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コラム No.39-1

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今仲清の事業承継シリーズ(1)事業承継の現状と課題。
在任期間が短い経営者ほど増加する親族外承継

公開日:2017/10/17

日本経済の基盤である中小企業の事業承継は、雇用確保や地域経済活力を維持する上からもきわめて重要です。しかし、中小企業経営者の高齢化が進み、数十万社の中小企業が事業承継のタイミングを迎えようとしています。しかも、後継者確保が困難なため、法人経営者の親族内承継の割合が急減し、従業員や社外の第三者といった親族外承継も増えています。今後の事業承継について考えます。

多様化する事業承継の形態

中小企業経営者の高齢化が進み、数十万社の中小企業が事業承継のタイミングを迎えようとしています。しかし、今後5年間で30万人以上の経営者が70歳になるにもかかわらず、6割の後継者が未定です。70代の経営者でも、事業承継に向けた準備を行っている経営者は半数にとどまり、経営者の高齢化が進むと、企業の業績が停滞する可能性も高くなります。中小企業経営者の年代別分布を見ると、この20年間で経営者年齢の中央値は47歳から66歳へと高齢化が進んでいることがわかります(図1参照)。

図1:中小企業経営者の年代別分布

出典:中小企業庁「事業承継5ヶ年計画」

2015年に中小企業庁が委託した調査(みずほ総合研究所)、「中小企業の資金調達に関する調査」2015年12月)によれば、在任期間が35年以上40年未満(現経営者が事業を承継し35年から40年経過)の層では、9割以上が親族内承継と回答しています。 しかし、在任期間が短い経営者ほど親族内承継の割合が減少し、従業員や社外の第三者への承継が増加しています。特に直近5年間では親族内承継は35%にまで減少し、親族外承継が65%にも上ります(図2参照)。

図2:経営者の在任期間の現経営者と先代経営者の関係

出典:中小企業庁「事業承継ガイドライン」

事業承継に関する課題と方向性

中小企業庁は、中小企業経営者の高齢化の進展などを踏まえ、平成29年7月に、今後5年程度を事業承継支援の集中実施期間とする「事業承継5ヵ年計画」を策定しています。施策の方向性などを図3に示します。

図3:事業承継に関する課題と対応の方向性(事業承継5ヶ年計画)

出典:中小企業庁

この間に、支援策を活用して地域の事業を次世代にしっかりと引き継ぐことが期待されます。そのために中小企業庁では、事業承継を契機に後継者がベンチャー型事業承継などの経営革新等に積極的にチャレンジしやすい環境を整備するための支援を行います。

  1. 経営者の「気付き」の提供
    地域毎に、それぞれの支援機関がつながる事業承継プラットフォームを立ち上げ、事業承継診断等によるプッシュ型の支援を行い、事業承継ニーズを掘り起こします。
  2. 後継者が継ぎたくなるような環境を整備
    資金繰り・採算管理等の早期段階からの経営改善の取組を支援します。また、早期承継のインセンティブを強化し、後継者や経営者による経営の合理化やビジネスモデルの転換など成長への挑戦を支援します。
  3. 後継者マッチング支援の強化
    事業引継ぎ支援センターの体制強化や、民間企業との連携により、小規模M&Aマーケットを整備します。
  4. 事業からの退出や事業統合等をしやすい環境の整備
    サプライチェーンや地域における事業承継、事業再編・統合を促進し、中小企業の経営力強化を後押しします。
  5. 経営人材の活用
    次期経営者候補やアドバイザーとして、経営スキルの高い外部人材を活用しやすい環境を整備します。

地域経済にとって重要な役割を担っている中小企業が、事業承継で問題が生じて発展を阻害されている例は少なくありません。その要因は法定相続による分割の問題、相続に伴う必要資金の調達の問題、過大な相続税負担の問題などにありました。そうした問題も、こうした「事業承継5ヵ年計画」を活用することで、スムーズな事業承継が期待できます。 本シリーズでは、今後、使いやすくなった相続税・贈与税の事業承継税制、遺留分に関する民法の特例、事業継承に伴う金融支援措置、自社株式等の相続税の納税猶予制度について解説していく予定です。

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