く、30℃を超えると熱中症リスクが高まります。犬が運動することで体温が上がり、脱水症状になることも考えられます。気温が上昇する前の早朝か、暑さがやわらぐ夕方以降の時間帯を選びましょう。夕方でも昼間の熱がアスファルトに蓄積されていることもあるため、外出時に素手で地面を触って確かめましょう。

Part6愛犬のためにエアコンなどで暑さ・寒さ対策をしよう

繰り返しになりますが、愛犬のため、エアコンなどを使った暑さ・寒さ対策はとても重要です。エアコンをつけっぱなしにすると電気代が気になりますが、大和ハウスの戸建住宅は断熱性能が高いため、電気代を含む年間の光熱費の削減が期待できるでしょう。これから家づくりを考える方は、愛犬のためにも、住まいの断熱性能に着目してみることをおすすめします。
お話を伺った方
田向 健一さん
田園調布動物病院院長、獣医学博士。犬、猫、ウサギのほか爬虫類の診療を積極的に行っている。主な著書に『珍獣の医学』(扶桑社)、『生き物と向き合う仕事』(筑摩書房)、『珍獣ドクターのドタバタ診察日記: 動物の命に「まった」なし!』 (ポプラ社)など。