自宅に戻ってきても、子どもがなかなか勉強を始めない、
始めてもすぐに飽きて続かない、といった悩みはないでしょうか。
それは集中力が維持しにくい環境や生活リズムが要因かもしれません。
食事や睡眠、勉強する部屋やリビングの状況の見直しなど
子どもが集中しやすい環境づくりに大切な条件をご紹介します。
Part1勉強に集中できない理由とは?
子どもが勉強に集中できないときは本人のモチベーションの問題と決めつけず、生活面や周囲の環境などさまざまな要因の影響も検討してから対処することが大切です。
集中できない要因として、食事の偏りによる脳の栄養不足、睡眠不足のような生活面のアンバランスさなどが考えられます。
栄養が不足している
一般的にバランスのとれた食事は健康づくりに役立つとされていますが、加えて文部科学省の「全国学力・学習状況調査(2023年度)」では、毎朝朝食を食べている小・中学生は食べていない小・中学生より各教科の平均正答率が高いという相関関係を示しています※。

出典:国立教育政策研究所「令和7年度 全国学力・学習状況調査」より作成
しかも、脳は全身の消費カロリーの約20%を消費するといわれるほど多くのエネルギーを必要とするため、主なエネルギー源のブドウ糖になりやすい炭水化物を取ることが大切です。ブドウ糖が含まれるお菓子を少し食べて補給することもおすすめです。またブドウ糖をエネルギーとして使うときに必要なビタミンB群、脳の働きを助けるタンパク質なども重要です。
※出典:農林水産省「令和5年度 みんなの食育白書」 朝食の摂取と「全国学力・学習状況調査(2023年度)」の平均正答率との関連をもとに、朝食を毎日食べている小・中学生と、全く食べていない小・中学生の間には、各教科の平均正答率の差は15ポイント前後と紹介
睡眠が不足している
厚生労働省の「健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~」の「こどもの睡眠」※によると、睡眠不足や起床困難などの睡眠障害を抱える子どもは4〜5人に1人も存在します。特に平均睡眠時間は米国睡眠医学会が推奨する「3〜5歳児は10〜13時間」「小学生は9〜12時間」「中学・高校生は8〜10時間」よりも短いか下限付近で、大部分の国々では推奨された時間内にあるのとは対照的です。また、生活のリズムが遅寝遅起きの夜型が多いことも他国との違いです。
睡眠は日中に得た情報などを整理し、脳の疲労回復にも役立つ貴重な時間とされます。人間は朝に明るい光を浴びると約14時間後から徐々に眠気を感じるとされるため、朝起きたら外に出て光を浴びる、窓から屋外を見るなどの習慣づけをして、早寝早起きの生活リズムに慣れるようにしましょう。
※厚生労働省 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~
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身近に集中を妨げるものが多い
勉強机の周囲にSNSをよく使うスマートフォン、ゲーム機、マンガなどがあると、「少し休憩しよう」と手が伸びてしまい、勉強への集中力を維持しにくくなる可能性があります。
たとえ使用しなくても、机の上にスマートフォンがあるだけで集中力が低下するので、視界に入る場所に置かない、あるいは、勉強する場所にスマートフォンを持ち込まないのがベストです。1回のプレイ時間が短いゲームでも勉強の合間には手をつけないことです。ゲームの先が気になったり、だらだら続けたりして勉強の効率が上がりません。
また、スマートフォンはSNSなどからの通知をオフにするなど、「何か通知が来た」と注意を向かないようにする工夫も必要。集中モード、フォーカスモードなど、時間内は特定の通知を表示しなくなる設定なども利用しましょう。
周囲の音が気になってしまう
勉強に集中しやすい音の環境は人によって違います。例えば図書館のように静かな環境を好む人も、カフェなど適度にざわついた環境を好む人もいるため、本人が集中しやすい音環境にすることが大切です。静かな環境にするには耳栓や外音を遮断しやすいタイプのイヤホンを使い、適度な音が欲しい場合には鳥のさえずりや川のせせらぎのような環境音、ホワイトノイズ、静かなBGM、環境音楽などを流す方法が考えられます。なお、自分が好きな音楽を流すと勉強に取り組む意欲は高まるかもしれませんが、音楽に聴き入って勉強への集中力が下がることもあり、聞き続けるのは良い選択とはいえません。
Part2 勉強に集中できる環境づくりのポイント
勉強に集中できない要因はさまざまです。勉強しやすい環境をつくるには室温・湿度なども含め勉強部屋全体の環境をチェックしてみましょう。
勉強机の位置を工夫する
一般的に壁に向けて置くことが多い勉強机ですが、前方に圧迫感があり、また椅子の後ろの広い空間が不安を招き集中力が低下するともいわれます。子どもが勉強に集中しづらい場合、机の前方に広がりを持たせ、椅子の後ろを壁際に設置するレイアウトにしてみるのもいいかもしれません。
また同じ壁向きの配置でも、窓際なら前方の圧迫感も軽減しやすく、外の景色でリラックスしやすいでしょう。ただ、外の様子が気になって落ち着かないことも考えられるので、子どもの様子を見ながら机の配置を工夫すると良いでしょう。
スマートフォンやゲーム機などと同じように、見ると休みたくなるベッド、趣味の本などが並んだ本棚も集中力を妨げやすいもの。勉強中はこれらが目に入らないように机の配置を工夫しましょう。
また机の上は今の勉強に関連した教科書・参考書だけを置き、必要なときに広げられるスペースをつくっておくと、「あれはどこ?」といちいち探さなくて済むので、集中力が維持しやすく勉強の効率も高まります。
