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コラム No.76-4

CREコラム

不動産証券化の実践的活用(4)J-REITと私募ファンド

公開日:2019/07/31

資産運用型J-REITと私募ファンドの代表選手が、今回取り上げる不動産ファンドのJ-REITと私募ファンドです。近年はその中間である「私募REIT」も登場しており、不動産証券化が資産の有効活用に適した仕組みであることを物語っています。

J-REITの運用実績が上場企業の株価に該当する

ファンドとは、いうまでもなく、資産をより多く増やすために集めたお金そのものを指します。基金または資金と訳すようですが、ひと固まりの金のこと。カネは多いほど運用したときにより多くの利益が生まれます。しかし個人で投資するにしても、その額には限界があるので、不特定多数から金を集めれば、効率的に資金運用ができるという道理です。 したがって、不動産ファンドとは不動産を媒介に資金運用し、その運用益を得ることですが、実態は資産運用型の証券化で利用されるSPC (特別目的会社)を指します。その代表例がJ-REITと私募ファンドです。 REIT(リート)とは、不動産投資信託の「Real Estate Investment Trust」の頭文字を取った言葉。「J」は言うまでもなくJAPANのこと。バブル経済が崩壊した1990年代後半、銀行業界で発生した巨額の不良債権問題を解決するため、国が不動産売買を活性化させる狙いから2001年に不動産の流動化策を実施、不動産投資信託市場を創設しました。これがJ-REITの始まりです。

具体的にはSPCが「不動産投資法人」という会社組織の形態をとり、投資家から資金を集めます。この投資法人が行っている資金運用自体がJ-REITという上場商品で、投資法人の運用実績が上場企業の株式の株価ということです。 J-REITは証券取引所に上場している金融商品ですから、個人投資家を保護するため、金融商品取引法や取引所規則など、さまざまな規制が設けられています。しかし適切な情報開示などのルールを守れば、多くの投資家から多くの資金を集めることができ、大規模なファンドを組めるメリットがあります。 わが国では2006年頃に「貯蓄から投資へ」という資産形成のスローガンが叫ばれ、投資信託のブームが起きました。最近は低金利局面が長引き、好利回りの不動産投信に対する関心の高まりを受けて、REITを組み込んだ投信(REITファンド、J-REITファンド)が人気を集めているようです。

図1:不動産ファンドは資産運用型証券化の代表選手

プロ向きの私募ファンド、私募REITも登場

主に個人投資家向けのJ-REITに対して、生命保険会社や銀行、年金基金団体など機関投資家、いわゆる「プロ投資家」向けの不動産ファンドが私募ファンドです。投資のプロが参加するので、資金運用に対する要求は高くなります。リスクとリターンを柔軟に組み合わせて彼らのニーズをくみ取ります。ごく限られた投資家が対象なので、多様なファンドの組成が可能なのです。

私募ファンドは限定的な参加者で規模は小さいと思われがちですが、市場規模はJ-REITとほぼ互角のレベルにあります。「私募」ですから業界団体などによる正式な公表数値はありませんが、三井住友トラスト基礎研究所が2019年3月に発表した「不動産私募ファンドに関する実態調査」による推定値は2018年の私募ファンドが17.7兆円、J-REITは17.9兆円となっています。
J-REITと私募ファンドの中間である「私募REIT」も登場しています。J-REITは上場株式と同様に、証券市場で価格が変動します。市場の動向に左右されがちですが、私募REITは上場していないので、不動産価格を反映するという特徴を持っています。ただし、上場していないので売買は活発ではなく、換金性は低くなるのが難点です。

J-REITなどの不動産投信では、オープンエンド型、クローズドエンド型があります。前者は解約(換金)できるタイプ、後者は解約できないものを指します。エンドとは運用機関の終了を意味します。J-REITのような上場REITはクローズドエンド型、私募REITの多くはオープンエンド型で、「オープンエンド型私募ファンド」と呼ばれることがあります。

保有不動産はオフィス・商業施設、データセンターにも注目集まる

拡大する不動産ファンド市場ですが、不動産証券化協会の調査によれば、上場と私募のREITが保有する不動産はオフィスが大半を占め、次いで商業施設、住宅と物流施設が迫っている状況です。J-REITは前述したように、上場しているので保有する不動産の稼働状況や賃貸管理状況などトラックレコードの開示を細かく求められます。しかし私募REITは、こうした細かい規制が基本的にはないので、限定的な投資家を対象にしているといっても、情報開示が不足していますので、個人が投資に踏み切りにくい状況となっています。

図2:保有不動産種別のJ-REIT・私募REIT取得価格(2019年4月末)

※私募REITのホテル、ヘルスケア施設は「その他」に計上
不動産証券化協会「ARESマンスリーレポート(2019年5月)」より抜粋

図3:取得価格をもとにした比率(物件総数:4,775物件 保有不動産総額:21兆6,798億円)

不動産証券化協会「ARESマンスリーレポート(2019年5月)」より抜粋

最近では、データセンターが投資対象として注目を集めているようです。三井住友トラスト基礎研究所は、2019年1月31日発行のレポートの中で、「国内のデータセンターが築古物件になっており、自社保有を続けると競争力を失うためセールス&リースバックでの売却が増えるだろう」などと指摘しています。
データセンターは、セキュリティ上の問題から、それとわかる看板は建物に設置していないことが多く、所在地も秘匿されているケースがほとんどです。しかし都市部に隣接する地域に建設されている物件も少なくないといわれており、リースバック終了後の再開発を念頭に物件取得する事例が増えるのではないか、とレポートは予測しています。

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