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勉強に適した部屋の温度・湿度に整える
温度や湿度は人間の集中力、作業効率などに影響するという研究は多く、季節ごとに適した温度・湿度を保つことは大切です。
集中に適した、人間が快適に感じる温度・湿度に関してはさまざまな研究がありますが、温度に関しては、おおよそ22〜25℃くらい※、湿度に関してはおおよそ40〜60%※くらいが適していると考えられます。ただし、季節や服装などによっても快適な温度は変わります。これらを目安に、季節によって本人が快適と感じる温度に調整すると良いでしょう。
※参照:
- 小林 弘造 他 (2005). 「G-59 コールセンターの室内環境が知的生産性に与える影響」. 『空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集』, 2005.3, p.2053
- RIJAL HOMBAHADUR 他 (2021). 「日本のオフィスビルにおける熱的快適性の適応モデルの開発とそのメカニズムの解明」. 東京都市大学
- Seppänen Olli 他 (2006). 「Effect of Temperature on Task Performance in Offfice Environment」. Lawrence Berkeley National Laboratory.
- ダイキン工業株式会社 (2020). 「快適で健康な空間づくりに向けた共同研究で室温28℃でも湿度を下げれば疲労軽減に有効であることを実証」. ダイキン工業株式会社.
- 齊藤宏之 (2015). 「冬季オフィス環境における温湿度の実態と健康影響」. 独立行政法人労働安全衛生総合研究所.
照明を集中しやすい明るさ・色にする
文部科学省の「学校環境衛生基準」では教室の明るさは最低でも300ルクスと決められており、これは書類の文字がはっきり見える明るさです。加えて照明の色は、日中の太陽光に近い昼白色や、より青みがかった昼光色などが集中力を維持しやすいとされています。一方、電球色では部屋がリラックスした印象となり、勉強にはあまり向かないでしょう。照度については、スマートフォンアプリなどでチェックできるものがあるので試してみてください。
部屋の防音対策も検討する
前出のように静かな環境にするには、耳栓・イヤホン、環境音やBGMで音の環境を調整する以外に、足音や話し声など他の部屋から聞こえる生活音を軽減できるよう、卓上に防音性能のあるパーティションを置いたり、勉強部屋に防音対策をしたりすることも良いでしょう。
Part3勉強に集中できる家づくりのコツ
勉強に適した家具の配置、室温・湿度、照明などを設計の段階から検討することで、子どもが勉強に集中しやすい部屋がつくれます。
リビングなどにスタディコーナーを設ける
子どもが小さい頃は特に、親の目が届きやすく、親子のコミュニケーションが取りやすいなどの理由から、リビング学習も人気です。家の間取りを選ぶ際にはリビング学習のことも考えて、キッチンから見守りやすいところにスタディコーナーを設置でき、生活動線がさえぎられないこと、スタディコーナーから見えない位置にテレビが置けることなどを考慮しながら間取りを選ぶと良いでしょう。
また、リビングに隣接したタタミスペースがあると、勉強や来客対応など多用途に使えます。
大和ハウスの戸建住宅の中には、フルオーダーの注文住宅のほかに、価格を抑えながら間取りや外装・内装、設備などを注文住宅品質で実現できる、規格住宅・セミオーダー住宅「Smart Made Housing.」も用意されています。登録すると全ての間取りが検索・確認できますので「My間取りサーチ」をチェックしてみてください。
勉強専用の部屋を設ける
リビング学習では家族の話し声やテレビの音、来客時の会話など、近くでさまざまな生活音がしたり、人の動きが気になったりして、集中力を維持するのが難しいときもあります。子どもの年齢が上がって、親の見守りがあまり必要でなくなった際には、子どもが集中しやすく、そのための環境整備がしやすい勉強専用の子ども部屋をつくるメリットも大きいでしょう。間取りを検討する段階で、音が届きにくいように勉強部屋とリビングの間に収納スペースを設けたり、集中を妨げにくい部屋のレイアウトにしたりすることで、子どもが集中しやすい環境を整えやすくなります。また、勉強専用の部屋に入ることが勉強に集中するきっかけになるといった習慣づけもしやすいでしょう。
また、どうしても外の音が気になったり、家の中の音が気になったりする際には勉強部屋を防音室にすることも一つの方法です。防音室は周囲の音をさえぎり、また中の音も外に漏れにいため、勉強部屋としてはもちろん、子どもが独立したらオーディオ・シアタールームや楽器演奏用の部屋など趣味の部屋としても活用できます。
大和ハウスの防音室は建物と一体設計で防音・静音施工をすることにより、明るく開放感のある空間も実現可能です。しかも建物と同様に長期保証のアフターサービスが利用できるため、子どもの独立後に防音室を活用するときにも安心です。
勉強に集中しやすい壁の色を選ぶ
勉強部屋に適した照明があるように、壁の色にも向き不向きがあるようです。一般的に心を安定させて集中力を維持しやすいのは青系統の色とされるため、勉強中に目にしやすい壁を青系統にするといいでしょう※。
※ 木下 夢菜 他 (2023).「色彩環境が学習活動にもたらす影響 ―学習空間と用紙の色彩について―」. 『徳島文理大学研究紀要』.
温度管理のために家の断熱性能を高める
家の断熱性能が低いと、空調を使用している部屋と、廊下や空調を使用していない部屋との温度差が大きくなってしまいます。トイレなどで部屋を出た際に、暑すぎたり寒すぎたりすると集中が切れてしまうこともあります。また、勉強に集中しやすい温度を維持しているとエアコンなどの使用頻度も増えがちです。家づくりの際には、光熱費が高くなりすぎないように断熱性能にも着目すると、勉強に集中できる環境を保ちつつ省エネも可能になります。
大和ハウスの戸建住宅の場合、断熱性能の高さを示す断熱等級で「断熱等級6」の高い性能を標準化しています※。これは2030年以降に全ての新築住宅に義務づけられる予定の省エネ基準「ZEH水準(断熱等級5)」を上回る断熱性能です。例えば断熱等級6の家なら、2025年まで新築住宅の基準だった断熱等級3の家に比べて、最高気温40℃の夏季にエアコンをOFFにしたときの温度を最大約5~6℃低く抑えられ※、エアコンの稼働時間を減らせて光熱費の削減につながります。
※ 断熱等級6標準
※ 試算条件:温熱環境シミュレーションプログラム「AE-Sim/heat(エーイーシムヒート)」にて試算。
【共通】建設地:埼玉県熊谷市、気象データ 実在年拡張アメダス気象データ2018年を使用。
延床面積97.88m2/空調エアコン/空調(冷房26℃/運転時間:LDKで5~7時・17~23時/主寝室で22~7時/洋室2室ともに17~19時および20~7時)試算条件により異なる。
【断熱等級3の家】外皮平均熱貫流率UA値1.54/冷房期の平均日射熱取得率ηAC値3.8/1・2階天井高2400mm
【断熱等級6の家】外皮平均熱貫流率UA値0.44/冷房期の平均日射熱取得率ηAC値1.2/1階天井高2720mm・2階天井高2400mm
全館空調でも部屋ごとの温度管理が可能に
こうした高い断熱性能に加え、家全体の温度管理として導入を検討したいのが全館空調システムです。全館空調のメリットは部屋を移動しても温度差を感じにくく、どこにいても快適に過ごせること。玄関や廊下、脱衣所、トイレなどの温度も管理でき、ヒートショックのような健康リスクも減らせます。
大和ハウスの全館空調「エアヒーリング」なら、各部屋の温度を自在にコントロールできるため、リビングと勉強部屋それぞれに適した温度をキープできます。さらに家全体で花粉やハウスダスト、PM2.5のような微粒子を取り除けるので、花粉症をはじめとしたアレルギー性鼻炎の発症を抑え、集中力も維持しやすくなるでしょう。
Part4勉強に集中できる環境づくりを心掛けよう
家じゅうを適切な温度・湿度で保つなど、家づくりの視点に「子どもの勉強のしやすさ」を取り入れると、一緒に住む家族にも快適な家の条件が整います。
子どもの集中力に影響する要因は多岐にわたり、乱れた生活リズム、気が散りやすい部屋のレイアウトや物の置き方、スマートフォンなどの管理のほか、部屋および家全体の温度・湿度、音、天井の高さといった住環境にも広がっています。その中でも住環境に関連したポイントは一緒に住む家族にとって快適な住宅の条件とも重なることも多く、「子どもが勉強しやすい家」は「家族が暮らしやすい家」といえそうです。家づくりを工夫して、勉強しやすく暮らしやすい家を実現しましょう。
お話を伺った方
伊藤 敏雄さん
学習・教育アドバイザー。「勉強はやる気とやり方で決まる!」をキャッチフレーズに、心理学や行動科学に基づいた効果的な勉強のやり方を、小学生から高校生までの全教科で指導してきた。また、全国で5,000人以上の高校生や保護者に、学習メソッドやモチベーションアップ講座などの講演活動も行っている。

















